愛知県文化情報センターでは、ジャンルを横断しコンセプトやスタイルに何らか
「越境」の思想を持ちながら活動を行っている音楽家を取り上げ、コンサートや講演会
などを開催することにより、多様な音楽の状況を紹介してきた。今回、音楽と美術の
ジャンルにまたがって様々な「音」を素材にパフォーマンスやインスタレーションを提示
する「サウンド・アート」の代表的な作家、ロルフ・ユリウスが、大阪での新作『Valley』
制作のため来日する機会を捉えて、トーク&デモンストレーションを開催した。
熱心な観客が見守る中で、まずパフォーマンス(約30分)が行われた。
彼は小さなスピーカーやアンプ等を持ち込み、微細な電子音を発するパフォーマンスを
行った。スピーカー上に、茶碗、小石、木の葉等を近づけたり離したり、あるいは載せたり
することで音を微妙に変化させる。会場に集まった観客は表情豊かに移り変わって行く音
そのものによる表現を楽しむことができた。
その後は、サウンド・アーティストの活動に精通しユリウスとも長い交遊を持つ
中川眞が、聞き手と通訳を兼任し、スライドとビデオを使っての作品紹介に続いて、
聞き手や会場からの質問に答える形で講演が行われた。ユリウスの語る言葉は独特の
言い回しが多かったが、中川の適切な解説により、初めて彼の作品に触れた観客も、
視覚的要素と聴覚的要素を混在させる彼独自の表現スタイルやコンセプトについて
よく理解することができたのではないかと思う。全体としては2時間半に及んだが、
パフォーマンス、スライドやビデオによる解説、トークセッションと、非常に充実した
内容の講演会だった。 (藤井明子)
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