パブリック・アート データ・ぺースの構築
文化情報センターでは、パブリック・アート、すなわち「公共空間に設置された彫刻作品」
を対象とした調査を平成3年度から継続しており、平成6年度末までに全国約2700件の
作品データを収集した。パブリック・アートの設置は日本各地で盛んに行われているが、
その多くは彫刻を置くことだけに終始して、設置の目的や過程、普及・啓発のための事業、
メンテナンスなどは軽視されがちであり、設置主体ですら作品や設置状況に関するデータを
整理・保存していないのが実情である。
こうしたことから、データ・べース構築はとりあえずできるだけ多くの事例を集めて
住所録的に整理するところから始まり、施設内のコンピュータ端末及び印刷物により、
作品情報と作家情報というふたつの形で提供してきた。利用者には、作品設置を検討中の
自治体担当者や画廊なども多く、こうした照会に応えるためにも引き続きデータ件数を
増やしていく必要がある。
しかし、この「彫刻公害」とすら言われる混乱した現状の原因は、作品そのものではなく、
むしろ設置システムにあると思われ、個別のデータを未整理のまま無批判に提供する
だけでは、今後の改善につながりにくくなる恐れがある。
わが国においてもファーレ立川や新宿アイランドといった新しい設置システムが
成功を納めていることからも、今後は、設置システムなどの現状把握とその分析を行い、
新たな取り組みに貢献していけるよう、データ・べースの構築と活用の方法を検討して
いくべきものと考えている。
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講演会 「地域社会と芸術−アメリカの公共彫刻の現状」
1994年10月6日(木)13:30 アートスペースA
講師: |
バーバラ・ゴールドスティーン (シアトル芸術委員会芸術プログラム・マネジャー)
ジョーン・モンデール (駐日米国大使夫人)
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司会: |
南條史生 (美術評論家) |
共催: |
名古屋アメリカンセンター |
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アメリカでは、彫刻だけでなく設置過程そのものをもパブリック・アートの本質と
考えており、そのためのシステムの整備が進んでいること、また、作品の形態、
設置場所などが変化に富み、多様化していることがこの講演を通じて明らかになった。
翻ってみれば、日本におけるパブリック・アート設置に関して、設置にあたっての
目的意識の欠如、理念を実現するためのシステムの未整備、作品の一様性などと
いった問題点を再確認したと言えるだろう。
また、文化情報センターのデータ・べ一スは対象が日本国内に限られているが、
わが国におけるパブリック・アートのあり方を変化させるような事例は、海外にも
多く存在しており、今後もこうした優れた事例を講演会などによって紹介していく
必要がある。
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「都市景観と彫刻」
1. 資料展示
1995年3月14日(火)〜4月9日(日) アートスペース X
内容: |
ファーレ立川、新宿アイランド、アートヒルズ三好ケ丘における
パブリックアート設置の過程などの解説パネル、作品模型、ドローイング、
制作及び設置の記録ビデオ、写真など |
協力: |
住宅・都市整備公団、アート・フロント・ギャラリー、鞄本設計、
ナンジョウ・アンド・アソシエイツ、都市デザイン研究所 |
2. シリーズ・レクチャー
第1回: |
「都市景観と彫刻一パブリック・アートヘの期待」
1995年3月17日(金) 19:00 大リハーサル室 / 講師: 北原理雄(千葉大学工学部教授)
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第2回: |
「パブリック・アートは幸せか?−その設置環境を検証する」
1995年3月22日(水) 19:00 大リハーサル室 / 講師: 山岡義典(長谷工総合研究所顧問)
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第3回: |
「プロジェクト・リポート ファーレ立川」
1995年3月30日(木) 19:00 中リハーサル室 / 講師: 北川フラム(ファーレ立川 アート・プランナー)
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第4回: |
「プロジェクト・リポート 新宿アイランド」
1995年3月31日(金) 19:00 中リハーサル室 / 講師:南條史生(新宿アイランド アート・プランナー)
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この展示と講演会では、パブリック・アート設置の過程に焦点を当てた。
パブリック・アートは、自治体や企業といった設置者、作家そして市民という三者の関係を
とおしての「公共性」あるいは「地域共同体意識」の具現化への試みととらえることが
できる。この三者の関係をうまく取り結ぶことができれば、パブリック・アートは単に
「公共空間に設置された彫刻作品(ART IN PUBLIC SPACE)」というだけでなく、初めて
「市民の芸術(PUBLIC ART)」、言わば具現化された公共性となり得るという
仮説を設定した。
ここで紹介したファーレ立川と新宿アイランドというふたつのプロジェクトでは、
この三者の調整役としてアート・プランナーが大きな役割を果たし、これまでの
野外彫刻との設置プロセスの違いが市民の目にもはっきりと成果となって表れたケースと
言えよう。それぞれの作品群はマスコミにも大きく取り上げられ、パブリック・アートの
新しい時代を予感させた。この展示と講演会の参加者も、これまで愛知芸術文化センターが
行ってきたパブリック・アート関連の事業への参加者と比較すると、非常にその層が
多様化し、人数も増えている。
時を同じくして、わが国では公立劇場の運営に関しても、パブリック・アートの設置に
おける調整役と同じようにアート・マネージャーの不在が指摘されている。
芸術作品を紹介するという行為の中で、基本理念やその具体化にいたる過程の軽視が、
作品をともすれば単なる商品と扱う傾向を生んできたのではないだろうか。
今回の企画に対する観客からのアンケートが多く指摘していたのは、都市景観という、
実は私的所有物としての建築や看板などの集積を、公共的なものとして形成していく機能の
必要性であった。
展示には、芸術文化センターの公共空間を活かして、地下2階のフォーラムIIからの通路と
アートスペースXを使用した。また、展示期間と展示会場に連動して4回シリーズの講演会
を開催した。また、事前に講演会の講師から原稿をいただき、講演会「地域社会と芸術
−アメリカの公共彫刻の現状」の内容と併せて出版した。
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パブリック・アート映像
『彫刻のつくる世界 外光への飛翔』 ビデオ作品 7分42秒
写真: 村井修、 詩作・脚本: 馬場駿吉
建築や彫刻写真で知られる村井修氏が撮った世界のパブリック・アートの名作を、
ビデオ作品として編集、詩人馬場駿吉氏による脚本及び詩で綴った。
作品は地下2階のマルチ・ビジョンで上映。
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