フレデリック・ワイズマン
(C) Anne Mandelbaum
  テーマ上映会

      フレデリック・ワイズマン映画祭
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1998年4月24日(金)~5月5日(火・祝)  アートスペースA

現存する最も偉大なドキュメンタリー作家と称される、アメリカ・ドキュメンタリー映画の 第一人者フレデリック・ワイズマンの作品から、総作品数の約半数となる14本を精選した 日本で初めての本格的な特集上映会である。
上映に関連して、会期初日には監督本人を招き、講演会も開催した。 愛知県文化情報センターでは、「映像における実験性」という観点から、実験映画や ビデオアートのみならず、ドキュメンタリーや劇映画のジャンルにおいても、 映像表現や概念において新しい次元を切り開く作家、作品を積極的に取り上げてきた。

フレデリック・ワイズマンは、1960年代アメリカのダイレクト・シネマのムーブメントの 中で作品制作を始め、他に例を見ない独自の映像表現を確立した作家として高い評価を 得ている。 彼の作品は、ナレーション等の説明的手段を一切用いず、客観的描写に徹しながら、 同時に対象に内在する問題をも露呈させてしてしまうといった特徴がある。 多彩な題材を扱ってきたことも特色の一つであるが、それらを現場で捉えた映像と 音声のみで語り尽くす彼の手法は、極めて高度に洗練された映像表現と呼ぶことができ、 現代の芸術としてのドキュメンタリーを理解する上で、最もふさわしい作家の一人と 言えるだろう。

この企画は、ワイズマン作品14本の集中的な上映という、わが国ではこれまでにない 規模での特集を行うことで、彼の芸術のエッセンスを紹介するとともに、 ドキュメンタリーにおける芸術表現の高度な達成を知る機会となること意図した。

また今回は、東京、横浜との同時期開催というスタイルで行われ (当初、高知での開催も予定されていたが、台風による水害のため予定会場が 使用不能となり、延期となった)、事前広報でも新聞・雑誌等に多く取り上げられた こともあってか、総入場者数1900人を越える盛況となった。
日本では、過去に東京の「日本映像カルチャーセンター」や「山形国際ドキュメンタリー 映画祭」で作品が取り上げられるなど、限られた形でしか紹介されておらず、 一般的な知名度は必ずしも高いとはいなかったワイズマンであるが、会期初日の講演会にも 多くの観客が詰めかけ、活発な意見の交換がなされたことなど、この催しの反響の 大きさを象徴する出来事であったと言えるだろう。
(越後谷卓司)
<上映作品>

『チチカット・フォーリーズ』(1967年)
『高校』(1968年)
『法と秩序』(1969年)
『病院』(1970年)
『モデル』(1980年)
『動物園』(1993年)
『バレエ』(1995年)
『パブリック・ハウジング』(1997年)

ほか計14本上映

『チチカット・フォーリーズ』
(C) 1967 BRIDGEWATER FILM CO.,INK


『モデル』
(C) 1980 ZIPPORAH FILMS, INC.
Photo: Oliver Kool


『バレエ』
(C) 1995 BALLET FILMS, INC.
Photo: Evan Eames

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