ロシアのマリンスキー劇場、ディアギレフのバレエ・リュスを経て、1910年に自らのバレエ団を結成したバレリーナ、
アンナ・パヴロワは、ロンドンでデビューを飾った後、世界各国を巡回、多くの人々に感銘を与えてきた。中でも、バレエ・リュスの
最初の振付家、ミハイル・フォーキンが振付けた『瀕死の白鳥』は、今もなお、モダンバレエ萌芽期の名作として20世紀のバレエに
輝かしい1ページを残している。
英国ダンスの上映会にあわせて開催したこの展覧会では、世界中にバレエブームを巻き起こしたアンナ・パヴロワが
日本や世界を巡回した際の公演プログラムや、自身の手による彫刻、公演のポスター等の展示から、20世紀最大のバレリーナの
足跡を追いつつ、20世紀のバレエの黎明期を振り返った。
展示では新国立劇場をはじめ、東西から多くの資料を借りることができ、充実した内容となった。今回初めてアートプラザという
展示会場以外の空間を使用し、空間とのコラボレーションともなった。閲覧スペースやビデオライブラリーの中をぬっての展示となり、
多少煩雑な印象となってしまった気もするが、通常の空間をいきいきとした活気溢れる展示空間に変容させることができたのでは
ないかと思う。そして偶然この場を訪れた方々からも多くの反響があり、たくさんの人々の目に触れることができたことは
意義のあることだったと思う。
また、バレエ史家の薄井憲二によるトークでは、一般的な話にとどまらず、資料収集家らしい資料を基にした具体的な話に加え、
実際の作品を見ながらのギャラリートーク形式の作品解説も拝聴できるという大変贅沢な内容となり、参加者は皆大変満足していたようだ。
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