ピエル・パオロ・パゾリーニ(1922-1975)は、戦後イタリア映画の重要な動向である
"ネオリアリズモ"の流れを踏まえつつ、後に聖書や古典などを題材に、
それらを彼独自の詩的なアプローチによって解体・再構築し、独自の芸術的達成を
遂げた映画作家である。
この上映会は、日本未公開であった初期作品(『アッカトーネ』『マンマ・ローマ』)や
ドキュメンタリー(『愛の集会』)、その芸術的達成を示す代表的作品(『奇跡の丘』
『アポロンの地獄』『王女メディア』)を上映するとともに、パゾリーニに
ゆかりのある専門家による講演を行うことで、映画監督のみならず、詩人、小説家、
評論家としても活躍したパゾリーニの全体像を照らし出すことを意図した。
1975年にスキャンダラスな死を遂げて以降、パゾリーニはタブー視される傾向が強まり、
その詩的な映像表現の高度な芸術的達成にもかかわらず、特に日本では、長い間、
まとまった形での上映の機会が持たれなかった。
第二次世界大戦後の映画状況を見る時、映画の実験的な探求において巨大な足跡を
残したイタリアのミケランジェロ・アントニオーニや、今日も精力的に活動している、
フランスの"ヌーヴェル・ヴァーグ"を代表するジャン=リュック・ゴダールなどの作品は、
近年においても、日本で比較的上映の機会があったが、それに比肩するとも劣らない
パゾリーニ作品は、上映機会が少ないがゆえに、その業績に対する正当な評価が得られず、
いわば映画的な空白地帯となっている感があった。
そうした状況の中、わが国では、死後、初めての本格的な特集と呼べるこの上映会は、
まさに待ち望まれたタイミングでの開催になった、といっても過言ではないだろう。
東京、高知などとも時期的に連携したことも効を奏し、話題性を高めた。
会期中は、パゾリーニ作品を未見の若い世代から、当時を知るオールド・ファンまで、
多くの観客が詰めかけ、盛況であった。
また、田之倉稔、田中千世子両氏による講演も、パゾリーニ理解を深める上で非常に
適切かつ興味深い内容であり、観客からの好評を博した。
(越後谷卓司)
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<上映会>
1999年4月24日(土)-29日(木・祝)
アートスペースA
* 4月26日(月)-27日(火)は休映
「アッカトーネ」(1961年)初公開
「マンマ・ローマ」(1962年)初公開
「愛の集会」(1963‐64年)初公開
「奇跡の丘」(1964年)
「アポロンの地獄」(1967年)
「王女メディア」(1969‐70年)
フィルム提供: ユーロスペース
全6作品上映 (35mmニュープリント)
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<講演会>
1999年4月24日(土)18:00
田之倉稔(評論家)
1999年4月29日(木・祝)14:00
田中千世子(映画評論家)
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『 愛の集会 』
『 アポロンの地獄 』
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