コラボレーション<共同制作>とは、異なった分野の人々が対等の立場で制作に参加し、
現場で作品を創り上げていく芸術創造の方式である。愛知芸術文化センター開館3年目に
当たる1995年、文化情報センターでは、これまで行ってきた自主企画事業の流れを
踏まえつつ、「Human Collaboration」<人間による共同制作>というタイトルを掲げて、
さまざまな事業をミニ・フェスティバル的に展開した。
「Human Collaboration'95」では、二つの事柄を軸に事業を行った。
一つの軸は日本と韓国の芸術を同時に、総合的に、かつ新しい視野で紹介することだった。
日本と韓国は地理的に隣接し、古来より交流が続けられてきた。
両国の芸術は、長い伝統のなかでそれぞれのオリジナリティを発展させながらも、
近・現代にはそれぞれ自国の伝統文化の見直しとともに、新しい可能性の探求が
試みられている。
私たち日本人にとって、韓国は芸術や生活文化の上では多くの共通点が見いだせる
「初めてなのに懐かしい」国でありながら、しかし、文化的な相互理解という面では
いまだ素顔を認め合えないでいる「近くて遠い」国と言えるだろう。
そこで、愛知県美術館と名古屋市美術館の両館で行われた「環流−日韓現代美術展」に
合わせ、両国の芸術について、音楽・舞踊・映像・写真など、広いジャンルから
総合的に紹介しようと試みた。互いの伝統を知るとともに、現代を生きる作家たちの
エネルギッシュな個性に接すること、そして多くの文化的伝統を共有しながらも
独自の発展を遂げた互いのアイデンティティを確認することができた。
「Human Collaboration'95」のもう一つの軸は、この総合的な事業全体を通じて、
人間どうしが出会い、交流する場を提供することだった。各催し、とりわけ舞台公演に
おいて、日本と韓国という国を越え、美術・音楽・舞踊というジャンルを越えて、
芸術家たちは出会い、共同でひとつの作品を創造した。彼らはその過程を経て、
互いの表現における共通点と相違点を発見し、さらにその背景にある互いの伝統や
個性を発見した。彼らの発見は、公演を通じて観客にも伝わったと言えるだろう。
芸術は同時代を生きる人間の姿そのものであることを伝え、それに出会った観客が
共感したり、逆に違いを知ったり、さまざまな発見のできる場を創り出した。
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Photo : 南部辰雄 |
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