カール・ストーン
カール・ストーン
  現代音楽家シリーズ第7回    カール・ストーン講演会
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2001年6月14日(木)アートスペースA
  講師:  カール・ストーン
  主催:  愛知芸術文化センター、 愛知県文化振興事業団、 名古屋芸術大学
  共催:  名古屋アメリカン・センター

「現代音楽家シリーズ」は、ジャンルを横断しコンセプトやスタイルに何らか 「越境」の思想を持ちながら活動を行っている音楽家を取り上げ、彼らの語る言葉を 通して、現代音楽の多様な様相を紹介する、講演会シリーズである。 第7回は、アメリカを代表する中堅の作曲家で、コンピュータ音楽の第一人者の1人、 カール・ストーンのレクチャー&デモンストレーション・パフォーマンスを開催した。

雨天にも関わらず、予想以上の観客が訪れた。観客層は名古屋芸術大学の学生など 比較的若い人が中心であった。コンピュータ音楽や現代音楽など音楽だけでなく、 コンピュータを用いた美術やデザインに関心のある人も多かった。

ストーンは、「コンピュータ音楽の軌跡」というテーマのもと、自分の音楽歴に ついて学生の頃の活動を起点に講演を開始し、時間軸に沿いながら、コンピュータを 使った自分の作曲・演奏の特徴について、分かりやすく語った。

カール・ストーン講演会風景


カール・ストーン講演会風景
 カール・ストーン講演会風景

大学時代のラジオ局でのアルバイトが、既存の音楽や音から引用し、サンプリングや 加工する現在のスタイルの原点となったという話は、若いアーティスト達を大いに刺激 したようだ。コンピュータやエレクトロニクスを使って即興で作曲と演奏を行う彼の 音楽では、プロセスそのものがその曲の次の進行を決めていくと言う。そして、オリジナル とコピーの境が曖昧になってしまう点に非常に興味があり、敢えてこのような方法を用いて、 外からもってきたものを全く新しい形で表現することで、自分が決して受け身的な作曲家 ではなくて、極めてクリエイティブで、アクティブな作曲家であると自負していると語った。 また、CDを用いて初期の代表作や映像とのコラボレーション作品を紹介し、最近の活動 として、リアル・タイムでの即興演奏を行った。会場の音響設備や照明設備の限界があり、 パフォーマンスはデモンストレーションを越えるものではなかったが、公演では絶対行 わない演奏時のコンピュータ画面の操作を特別に画面を映像投影するなど、音楽創造の 手の内を明かすとも言えるほど丁寧に自分の音楽について紹介してくれた点に、 観客も納得しているようだった。

最後に、実際にコンピュータを使って音楽活動を行っている観客などから活発に 質疑応答が行われた。

(藤井明子)

撮影 : 怡土鉄夫

プロフィール

カール・ストーン
ロスアンジェルス生まれ。カリフォルニア芸術大学でジェームス・テニーらに作曲を学ぶ。1972年より電子音響音楽を作曲。 ソロのほか、高橋悠治、沢井一恵、大友良英、木佐貫邦子、ステラークほか、様々な音楽家、ダンサー、美術家と コラボレーションを行う。『ヴィレッジ・ヴォイス』誌は、彼を「現在のアメリカの最も優れた作曲家の1人」と評している。


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