建畠哲
建畠哲
 文化情報センター・ゼミナール

 「20世紀を編集するII」 −アメリカの芸術を中心に−
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このゼミナールは、ともすれば難解だと思われがちな現代の芸術に関して、そのバックグラウンドにある20世紀芸術の 基礎的な事柄を学び、理解を深めることを主旨とした、通年で開かれる連続講座である。複合文化施設である愛知芸術文化センターの 特性を活かし、実際に開催される催しとも連動した、具体的で手応えのある内容を目指している。

 2年目となる今年は、20世紀の芸術・文化に多大な影響を及ぼした国・アメリカに焦点を当て、20世紀芸術を捉える新たな 切り口を提示することを意図した。ジャンルを横断した複合型の、現代芸術に関する講座は他になく、受講者から、引き続き 来年度以降も開催してほしい、といった声を多く聞くことが出来、好評裡に終了した。

(越後谷卓司)

総 論

外部講師を招いての、固有のジャンルに捉われない複合的、融合的な観点からの総論講義は、受講者にとって新鮮な 体験となった。萩原朔美は、1960年代末にアメリカへ行き、オフ・オフ・ブロードウェイの演劇や、モダンダンス公演を観た体験を 熱っぽく語った。また、建畠晢は美術評論家の立場から、20世紀の歴史においてアメリカ美術が占める位置について語り、巨視的な 観点を提示した。

(越後谷卓司)

萩原朔美
 萩原朔美

美 術

美術では、愛知県美術館や名古屋市美術館の企画展や所蔵作品展を、担当学芸員によるショート・レクチャーの 後に鑑賞するスタイルを、昨年に続き採用した。作品や作家にまつわるエピソードなどを知ると作品の見え方が違ってくると いった声が多く聞かれ、好評であった。

(越後谷卓司)

舞 踊

現代舞踊の歴史は、アメリカの舞踊の歴史といっても過言でないほど、20世紀の新しい舞踊はアメリカにおいて 誕生し発展を遂げてきた。そこで今年は、アメリカ独自の抽象バレエからポスト・モダンダンスに至るまで、アメリカの舞踊家たちが いかに過去を否定し、新しさを追求していったのかを言及するよう努めた。毎回できるだけ多くの作品をビデオにより鑑賞する時間を 設けた。特別講義としては、アメリカン・モダン・ダンスについて舞踊研究家でお茶の水大学教授の片岡康子に、また ウイリアム・フォーサイスを中心としたコンテンポラリー・ダンスの事情について舞踊研究家の松澤慶信にお願いした。 ワークショップでは、60年代後半よりアメリカで活躍してきたケイ・タケイを指導者に迎えた。参加者は徐々に開放されていく身体を 感じることができたようだ。

(唐津絵理)

片岡康子
 片岡康子

音 楽

 昨年同様、歴史の流れにあまりとらわれず、キーワードから20世紀の音楽を俯瞰した。各回ごとに焦点を当てる音楽家を 決め、その音楽家の活動に沿いながら、関連する音楽界での新しい動向を解説した。CDを用いた作品鑑賞では、できるだけ曲の 途中で中断せず1曲全部を聞かせるよう配慮した。キーワードとしては、今年はアメリカに焦点を当てていることから、 昨年にはなかった「ジャズと即興」を設け、音楽評論家の小沼純一に特別講義をお願いした。またアーティスト自身による講演としては、 ニューヨーク在住の音楽家、刀根康尚にお願いした(現代音楽家シリーズと共同)。両者の講義とも多様な音楽を理解するきっかけや 手助けになる内容で、受講生に好評であった。

(藤井明子)

小沼純一
 小沼純一

映 像

 20世紀とほぼ重なりあう映像の歴史を、実験映画の史的な展開を軸にして、4回に分け講義した。今回は、アメリカを キーワードに設定していることから、その中で、映画発明期のエディソンや、20年代の劇映画の実質的な創始者グリフィス、 60年代アンダーグラウンド映画を牽引したジョナス・メカス、70年代以降のビデオアートを代表するナム・ジュン・パイク、 ビル・ヴィオラ等、アメリカゆかりの作家たちが、どのような役割を果たしてきたかに焦点を当てた。参考作品上映会では、 スラップスティック・コメディの代表的存在チャーリー・チャップリンと20年代のアヴァンギャルド映画の関係を、実作を 上映することで提示し、受講者の関心を引いた。

(越後谷卓司)



 < 講義一覧 >
2000年
4/19
  オリエンテーション
5/17 音楽1 講義「音列:シェーンベルク」
5/24 舞踊1 講義「アメリカ抽象バレエへの道:バランシン」
6/2・16 美術1 「近・現代美術入門」(愛知県美術館所蔵作品展鑑賞) ゲスト講師:高橋秀治
6/21 舞踊2 講義「アメリカン・モダン・ダンス」 ゲスト講師:片岡康子
6/28 音楽2 講義「具体音:パーチ」
7/5 音楽3 講義「ジャズと即興」 ゲスト講師:小沼純一
7/12 舞踊3 講義「アメリカン・ダンスの時代:50年代以降」
7/19 音楽4 講義「偶然性とパフォーマンス」
7/26 舞踊4 講義「ウィリアム・フォーサイスと現代の舞踊」 ゲスト講師:松澤慶信
9/22 美術2 展覧会鑑賞「加納光於展」 ゲスト講師:牧野研一郎(於:愛知県美術館)
9/27 映像1 講義「映画前史:マイブリッジ、マレイ」
10/4 映像2 講義「初期映画:エディソン、リュミエール、メリエス」
10/18 総論1 講義「体験的アメリカ60年代論」 ゲスト講師:萩原朔美
10/20 美術3 展覧会鑑賞「アンディ・ウォーホル展」
ゲスト講師:角田美奈子(於:名古屋市美術館)
10/26 - 11/5 映像特 第5回アートフィルム・フェスティバル」鑑賞
11/8 映像3 講義「ハリウッド映画とアヴァンギャルド:グリフィス、エイゼンシュタイン」
11/15 映像4 講義「戦後から現代まで:ゴダール、メカス」
11/24 美術4 展覧会鑑賞「アメリカン・ドリームの世紀展」
ゲスト講師:高橋秀治(於:愛知県美術館)
2001年
1/18
音楽5 「現代音楽家シリーズ6 刀根康尚講演会」聴講
1/25・27 舞踊5 ダンス・ワークショップ  ゲスト講師:ケイ・タケイ(於:大リハーサル室)
2/7 総論2 講義「歴史なき国の栄光─アメリカ美術の20世紀」 ゲスト講師:建畠晢
2/14 映像5 参考作品上映会「アメリカ実験映画の黎明」


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