白井剛
白井剛
    コンテンポラリー・ダンスシリーズ4 パート2

    発条ト新作公演 『彼/彼女の楽しみ方』
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パート2
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2002年3月14日(木) 愛知県芸術劇場小ホール
主催:  愛知県、(財)自治総合センター、愛知芸術文化センター企画事業実行委員会
構成・演出・振付:  白井剛
出演:  佐々木暁子、笹嶋麻由、白井剛、田代裕一、森下真樹
制作:  根木山恒平(ハイウッド)

同時代の新しいダンス表現を追求している振付家を紹介してきたコンテンポラリー・ ダンスシリーズ4のパート2。ここでは、今もっとも話題の若手振付家による新作ダンスを 取り上げた。

振付家・白井剛の率いるカンパニー発条ト(ばねと)は、20世紀末に彗星のように現れ、 2000年にはコンテンポラリー・ダンスの登竜門であるバニョレ国際振付賞を受賞、世界的 デビューを飾った。近年では、ダンスに映像を取り入れている作品が非常に多くみられる ようになっているが、その映像が効果的に作品に生かされていることは意外に少ない。 そんな中で、発条ト率いる白井の映像は、映像がもつ過去(身体の虚構性)という媒体の 特異性に対して、生のダンス表現というリアルな身体を効果的に浮かび上がらせるもので あり、「ダンスと映像」という視点からも評価の高いものである。

今回の作品で白井が注目したのは、「人」それぞれがもつ固有の「身体性」である。 個々の人の佇まいや人柄からこぼれ落ちる魅力あるものをすくい取りながら、「人」という 「素材感」そのものを'あじわい''楽しむ'ことのできるようなシンプルで繊細なライブ・ パフォーマンスを行った。

発条トの新作『彼/彼女の楽しみ方 How to enjoy him/her.』では、それぞれの ダンサーのもつ固有の身体から、魅力ある動きを取り出すことによって、作品全体を 構築していった。作品は映像による過去の記録や、リアルタイムで撮影された映像の 投影を交えながら、現実に目の前に存在するダンサーたちのリアルを追求する、まさしく 同時代のコンテンポラリー・ダンスの今後のあり方を示唆するものとなった。







公演終了後には、公演中にも繰り広げられた「即興ゲーム」を観客にも体験してもらう 観客参加型の「アフターダンス」を行った。白井が解説を加えながら、ダンサーたちと 共に一般の観客にも即興ゲームに参加してもらうことによって、作品のコンセプトを 観客自らが体感し、またそれらのプロセスを目の当たりにすることによって、観ている だけの観客たちも、作品のより深い理解が可能になったと大好評であった。

(唐津絵理)
撮影 : 南部辰雄

プロフィール

Study of Live works 発条ト(ばねと)
1996年12月に、白井剛(振付家・ダンサー・映像作家)、粟津裕介(音楽家)を中心として自らの作品づくり・発表のための カンパニーとして結成。98年12月に「Study of Live works 発条ト」と改称。広義における〈ライブ・ワーク〉として、 ダンス・音楽・映像等を用いた作品を発表する。主な作品として『Living Room- 砂の部屋』『タイムニットセーター』 『テーブルを囲んで』『Swingin' Steve』等があり、これまでに8カ国16都市で公演を行った。これまでの作品 (『Living Room - 砂の部屋』『タイムニットセーター』等)では、映像的な視点・発想からライブ(ダンス)表現に取り組み、 その新奇なスタイルで好評を得てきた。

白井剛 (振付家・ダンサー・映像作家)
1976年生まれ。長野県出身。99年3月、千葉大学工学部工業意匠学科卒業。95年にダンスを始める。96年から00年まで、 ダンスカンパニー「伊藤キム+輝く未来」にダンサーとして参加。他方、96年12月に音楽家の粟津裕介らと共に現在の 発条トを結成し、以降、全作品づくりにおいて構成・演出・振付を務める。発条トにおける振付作品『Living Room-砂の部屋』で、 《2000年バニョレ国際振付賞》を受賞し注目を集める。


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