2000年12月5日(火)−17日(日) |
写真展 : アートスペースH、
上映 : アートスペースG |
|
ニューヨークに在住する、リトアニア出身の詩人で、戦後アメリカのインディペンデント
映画や実験映画をリードした映像作家ジョナス・メカスは、1960年代末から70年代初に
かけて、ジョン・F・ケネディの未亡人であるジャクリーヌ・ケネディ・オナシス
(ジャッキー・ケネディ)に請われ、彼女の子供ジョン・ジュニアやキャロラインたちに
映画を教える機会を持った。もっぱら夏の間、彼らは映画を媒介に、親しく付き合う間柄と
なったのである。ケネディ一家と映画との出会いを、ジャッキーは「これまで少しも
知らなかった世界が急に目の前に開けてきたようです。」と、メカスあての書簡で喜びと
感謝をこめて綴っている。また、メカスもそれを「楽園の小さなかけらにもたとえられる
日々だった。」と回想している。この20世紀の秘められた邂逅ともいうべき出来事を、
メカス自身が撮影したフィルムと、そこから焼き付けられた写真によって、立体的に
構成するのがこの企画〈ジョナス・メカス写真&上映展「this side of paradise」〉
である。
同タイトルの写真と映像作品の展示と上映は、両者の微妙な質的違いを対比的に
照らし出し、メカスらしい試みとなっていた。さらに、メカスは1990年代よりビデオによる
作品制作を試みているが、ここでは近作『Laboratorium Anthology』も併せて上映した。
メカスのビデオ作品は、フィルム作品とはまた別の、持続するショットが映像メディアの
本質として持つ記録について意識化を促すという興味深い成果を挙げており、貴重な上映
機会になったといえる。こうした構成から、本企画は、小規模ながら、ジョナス・メカスの
近年の仕事をトータルに取り上げた、複合的な内容を持つものとして来場者より好評を得る
ことができた。会場には映画愛好家はもちろん、写真に興味を持つ者、70年代アメリカ文化
に関心を持つ者など、幅広い観客層が集まったことは特筆すべきであろう。
(越後谷卓司) |
|
<展示作品>
16mm映画フィルムから、200×300mmおよび400×500mmサイズにプリントされた写真。 |
●〈400×500mmサイズ〉通番 原題 (日本語訳題)
678 |
John is filming Tina, his cousin, Montauk, Aug. 1972
(従姉のティナを撮影するジョン、モントーク、1972年8月) |
685 |
John was captain, that day, when we went water skiing, Montauk, Aug. 1972
(水上スキーにでかけたその日、ジョンが船長を務めた、モントーク、1972年8月)
|
722 |
Anthony and John pretending they are Mick Jagger, prancing to a Rolling Stones
record. Montauk, 1972
(アンソニーとジョン。ローリング・ストーンズのレコードをかけて跳ねまわり、
ミック・ジャガーのふり。モントーク、1972年)
|
689 |
John, Atlantic Ocean, Montauk, Aug. 1972(ジョン、大西洋、モントーク、1972年8月)
|
699 |
Peter Beard and John enacting a Hollywood "fight". Montauk, Aug. 1972
(ピーター・ビアードとジョン、ハリウッド式「殴り合い」を演じる。モントーク、1972年8月) ほか、計13点
|
●〈200×300mmサイズ〉
745 |
John and Anthony, Montauk sunset, August, 1972
(ジョンとアンソニー、モントークの落日、1972年8月) |
42 |
Andy and Lee. Andy videotaped a lot, that summer, mostly thru the window of
his cottage. Montauk, August 1972(アンディとリー。この夏、アンディはビデオをたくさん撮った。ほとんどは家の窓越しに。モントーク、1972年)
|
697 |
Caroline Kennedy, Montauk beach 1972 (キャロライン・ケネディ、モントークの浜辺、1972年)
|
693 |
Anthony Radziwill, John's cousin. Montauk, Aug. 1972
(アンソニー・ラジウィル、ジョンの従兄、モントーク、1972年8月)
|
10 |
Elia Kazan reads a fairly tale to his son and John Montauk, Aug.18, 1972
(息子とジョンにおとぎ話を読んで聞かせるエリア・カザン、モントーク、1972年8月18日)
ほか、計16点
|
|
|
<上映作品> |
『this side of paradise』(楽園のこちらがわ)1999年、34分、オリジナル16mmのビデオ版
ビデオ作品『Laboratorium Anthology』 (ラボラトリウム・アンソロジー)1999年、62分
|
|