ケージの《居間の音楽》は、4つの短い楽章から成っているが、
2つ目の楽章で4人の演奏者が英単語を繰り返しながら舞台全体に散らばっていくリズミカル
なラップのような声が聞かれた。この曲は通常は打楽器奏者によって演奏される作品である。
今回の演奏者は4人とも打楽器奏者ではなかったが、それゆえに演奏者それぞれの個性が
出て、かえって表情豊かな演奏になった。
最後に演奏された難曲、カーゲル作曲の《エクゾティカ》は、様々な民族楽器とともに
奇声が演奏に加わる。この曲は「どこにもない国の民族音楽」であり、声を含めた多種の
楽器が入り混じり、渾然一体となって、喧噪から静寂までをアイロニカルに表現する作品で
あると言えよう。6人演奏者たちは、全員がそれぞれ10種類もの様々な楽器を担当し、
衣裳も様々な国のものを交えて、35分に及ぶ演奏を行った。
今回の「特集公演」第1夜・第2夜とも、こうしたコンサートは全国的にも多数開催されて
いるわけではなく、東京や関西、四国地方からも観客や新聞記者、評論家が訪れた。
とりわけ中部地域では数少ないため、開催を待ち望んでいた観客の興味や要望に
十分に応えるものであった。
(藤井明子)
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