アメリカのダンス映像を通して、20世紀のダンスの歴史を振り返る上映会。
テーマを設定してほぼ年代順にプログラムを組み、上映を行った。イサドラ・ダンカンや
マーサ・グラハム等、モダンダンスのパイオニアたちの映像を始め、当時のアメリカの
世相を反映し、のちに独自の文化となっていったミュージカルやブラック・ダンス、
そして前衛運動としてのダンス等、実験的だったゆえほとんど観ることのできなかった
映像も満載した。
3日間共通チケットのため、その日のテーマの中から自分の観たい映像を選び、
それに的を絞って来場するという参加者も少なくなかった。特に初日の、モダンダンス
誕生からの古く貴重な映像が、多くの観客を集めた。また、2日目と最終日に渡って
上映した、ポスト・モダンダンスの第一人者マース・カニングハム振付の一連の作品群も、
人気が高かった。カタログも好評で、ダンスへの理解を深めたと思われる。
このようなアメリカのダンスの歴史・変遷をまとめて見ることのできる機会は滅多に
ないため、ダンスに縁のある人はもちろん、そうでない人も大いに楽しんでいる
ようであった。
また、トークとして、元スターダンサーズバレエ団芸術監督であり、60年代のニューヨーク
でダンスのムーブメントを体感した厚木凡人と、今回の貴重な映像の提供者である
シネマテーク・ド・ラ・ダンスからベルナール・レミーを招いた。厚木からは、
当時アメリカに行くことになった経緯や、ニューヨークで目の当たりにした前衛的な
ダンスから受けた大きな衝撃がのちの自身の踊りに繋がっていったこと等、
60年代のアメリカ・ダンス界の数少ない当事者としての貴重な話を伺うことができた。
一方、レミーは、アメリカのモダンダンス界の変遷を、その時代を代表する振付家や
ダンサーの名前を具体的に挙げながら、分かり易く解説した。これからダンスの歴史を
知ろうとしている人たちにとっては、とても良い機会になったと思う。熱心にメモを
執っている観客も見られた。 (半田真美)
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