同時代の新しいダンス表現を追求している振付家を紹介してきたコンテンポラリー・
ダンスシリーズの4回目。
今回は、都会の中でオリジナリティ溢れる創造的な作品創作に取り組みながらも、
難解なダンスのイメージを払拭し続けてきた2つの対照的なダンスカンパニー、
珍しいキノコ舞踊団とレニ・バッソを取り上げた。
日本におけるコンテンポラリー・ダンスの動向は1990年代から顕著になってきたと
考えられるが、中でもこれまでの日本の現代舞踊のスタイルにとらわれることのない
自由な感覚や日常的な動きの発展、他メディアの使用等は90年代以降の
コンテンポラリー・ダンスの特徴としてあげられる。ダンスはいつの時代にも街中に
溢れているものの、劇場に上がった途端に難解なものであると受け取られがちである。
そこで今回は、都会の中で常に踊られてきた様々なかたちのダンス、ストリートダンスや
ディスコダンス等々とも接点をもちながらも、最先端の時代の空気を掴み、新しい身体の
動きを追求することから新しいダンス表現を生みだしている2つのカンパニーの公演を
行った。
まず、愛知芸術文化センターの地下2階に広がる公共スペース(フォーラムU)より
始まった珍しいキノコ舞踊団の作品『ウィズユー3』では、「どこまでが日常の動きで、
どこからがダンスか」を探る試みとして様々な場所を使用しながら、観客を巻き込んで
ダンスが行われた。その後、日常空間であるフォーラムからしだいに非日常空間である
劇場へと上ったダンサーたちは、ちょっとレトロな音楽にのって、日常的な動きから
発展させたちょっと非日常的なダンスを踊りながら、観客も微笑んでしまうほどの親密な
雰囲気を醸し出していた。
一方、マルチメディアを駆使するダンス・カンパニー、レニ・バッソの『Finks
(フィンクス)』は、映像やコンピュータをとりいれた今日的な劇空間の中で、意味を
そぎ取ったシンプルな動きを複雑に展開させていった。レニ・バッソのダンサーは高度な
テクニックを要求され、まさに身体のみで、真剣勝負ともいえる駆け引きを行ってゆく。
そういった動きの中から、観る者は独自の物語を創り出すことになる。ダンサーの身体の
すれ違いを、現代社会の中での人間の縮図として読みとることもできる。
あえて物語を前提に作品を創作するのではなく、同時代の身体を提示することによって、
物語を生み出していくという北村の手法と、その要求に応えた映像や照明、音響が、
濃密な緊張感を生みだし、新しい身体でもって時代の空気を伝えることに成功していた。
|