2001年は、1996年にイタリアで開催された「イタリアにおける日本年」の返礼として、
日本・イタリア両国政府の決定により「日本におけるイタリア年」とされ、イタリア政府が
中心となり、この国の文化・芸術を紹介する催しが大規模に開催された。各地で300以上の
催しが行われるが、この「イタリア映画祭2001」もその一環として開催されるものである。
なお、愛知芸術文化センターとしては他に、2002年2月−4月に開催する愛知県美術館の
「世界遺産ポンペイ展」が、「イタリア年」企画に数えられている。したがって
この上映会は、センターの複合機能の発揮という点でも、一つの役割を果たしていたと
いってもいいだろう。
イタリア映画は、サイレント映画時代の「イタリア史劇」や、第二次世界大戦後の
映画の革新となった「ネオリアリズモ」など、映画史に偉大な足跡を残している。
そして、ジャン=リュック・ゴダールが近作『ゴダールの映画史』(1988-98)において、
「アメリカによる映画の占有と、映画を作る何らかの画一的(ユニフォルム)なやり方に
抵抗したという意味での唯一の映画は、イタリア映画だった」と述べているように、
多くの世界の巨匠たちから敬意を表されてきた。しかしながら、イタリアを象徴する
巨匠フェデリコ・フェリーニの死後、日本での上映の機会は極端に減少しているのが
現状である。特に1980年代後半から登場した、インディペンデント系の新人たちの
紹介は遅れているといっていい。この「映画祭」では、日本では知られざるイタリア映画
の1990年代に焦点を当て、そのまとまった形での紹介を意図した。その上で、テーマ
「イタリア旅行」を設定し、生まれ故郷や特定の土地へのこだわりから作品を生み出して
行く傾向を持つ、この国独特の志向性を反映したプログラムを構成している。
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