大友良英
大友良英
  特集公演:「声の現代-コンピュータとの出会いとその可能性」

  コンサート第1夜   大友良英&カール・ストーン
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2001年9月13日(木) 愛知県芸術劇場小ホール
  制作協力:  キャロサンプ
  出演者:   大友良英(エレクトロニクス)、カール・ストーン(コンピュータ、CDプレーヤー)、吉田アミ(声)、 相良奈美(声)、Sachiko M (サンプラー)、HACO(声)
  演奏曲:   大友良英《声とサイン波のためのモジュレーション》(新作初演)
カール・ストーン《アダナ・ウルファ》(新作初演)
大友良英とカール・ストーンによるヴォイスをフィーチャーしたセッション

「特集公演」は、文化情報センターがオリジナルに企画するコンサートを中心に、 1つのテーマに沿って、多様な現在の音楽を紹介する企画である。今回は、様々な「声」、 とりわけコンピュータやエレクトロニクスとの出会いを通じて展開する声の可能性に注目し、 「声の現代」というタイトルで、2つのコンサートを開催した。

第1夜は、声とコンピュータが織り成す挑戦的・創造的なパフォーマンスで、 エレクトロニクスやコンピュータを用いた日米の音楽家の旗手、大友良英とカール・ ストーンが、それぞれ声の共演者を得て、新曲を発表した。

大友の《声とサイン波のためのモジュレーション》は、サチコ・Mの操作するサイン波 (純音)と、2人の歌手:相良奈美の母音を長く伸ばした声、および吉田アミの喉を 締め付けた声にならない小さな摩擦音の3つの音に、大友が発する振動のような重低音が 加わる、非常に微細な曲だった。

左よりカール・ストーン、HACO
左よりカール・ストーン、HACO

即興演奏を行う大友(左)、相良、ストーン
即興演奏を行う大友(左)、相良、ストーン

わずかな変化を味わうという大友の意図は、 エレクトロニクスを扱う音楽家のなかでは最近試みられている方向性である。 舞台と客席がはっきりと分かれたコンサートにおいては、受け入れられにくいスタイル だったと言えるが、気鋭の音楽家による新しい試みである点から、また公演最初という 順番に助けられたこともあり、観客も集中力をもって聞いた。

一方、ストーンの《アダナ・ウルファ》は、音として変化に富んだパフォーマティヴな 曲だった。ヘッドホンを通じて流れてくるCDの音楽を聴いて歌手のハコが反応する声と、 ストーンが操作するコンピュータによる音楽とのコラボレーション作品である。 ハコがヘッドホンで何を聞いているのかは、観客にも、CDで音楽を送っているストーン 自身にも分からない。そうした複雑なシステムを介して出会う声とコンピュータによる 作品であることは、パンフレットに寄せた作曲家の解説を読まなければ分からないが、 システムに気が付かなくとも、観客は、ストーンの出す音と離れたり寄り添ったりする ハコの声を楽しめたのではないかと思う。

最後の、大友(エレクトロニクス)、ストーン(コンピュータ)に、相良(声)が 加わった即興演奏は、コンピュータやエレクトロニクスを使った演奏としてはオーソドックス なスタイルだった。この作品では、3人の出す音は前の曲で行った演奏とは全く異なる もので、観客は、3人の即興による音楽を楽しみ味わうことが出来た。

(藤井明子)

撮影 : 南部辰雄

プロフィール

大友良英
1959年生まれ。ターンテーブル奏者・ギタリスト・作曲家として、日本はもとより世界各地でのコンサートやレコーディング等、 常にインディペンデントなスタンスで活動し、多くのアーティストとコラボレーションを行っている。また、映画音楽家としても、 中国/香港映画を中心に数多くのサウンドトラックを手がけ、ベルリンをはじめとした多くの映画祭で受賞、高い評価を得ている。

カール・ストーン
ロスアンジェルス生まれ。カリフォルニア芸術大学でジェームス・テニーらに作曲を学ぶ。1972年より電子音響音楽を作曲。 ソロのほか、高橋悠治、沢井一恵、大友良英、木佐貫邦子、ステラークほか、様々な音楽家、ダンサー、美術家とコラボレーションを 行う。『ヴィレッジ・ヴォイス』誌は、彼を「現在のアメリカの最も優れた作曲家の1人」と評している。

吉田アミ
ヴォイスというよりも単に音そのものとしての、意識せざるを得ない可聴すれすれの声ならぬ声に挑む、ハウリング・ヴォイス・ オリジネイター。現在、ソロ活動の他、Utah Kawasakiとのユニット「astro twin」、Sachiko Mとのデュオ「cosmos」、和田ちひろとの ギャルバン「カリフォルニア・ドールズ」等で活動中。

相良奈美
ヴォーカリスト。東京藝術大学音楽学部声楽科を卒業後、書上奈朋子とデュオ「OPERA」を結成。その後、エピック・ソニーから 「THE ECCENTRIC OPERA」としてデビュー。東京ナミィの名でアンダーグラウンド・シーンでも活躍。圧倒的な存在感と驚異的な ハイトーン・ヴォイスを持つ。現在サンフランシスコを拠点に活動中。

Sachiko M
サンプラー奏者。ユニット「GROUND-ZERO」のサンプラー奏者として活躍。98年3月の解散以降は、サンプラー自体がもともと 持っているテスト・トーンやノイズ成分を再利用した独自のサンプラー奏法で、ポスト・サンプリング指向の作品を次々発表。 特にサイン波のみを使ったソロはヨーロッパを中心に各方面からの注目を集め、彼女のラディカルな姿勢は常に評論の的となっている。

HACO
ヴォーカリスト・作曲家。1980年代よりユニット「AFTER DINNER」(81〜91年)の中心メンバーとして活動し、海外でいち早く 評価を得る。95年にはソロ・アルバムを発表。以降、コンパクトなサンプラーや独自のエレクトロニクス、エレクトリック・ マンドリン、パーカッション、玩具等を声と組み合せたインプロヴィゼーションを行う。


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