* 「エンペドクレスの死」(第二版)(1986年)
  第7回アートフィルム・フェスティバル第二期

  ストローブ=ユイレ・レトロスペクティブ 1962-2000
  神戸ファッション美術館所蔵作品+新作初公開
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第二期
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2002年12月5日(木)〜15日(日)
  * 9日(月)休館、10日間開催 アートスペースA
映画講座「ストローブとマラルメ―見えないものを見る」
  講師: 兼子正勝(電気通信大学教授)、12月15日(日)開催
  共催: 神戸ファッション美術館     協力: アテネ・フランセ文化センター
ストローブ=ユイレは、音楽(バッハ、シェーンベルク)、演劇(ヘルダーリン、 ブレヒト)、文学(マラルメ、デュラス、カフカ)、絵画(セザンヌ)など、様々な 表現ジャンルの題材を映画化した作品で知られる。 しかし、既存の題材の劇化にすぎない映画が世の大半を占める中で、彼らの作品は 様々な題材に真摯に取り組み、これを最大限に尊重しつつ、同時に映画とは何かという 問いに向き合い、その本質と可能性を追求してきた。
いわば、近代以降に発明された 映画と、それ以前に生み出され既に長い歴史を持つ他の表現との相克が彼らの作品に 刻まれているともいえ、その点でストローブ=ユイレは、様々な芸術ジャンルが 相互的に交流する状況を照らし出してきた「アートフィルム・フェスティバル」で、 取り上げるのにふさわしい作家だといえるだろう。

彼らはまた、『フォルティーニ/シナイの犬たち』(1976年)や『早すぎる、遅すぎる』 (1980-81年)などの作品で、政治や歴史という主題に直接的に取り組んでいる作家でも ある。これは『モーゼとアロン』(1974-75年)が、シェーンベルクのオペラの映画化で あると同時にパレスチナ問題への言及であるることから明らかなように、芸術を題材に した作品にも一貫して通底している。1990年代以降、混迷する社会状況から、 芸術の社会的役割が問われ、芸術も政治と無関係ではないという認識が強まっているが、 その点でも彼らの作品は今日その重みを増しつつあり、この特集は時期にかなったもの であった。

ストローブ=ユイレ作品の、日本における本格的な紹介は、神戸ファッション 美術館が作品を所蔵し、東京のアテネ・フランセ文化センターと共同で上映会を開催した 1997年である。当時より、当地でも熱心な映画愛好家から上映を望む声が寄せられて いたが、今回の特集が実現したことで、音楽や演劇、美術など、他の表現ジャンルに 関心を持つ層も、この上映会にも参加したことは意義深かった。
「労働者たち、農民たち」(2000年)


* 「シチリア!」(1999年)


* 「すべての革命はのるかそるかである」(1977年)
また15作品を連続して 上映することにより、1本1本を単独で観るだけでは十分には伝わらない、作家の 独特な思想にも理解が及んだ、という観客の声も聞くことができた。最終日に行った 兼子正勝(電気通信大学教授)の映画講座も、映像表現の本質に肉迫する内容で 反響を呼び、好評であった。

対象への深い考察に基づき、完璧といえる撮影よって 構築された彼らの映画は、ハリウッド的な娯楽から遠く、またアヴァンギャルドな 実験映画とも異なっている。その虚飾を削ぎ落とした精緻な画面からは、 映画そのものの美しさを見ることも可能であるが、その独特であり特異とも いえる作品は、容易な理解を拒む性質があることも事実だ。 その点で、『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』(1967年)が唯一一般に知られる 孤高の作家の、東海地区における最初の紹介として、この特集は大きな成果を上げた といえるだろう。
(越後谷卓司)

* Photo : 神戸ファッション美術館提供

プロフィール
 ストローブ=ユイレ
フランス出身の映画作家ジャン=マリ・ストローブ(1933年メス生まれ)と ダニエル・ユイレ(1936年パリ生まれ)のコンビの総称。 公私ともに伴侶である二人は、1954年にパリで出会って以来、映画製作の同志として 独自の創作活動を展開してきた。1962年に処女作となる短篇『マホルカ=ムフ』を発表。 1967年に十数年来の構想を実現した長編第一作『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』 で、国際的な評価を得ている。

 兼子正勝 (「映画講座」講師)
1953年山形生まれ。東京大学文学部仏文専攻博士課程中退。パリ第10大学文学博士。 現在、国立電気通信大学メディアコミュニケーション学教授。 マラルメの研究者として日本語版マラルメ全集の編集・翻訳などにたずさわるほか、 クロソウスキー、ドゥルーズなどフランス現代思想、アルノー・デプレシャンや エドワード・ヤンなど現代映像作家について、著訳書・論文多数。
上映プログラム
1. 『花婿、女優、そしてヒモ』(1968年、23分、35mm)
2. 『オトン』(1969年、88分、35mm)
3. 『歴史の授業』(1972年、85分、16mm)
4. 『アーノルト・シェーンベルクの〈映画の一場面のための伴奏音楽〉入門』 (1972年、15分、16mm)
5. 『モーゼとアロン』 (1974-75年、105分、35mm)
6. 『フォルティーニ/シナイの犬たち』 (1976年、83分、16mm)
7. 『すべての革命はのるかそるかである』 (1977年、11分、35mm)
8. 『雲から抵抗へ』(1978年、105分、35mm)
9. 『早すぎる、遅すぎる』(1980-81年、101分、16mm)
10. 『エンペドクレスの死』 (第二版)(1986年、132分、35mm)
11. 『黒い罪』(第二版) (1988年、40分、35mm)
12. 『ロートリンゲン!』 (1994年、21分、35mm)
13. 『今日から明日へ』 (1996年、62分、35mm)
14. 『シチリア!』(1999年、66分、35mm)
15. 『労働者たち、農民たち』 (2000年、123分、35mm)
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