「トヨタ・アートマネジメント講座」（略称：TAM）は、トヨタ自動車のメセナ活動の 一環として1996年にスタートした。これまでに全国22都市で開催され、美術、演劇、音楽の 分野で、それぞれの地域に根ざしたアートマネジメントの可能性を模索し、着実な成果を 重ねてきた。今回は30回という節目の記念大会で、愛知県での初の開催となり、また、 98年7月東京の第14回大会以来、2度目の3分野を総合した合同セッションとなった。 近年、芸術の分野では、作家や作品が純粋にその分野の中で完結するのではなく、 積極的な社会への参加や貢献が求められている。そうした状況もあって、今回のTAMは 愛知県初の開催にもかかわらず、多数の参加者があり、アートマネジメントの持つ奥深さ や可能性を知る機会として、大きな反響があった。また、この地域の芸術団体や文化機関が その活動をアピールする「芸術交流広場」は、ジャンルを越えた出会いの場となることを 意図したが、人材の交流など、その目的以上の成果があったといえよう。

「フォーラム・イベント」の演出・構成・振付を担当した中馬芳子は、ダンサーや 音楽家たちが、一般家庭のリビングルームなど日常的な生活の場所へ出かけていって、 観客とのコミュニケーションをベースにした即興のパフォーマンスを見せ、普段はなかなか 劇場に足を運ばない人にも芸術に接する機会を提供しようという＜リビングルーム・ プロジェクトLiving Room Project＞を行っている。今回「フォーラム･イベント」を 開催するに当たり、同主旨の催しを、「おでかけダンス」という名称で開催した。 開催に当たっては、この地域の舞台関係者によるNPO団体「2005年演劇ネットワーク愛知」と 共催で行った。会場としては、アメリカのようにホームパーティの習慣のあまりない日本で、 日本らしさと観客とのコミュニケーションを主眼に、ビア・ホール及び自動車ショールーム を選定した。両会場とも、観客のすぐ横をすり抜けるようにして行われるダンスや、 観客一人一人に語りかける歌に、観客は大変満足していた。