「第6回アートフィルム・フェスティバル」は、実験映画やビデオ・アート、 ドキュメンタリーの他、芸術としての映画を追求する作品などを集め、プログラムを 構成した。今回の上映作品は、大まかに三つに区分することができる。
第一は、初公開 となる石田尚志『フーガの技法』の他、2001年9月に「第6回スプリト国際新作映画祭」 （クロアチア）で特別賞を受賞した『ボディドロップアスファルト』などの、 「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」。
第二は、現在はアメリカを代表する 現代美術作家となったビル・ヴィオラのビデオ・アートを、主要な作品を集成することに よって振り返る回顧上映。
そして第三に、槌橋雅博『TRUTHS:A STREAM』、佐藤真 『SELF AND OTHERS』、ジョナス・メカス『歩みつつ垣間見た美しい時の数々』の、 愛知県初（メカス作品は日本初）となる近作・新作映画の上映である。
この3本は、 アートとフィルムの関係の、現在の動向を考察する上での重要作品といえるが、 いずれもこの時期までに愛知県内では、映画館などでの商業的な公開が行われず、 当地における貴重な上映機会となった。

作品の上映に併せて石田、槌橋、佐藤の三監督を招き（槌橋監督の回は、 プロデューサーやスタッフ、出演者も同行）、上映終了後に質疑応答を行った。 観客からは的確な質問が寄せられ、監督らは一様に観客の質の高さを賞賛していた。 このことはまた、当地では一般的になじみの薄い、実験映画などの作品を紹介してきた、 愛知芸術文化センターの映像事業が、年数を重ねながら確実に地域に根をおろしつつ あることを実感させた。

今回特集したビル・ヴィオラのビデオ・アート作品は、昨年の「第5回」で特集した 1950−70年代初めのアメリカ実験映画の、後の時代となる70−90年代半ばまでをカバー するものだが、普段は映画を鑑賞する観客や、また近年になって美術家としてヴィオラを 知る人々にとって、彼の映像の仕事を知る好機となり、意義深いものになったといえる。 また、3時間2分の『TRUTHS:A STREAM』や、4時間48分の『歩みつつ垣間見た美しい時の 数々』は、話題作でありながらも、長時間であるために、今後も当地での上映は難しい ことが予想され、上映の機会そのものが重要といえた。特に、日本初上映となった メカスの新作である後者は、地元だけでなく、東京、大阪、神戸、金沢などからも 鑑賞者が訪れ、上映を賞賛する声も聞くことができた。