愛知芸術文化センターでは、「オリジナル映像作品」として「身体」をテーマとした
実験的な映像作品の制作を、開館以来、継続的におこなっている。
和田淳子監督『ボディドロップアスファルト』は、その最新第9弾である。
「身体」は、芸術のみならず、科学、哲学、思想などの領域においても、現在、注目を
集めているキーワードであるが、このシリーズにおいては、映像による「身体」への
思索的なアプローチが、映像表現のさらなる可能性を切り開いてきたといえよう。
監督の和田淳子は、1990年代、日本の実験映画に台頭した一群の若手女性映像作家を
代表する存在として、国内・外で多くの上映機会を得、注目を集めている。
彼女の4年ぶりの作品となる『ボディドロップアスファルト』は、引きこもり症候群や、
恋愛幻想といった今日的な主題を、和田自身の作家としての個人史に重ね合わせながら、
身体的な感覚に根ざした映像表現によって、ポップで、かつアヴァンギャルドに描き出した、
ユニークな作品となった。
監督の和田は脚本の他に衣装も担当。主人公の心理的な推移を、コスチューム・プレイ
的な衣装の変化により、身体的な変容として捉えることを試みている。
音楽はコモエスタ八重樫、撮影・照明はあがた森魚監督『港のロキシー』(1999年)などを
手掛けた白尾一博が担当。自身のバンド「スペースポンチ」でメジャー・デビューした
岸野雄一や、北野武監督『菊次郎の夏』(1999年)や大島渚監督『御法度』(1999年)など
への出演経験を持つ田中要次のほか、歌手・映画監督のあがた森魚、映画評論家の
大久保賢一、「ムーンライダーズ」の鈴木慶一、『白痴』(1999年)を監督した手塚眞、
神様役として登場する日本のインディペンデント映画の第一人者・金井勝など、
個性派をそろえたキャスティングも注目を集めた。
なお、この作品は2000年4月28日、29日に、愛知芸術文化センターでの初公開の他、
「イメージフォーラム・フェスティバル2000」への招待出品などが予定されている。
(越後谷卓司)
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(監督からのコメント)
思春期に誰でも夢見る恋愛幻想を実現できたとしたら、失うものもたくさんあるはず。
普通の女の子が、白馬の王子様と結婚したら、かなりのリスクを背負うはず。
でも、人気ドラマには、成就した恋愛のその後はありません。
そういったレディメイドなストーリーにも、ほころびを作ってあげないと、
リアルじゃないと思うのです。
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