ワークショップは、まず身体の各機能を意識するところから始まった。
自分をひとつの建築物と想定し、背骨が頭の天辺から突き抜ける感じを意識する。
骨盤から地面に向かって脚が落ちていることを意識して立つ。そして自分の中で萎縮した
ような動きではなく、常にまわりの空間を意識して動く、そのために周りをよく見る。
これらすべての点を意識しつつ、今度は床に碁盤の目があると想定して動いてみる。
身体の一部を延ばし、その方向に向かって自分の動きの方向付けをする。
誰かとぶつかったときは、その空間をシェア(共有)する。すると、初めはぎこち
なかった参加者の動きが、紛れもない「コンテンポラリー・ダンス」の動きになってゆく、
その様子がはっきりと見て取れた。
ミラーは、「意識(awareness)」という言葉を常に用い、技術や形よりも、
「自分」と「空間」に対する意識が大切であると話した。「このワークショップにおいて
私は、踊りの技術を教えるのではなく、踊り手として、もっと奥深くにあるものを理解して
もらいたい」という講師の思いが、最初から最後まで一貫していた。参加者も、この考えを
きちんと受け止め、奮闘しながらも自分たちの動きが徐々に洗練されてゆく様子に、
「こんな踊り方もあったのかと感動した」という声もあがったほどであった。
ミラーの教えることを全て習得するには2日という期間は不十分だろう。
しかしながら参加者からは、今回のワークショップで学んだことを今後の自分の踊りに
繋げていきたいという声が多く聞かれた。その点で今回のワークショップは大きな役割を
果たしたといえよう。
(半田真美)
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