Art Around Project

 「舟の丘、水の舞台」 "Hill of Ships, Stage of Water"
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1996年9月24日 フォーラム I

序 平曲「宇治川」平家琵琶: 今井 勉

Act 1 堆積舞踊: 五井 輝 / 映像: 大木裕之
コントラバス: 吉野弘志、 斎藤 徹、 ジョエル・レアンドル

Act 2 パルス ダンス振付: 米井澄江 / ダンス: 美枝・コッカムポー
ギター: 今堀恒雄 / 映像: 大木裕之

Act 3 交錯 舞踊: 五井 輝 / ダンス振付: 米井澄江 / ダンス: 美枝・コッカムポー
コントラバス: 吉野弘志、 斎藤 徹、 ジョエル・レアンドル
ギター: 今堀恒雄 / 声: 七聲会 / 映像: 大木裕之

照明プラン: 佐藤壽晃 / 音響プラン: 片山俊郎 / 音響・照明操作: 愛知県舞台設備管理事業協同組合
アドバイザー: 吉増剛造 / 総合演出: 澤井宏始

この公演は愛知芸術文化センターの<劇場><美術館><文化情報センター>の共通の 入口である吹き抜け空間フォーラムを舞台にした、センターの複合性を象徴するに ふさわしい異ジャンルによるコラボレーション作品の創作プログラムとして企画された。

コラボレーションとは<共同制作>を意味するが、ここでは映像、ダンス、音楽の ジャンルに属するアーティストたちが、出会い、ぶつかり合い、個人の意志を越えた ダイナミックな思考の渦・運動を生み出し、作品を作り上げてゆくことを意図した。 またこの公演は、これまで1年1作のぺ一スで継続してきたオリジナル映像作品制作事業 とも連動しており、公演の記録を独立した映像作品として完成させることで、 館外への情報発信的な展開を行うことも考慮している。

「舟の丘、水の舞台」の創作的なテーマは"川"である。多くの都市がそうであるように、 名古屋もまたその成り立ちをたどってゆくと、起源としての川にたどり着く。 "川"は、人類の文化発祥の一つの起源ともいえ、名古屋の場所性をすくい取った、 ジャンルを越えた新たな芸術表現の創造という制作意図を象徴化する意味あいがあった。 この一連のコンセプト・ワークに積極的に関わったのが、アドバイザーとして参加した 詩人の吉増剛造である。

また、本公演の全4部からなる基本的な構成も、各ジャンルの担当学芸員と吉増との 共同作業によって作り上げられたものだった。
当日は、フォーラムという公共空間の特性から、老若男女、様々な世代、様々な 分野に関心を持った、多くの観客が詰めかけた。これらの人々が一同に会し、 リラックスした雰囲気の中で実験的なコラボレーション公演を鑑賞する機会は、 過去になかった。初めてセンターを訪れた観客も少なくなく、より開かれた親しみやすい 場への一つの契機となったといえよう。
公演は、95年冬の準備期間から積み重ねてきた参加アーティストと文化情報センター・ スタッフの思索の過程のすべてが反映され、異質なジャンルの芸術のぶつかり合いの中、 伝統から現代、古典的な表現から実験的な試みまでが共存する、かつてない斬新なものと なった。観客の多くが最後まで公演を見届けたことは、実験的な表現が多くの一般の 人々と共有されたことでもあり、画期的といえるだろう。
(越後谷卓司)
Photo : 南部辰雄

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