同時代の新しいダンス表現を追求している振付家を紹介してきたコンテンポラリー・
ダンスシリーズ4のパート2。ここでは、今もっとも話題の若手振付家による新作ダンスを
取り上げた。
振付家・白井剛の率いるカンパニー発条ト(ばねと)は、20世紀末に彗星のように現れ、
2000年にはコンテンポラリー・ダンスの登竜門であるバニョレ国際振付賞を受賞、世界的
デビューを飾った。近年では、ダンスに映像を取り入れている作品が非常に多くみられる
ようになっているが、その映像が効果的に作品に生かされていることは意外に少ない。
そんな中で、発条ト率いる白井の映像は、映像がもつ過去(身体の虚構性)という媒体の
特異性に対して、生のダンス表現というリアルな身体を効果的に浮かび上がらせるもので
あり、「ダンスと映像」という視点からも評価の高いものである。
今回の作品で白井が注目したのは、「人」それぞれがもつ固有の「身体性」である。
個々の人の佇まいや人柄からこぼれ落ちる魅力あるものをすくい取りながら、「人」という
「素材感」そのものを'あじわい''楽しむ'ことのできるようなシンプルで繊細なライブ・
パフォーマンスを行った。
発条トの新作『彼/彼女の楽しみ方 How to enjoy him/her.』では、それぞれの
ダンサーのもつ固有の身体から、魅力ある動きを取り出すことによって、作品全体を
構築していった。作品は映像による過去の記録や、リアルタイムで撮影された映像の
投影を交えながら、現実に目の前に存在するダンサーたちのリアルを追求する、まさしく
同時代のコンテンポラリー・ダンスの今後のあり方を示唆するものとなった。
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