フォーラムUで踊る珍しいキノコ舞踊団
フォーラムUで踊る珍しいキノコ舞踊団
  コンテンポラリー・ダンスシリーズ4

  「都会をダンス」
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珍しいキノコ舞踊団『ウィズユー3』 レニ・バッソ『Finks(フィンクス)』
2002年2月8日(金)午後7時開演(6時15分開場)
  * 午後6時30分頃より、地下2階アートプラザ前の公共スペース(フォーラムU)より作品を開始。
愛知県芸術劇場小ホール及び地下2階公共スペース(フォーラムU)
<珍しいキノコ舞踊団>
構成・演出・振付・ダンス:  伊藤千枝
ダンス:  山下三味子、井出雅子、山田郷美、佐藤昌代、飯田佳代子
音楽:  ammakasie noka
衣装:  NEW WORLD SERVICE
美術協力:  生意気
制作:  大桶真(パブロフ)
<レニ・バッソ>
構成・演出・振付・ダンス:  北村明子
ダンス:  前島弥恵子、野沢英代、小沢剛、栗原宏之、堀川昌義
衣装:  渡邊昌子
ライティング・デザイン:  関口裕二
作曲:  江村桂吾
映像制作:  兼古昭彦
制作:  布施龍一(ワイルド&ハニー)
主催:   愛知県、(財)自治総合センター、愛知芸術文化センター企画事業実行委員会
共催:   名古屋名城ライオンズクラブ(創立40周年記念事業)、(社)企業メセナ協議会助成認定活動

同時代の新しいダンス表現を追求している振付家を紹介してきたコンテンポラリー・ ダンスシリーズの4回目。
今回は、都会の中でオリジナリティ溢れる創造的な作品創作に取り組みながらも、 難解なダンスのイメージを払拭し続けてきた2つの対照的なダンスカンパニー、 珍しいキノコ舞踊団とレニ・バッソを取り上げた。

日本におけるコンテンポラリー・ダンスの動向は1990年代から顕著になってきたと 考えられるが、中でもこれまでの日本の現代舞踊のスタイルにとらわれることのない 自由な感覚や日常的な動きの発展、他メディアの使用等は90年代以降の コンテンポラリー・ダンスの特徴としてあげられる。ダンスはいつの時代にも街中に 溢れているものの、劇場に上がった途端に難解なものであると受け取られがちである。 そこで今回は、都会の中で常に踊られてきた様々なかたちのダンス、ストリートダンスや ディスコダンス等々とも接点をもちながらも、最先端の時代の空気を掴み、新しい身体の 動きを追求することから新しいダンス表現を生みだしている2つのカンパニーの公演を 行った。

まず、愛知芸術文化センターの地下2階に広がる公共スペース(フォーラムU)より 始まった珍しいキノコ舞踊団の作品『ウィズユー3』では、「どこまでが日常の動きで、 どこからがダンスか」を探る試みとして様々な場所を使用しながら、観客を巻き込んで ダンスが行われた。その後、日常空間であるフォーラムからしだいに非日常空間である 劇場へと上ったダンサーたちは、ちょっとレトロな音楽にのって、日常的な動きから 発展させたちょっと非日常的なダンスを踊りながら、観客も微笑んでしまうほどの親密な 雰囲気を醸し出していた。

一方、マルチメディアを駆使するダンス・カンパニー、レニ・バッソの『Finks (フィンクス)』は、映像やコンピュータをとりいれた今日的な劇空間の中で、意味を そぎ取ったシンプルな動きを複雑に展開させていった。レニ・バッソのダンサーは高度な テクニックを要求され、まさに身体のみで、真剣勝負ともいえる駆け引きを行ってゆく。 そういった動きの中から、観る者は独自の物語を創り出すことになる。ダンサーの身体の すれ違いを、現代社会の中での人間の縮図として読みとることもできる。 あえて物語を前提に作品を創作するのではなく、同時代の身体を提示することによって、 物語を生み出していくという北村の手法と、その要求に応えた映像や照明、音響が、 濃密な緊張感を生みだし、新しい身体でもって時代の空気を伝えることに成功していた。

フォーラムUで踊る珍しいキノコ舞踊団
フォーラムUで踊る珍しいキノコ舞踊団


珍しいキノコ舞踊団
珍しいキノコ舞踊団


レニ・バッソ
 レニ・バッソ


レニ・バッソ
 レニ・バッソ

観客は全くタイプの異なる、非常に個性的な同年代の振付家による2つのダンス作品を 同時に観ることによって、同時代の感性の自由さや表現の振幅の広さを感じることが できたと思う。

最後には、珍しいキノコ舞踊団の伊藤千枝の先導で、観客を巻き込んでダンス・ アフター・ダンスを行ったが、予想に反して大勢の観客が舞台上に上がり、プロのダンサー たちと共に、ダンスを観て踊ってと、ダンスを丸ごと体感していた。良いダンスを観ると、 踊りたくなるということを、観客たちが身を持って示してくれたように思う。

(唐津絵理)
撮影 : 南部辰雄

プロフィール

珍しいキノコ舞踊団
1990年、日本大学芸術学部演劇学科西洋舞踊コースの同級生、伊藤千枝、小山洋子、山下三味子により結成。 3人合作というスタイルで95年まで活動。96年より、伊藤、小山の合作で98年までに3作品を発表。00年には小山が 演出アシスタントに転向。最新作『フリル(ミニ)』は、千年文化芸術祭において特別賞を受賞したほか、第32回日本舞踊批評家協会新人賞、 日本インターネット演劇大賞受賞。01年7月にはフランスのアビニョン・フェスティバルにおいて上演され、好評を博した。

伊藤千枝 (珍しいキノコ舞踊団振付家)
1970年生まれ、東京都出身。4歳よりモダンダンスを学び、15歳よりクラシックバレエを学ぶ。18歳で処女作を発表。 本格的な創作法を学ぶため、日本大学芸術学部演劇学科西洋舞踊コースに入学。同大学中に珍しいキノコ舞踊団を結成、以降作品の 演出・振付・構成を担当。また、リチャード・フォアマンの日本での舞台化への振付・出演なども行っている。00年、 横浜ダンスコレクション・ソロ×デュオ・コンペティションにおいて横浜文化振興財団賞を受賞した。

レニ・バッソ
1994年より北村明子振付作品を国内外で上演。結成直後のバニョレ国際振付賞の東京プラットフォームで、一躍脚光を浴びる。 以後、98年、00年にも東京プラットフォームに選出される。近年ではシアターオリンピックス、利賀新緑フェスティバル、 青山バレエフェスティバル、グローブ座春のフェスティバル、横浜ダンスコレクションなどに作品を提供。98年日本インターネット 演劇賞最優秀パフォーマンス賞受賞。02年にはアジア、北米ツアーを行った。

北村明子 (レニ・バッソ振付家)
1970年生まれ。バレエ、ストリートダンス、ジャズダンスを経て10代でプロフェッショナルな振付家としてデビュー。 ショービジネスを中心に活躍したのち、早稲田大学入学と同時に公演活動を開始。99年には初のソロ作品を香港、台湾において上演。 公演活動のほか、劇団ク・ナウカへの振付や、CM作品ではモーニング娘主演のJT『飲茶楼』シリーズすべてのポーズ・ディレクションを 手がける一方、黒沢清監督の『回路』では、卓越した身体性を駆使してゴーストを演じるなど幅広い活動を行っている。


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