演劇集団 池の下 『青森県のせむし男』
 イベントーク Part 7

   「異形としての身体」
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1999年1月21日(金)〜24日(日)  愛知県芸術劇場小ホールおよびアートスペース G
協力: 円谷プロダクション、高山利子、ストライプハウス美術館
企画監修・司会: 萩原朔美(エッセイスト)
「イベントーク」は、「身体」という独自のテーマ設定から芸術表現の様々な動向を 取り上げている企画で、開館記念事業としてスタートして以来、毎年継続的に開催している。
今回は、近年、社会的なブームを巻き起こした、大友克洋『AKIRA』(1988年)や庵野秀明 『新世紀エヴァンゲリオン』(1995〜1996年)など、ポピュラーな表現である漫画や アニメーション作品に異形・奇形的な身体のイメージが共通して見られることに着目し、 こうした表現やそれを受け入れる感性が育まれた源流を探るべく、60年代の寺山修司の 初期演劇や、同時期の実験アニメーション、また当時人気を博していた怪獣映画を取り上げ、 それらが持つ意味や背景にあるもの、さらに現代に及ぼす影響について 考察することを意図した。

1月22日の演劇公演『青森県のせむし男』は、寺山修司が主宰した演劇実験室 「天井棧敷」の旗揚げとなったこの作品を、近年、初期寺山作品を精力的に 取り上げ評価を得ている演劇集団 池の下の長野和文の演出により上演。 寺山の後期スタッフであった高取英の講演、及び「イベントーク」の企画監修で 『青森県のせむし男』初演の出演者でもあった萩原朔美との対談により作品、 作家についての考察を行った。

23日は、『ウルトラマン』(1966〜1967年)等の作品に登場した怪獣のデザイン・造形と、 前衛美術との関係について論じた椹木野衣の講演を軸に、同時期に制作され怪獣や異形 との関連を窺わせる実験アニメーション作品や、50年代に岡本太郎が宇宙人デザインを 担当した劇映画『宇宙人東京に現わる』、さらにそれらを吸収した90年代の作品として 『Pinocchio√964』のライブ上映を行った。

また、アートスペースGの「シュルレアリスムの日本的受容 高山良策展」は、 『ウルトラマン』等の怪獣を造形したシュルレアリスムの影響を受けた画家・高山良策の 仕事を、絵画と造形の両面から考察するという観点から行った。 今回、「イベントーク」の企画の一環としては、初めての本格的な展示となった 「高山良策展」は、23日の椹木野衣の講演と連動するもので、イベントとトークの コンビネーションという点で新機軸となり、観客から好評を得た。 また、講演の内容も、独自の視点を示すもので、後日、新聞紙面で取り上げられるなど 反響を呼んだ。会期全般を通して、多くの熱心な観客がこの企画に足を運んだことは、 今回の主題に対し同時代的な関心の高かったことを示していたといえよう。
(越後谷卓司)
演劇集団 池の下 『青森県のせむし男』


『宇宙人東京に現わる』 岡本太郎デザイン


『Pinocchio√964』ライブ上映


「高山良策展」展示風景

Photo : 南部辰雄

1月22日(金)  小ホール
演劇公演『青森県のせむし男』
(1967年初演)
作:寺山修司
美術:朝倉摂
演出:長野和文(演劇集団 池の下)
出演:稲垣悟、井上美千代、
   和泉潤也、深沢幸弘、ほか
トーク
「寺山修司の
演劇に見る異形と見世物性」

講師:高取英(劇作家)
1月23日(土)  小ホール
映画上映
『かげ』(監督:林静一、1968年)
『牛頭』(監督:古川タク、1968年)
『宇宙人東京に現わる』
 (監督:島耕二、宇宙人デザイン:
 岡本太郎、大映、1956年)

トーク
「美術表現と怪獣」
講師:椹木野衣(美術評論家)
映像ライブ
『Pinocchio√964』
(監督:福居ショウジン、1991年)
パーカッション演奏:影山拓
1月21日(木)〜24日(日)
アートスペースG

展示
「シュルレアリスムの
 日本的受容 高山良策展」

絵画23点
立体2点
怪獣造形10点
造形スケッチ8点
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