ジャンルを横断しコンセプトやスタイルに何らか「越境」の思想を持ちながら活動を
行っている音楽家が、直接自分の音楽について語る講演会シリーズ。今回は、
ニューヨーク在住の音楽家で、「特集公演:音楽の実験」にも出演する刀根康尚を迎えた。
刀根は、1960年代から1972年に渡米するまで、その実験的な演奏活動及び評論活動によって、
日本の現代音楽界や現代美術の領域に大きな足跡を残した人物であるが、
渡米後の彼の活動は、現在に至るまで日本ではほとんど紹介されていない。今回は、
「特集公演」での本人による演奏を含め、彼の活動について知る好機となった。
講演は、自作をCDで聞かせ紹介することから始まった。1970年代末から彼が取り組ん
できた、漢字と音とを関連付けた4つの作品について、そのコンセプト、使用した音や楽器、
テキストなどについて音を聞かせながら、具体的な説明を行っていった。例えば、
漢字の形状や現在の漢字の元になったイメージをコンピュータによって読み取り、
音に変換する作品、横にした五線譜の上に万葉集にある和歌を万葉仮名で書き、
それを楽譜として演奏する作品など。
|