園子温『うつしみ』
  第4回  アートフィルム・フェスティバル
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<上映会>
1999年11月3日(水・祝)-14日(日)  アートスペースA
 * 11月8日(月)-10日(水)は休映、9日間開催
フィルム提供&協力/ 前田真二郎、 宮岡秀行、 菅木志雄、 横浜美術館、 The British Council、
CARLTON International、 British Film Institute、 名古屋芸術大学、
University of Brighton

<上映作品>
 園子温 『うつしみ』 (1999年) * 愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第8弾
 マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー 『赤い靴』 (1948年)
 デヴィッド・ハイマン 『Silent Scream』 (=沈黙の叫び/1989年)
 ビル・ヴィオラ 『Deserts』 (=砂漠/1994年)
 菅木志雄 『存在と殺人』 (1998-99年)
 宮岡秀行・監修 『セレブレート シネマ 101』 (1996年)

〈大野一雄ビデオ・ライブラリー〉
 ダニエル・シュミット 『KAZUO OHNO 』1995年 * 愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第4弾
 ビデオインフォメーションセンター手塚一郎・制作 『ラ・アルヘンチーナ頌』 1977年初演
 長野千秋 『O氏の肖像』 1969年

ほか全19本上映

「アートフィルム・フェスティバル」は、ダンス、音楽、美術、演劇などの異ジャンルと 映像表現との関係性について考察することをメイン・テーマとした特集上映会で、 今年で4回目を数える。
ジャンルを横断した、様々な層の観客が会場を訪れていることが、この企画の特色といえる。

今回は、戦後音楽史の転機をなした作曲家エドガー・ヴァレーズの『Deserts』 (=砂漠/1949-54年)に想を得たビル・ヴィオラのビデオ・アート作品『Deserts』 (=砂漠/1994年)、美術家・菅木志雄が彼の美術におけるコンセプトの延長線上に 制作した『存在と殺人』(1998-99年)、ビクトル・エリセやジョナス・メカスら気鋭の 作家が参加した映画百年へのユニークな考察である『セレブレート シネマ 101』 (監修:宮岡秀行/1996年)など、映像表現の新しい動向を紹介するとともに、 戦後バレエ映画の代表的作品『赤い靴』(監督:マイケル・パウエル、エメリック・ プレスバーガー/1948年)や、93歳となった現在も踊り続けている世界的な舞踏家・ 大野一雄のビデオ・ライブラリー公開、昨年完結を迎えた愛知芸術文化センターの コラボレーション・プロジェクトの記録映像3部作(大木裕之『3+1』(1997年)ほか)や 前田真二郎のアート・ドキュメンタリー『INOUE SHINTA PROJECT OF SHEPHEAD 1999』 (1999年)の上映など、多彩な内容となった。

異ジャンルを横断するコンセプトに基づくこの上映会は、映像芸術に親しむ層の裾野を 広げ、交流を促進する点で、大きな成果があった。 例えば、この機会に初めてビル・ヴィオラのビデオ・アート作品を観たという観客も 少なくない。
デヴィッド・ハイマン
『Silent Scream』


菅木志雄『存在と殺人』
〈大野一雄ビデオ・ライブラリー〉として公開された公演記録映像は、 資料性は極めて高いものの、映像的には比較的地味といえる内容なのだが、 集まった観客が最後まで熱心に鑑賞している姿は、この企画への熱い支持を感じさせた。
本邦初公開となるデヴィッド・ハイマン『Silent Scream』(1989年)上映の際には、 脚本を担当した映画美術家ビル・ビーチが来館した。 この日は、200人近い観客が会場を訪れ、上映終了後の観客との質疑応答も熱気を 帯びたものになった。

また、『セレブレート シネマ 101』上映立ち会いのため来館した監修者の宮岡秀行は、 飛び入りで舞台挨拶を行い、興味深いエピソードを観客に披露した。 この上映会が、これらユニークな実験的作品に触れ、享受する場として、その存在を高め ていることを実感させる出来事であった。

(越後谷卓司)

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