IKIF『ドキュメント/コラボアート「環」』 (1998)
  第3回 アートフィルム・フェスティバル
前へ 自主企画事業報告書 > 1998年度 > 第3回 アートフィルム・フェスティバル 次へ
1998年4月24日(金)〜5月5日(火・祝)  アートスペースA

<上映作品>
愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第7弾 前田真二郎『王様の子供』(1998年)
IKIF『ドキュメント/コラボアート「環」』(1998年)
シャロン・ロックハート『Goshogaoka』(1997年)

ナム・ジュン・パイク『グローバル・グルーブ』(1973年)
<H・アール・カオス作品集>
『春の祭典』(1995年)
『空白の隠画〜The Esquisee of Swan Kake』(1995年)
『セラフィータ』(1995年)
 ※ 3作とも、構成・演出・振付:大島早紀子

ほか計31本上映

複合事業「HUMAN COLLABORATION」の一翼をなす企画として、現代芸術の複合・横断的な 状況を照らし出すことを意図したこの上映会も、スタートして今回で3回目を数える ことになった。
愛知県文化情報センターでは、"映像における実験性"をメインテーマに、実験映画や ビデオアートのカテゴリーに属する作品を中心に上映してきたが、この上映会では特に、 上述した主旨を踏まえ、映像ジャンルにおいて音楽や舞踊、美術など異ジャンルとの 関係について考察すべく、これら分野との関わり深い映 像作品を積極的に取り上げている。

今回のプログラムでは、90年代を代表する日本のダンス・カンパニー「H・アール・カオス」 の映像作品3本や、 アメリカの若手写真家シャロン・ロックハートが日本に滞在して 撮った『Goshogaoka』(1997年)などを、当地域において初めて上映したことが特筆 できるだろう。
「H・アール・カオス」の作品は、日本における本格的なダンス 映像作品として稀有なものといえるが、当地においてこれまで本公演が一度も行われて いない同カンパニーを、映像という媒体を通じて紹介した点でも意義があった。
『Goshogaoka』は、近年急速に評価を高めているシャロン・ロックハートが、 茨城県のアーカス構想パイロット事業における同県滞在の成果として完成した映画で、 御所ヶ丘中学校女子バスケットボール部のトレーニングでの動きをベースに、 スポーツともダンスとも呼べない独特のムーブメントを作り出し、 映像作品化している。 カメラを固定したフィックスの映像は、 写真と映画の関係性を考えさせるとともに、 スポーツとダンスを越えた身体の動きについて、 さらにこの作品が誕生した背景にある 異文化交流といった点など、 様々な要素について考えさせる実験的作品で、 事前に新聞紙面で紹介されたことも加わって、 観客の高い関心を集めた。 また、ニューヨークの「THE INK TANK」提供による実験アニメーション作品集 「ウーマン・オン・ザ・バージ」は、映像表現の新しい動向を伝えるものとして、 好評であった。
シャロン・ロックハート『Goshogaoka』(1997)


H・アール・カオス 『セラフィータ』(1995)


前田真二郎 『王様の子供』 (1998)
さらに、コラボレーションという観点から、所蔵作品であるナム・ジュン・パイクの ビデオアート作品を取り上げたことや、オリジナル映像作品最新作『王様の子供』の 初公開に合わせ過去の5作品を上映するなど、コレクションを活用した点も、 今回のプログラムに厚みを持たせることになったといえよう。

(越後谷卓司)

前へ このページのトップへ 次へ