白川幸司『眠る右手を』
白川幸司『眠る右手を』(2002)
  愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品第11弾

  白川幸司監督 『眠る右手を』
前へ 自主企画事業報告書 > 2001年度 > AAC オリジナル映像作品第11弾 次へ
白川幸司監督 『眠る右手を』
2002年、Video、240分、カラー
企画:  愛知芸術文化センター   制作:  愛知県文化情報センター

「愛知芸術文化センター・オリジナル映像作品」は、今日、芸術のみならず、哲学や 思想の領域でも高い関心が寄せられている「身体」をテーマに設定した、実験的な 映像作品を自主制作するプログラムである。開館以来、これまでに一年に一本のペースで 継続的に作品を制作しており、公立の文化施設では日本国内では類例のない企画として、 その試みのユニークさと作品の質の高さから全国的にも注目を集めている。

これまでの作品は、いずれも映像芸術の新しい可能性を切り拓く意欲作として評価を得、 国内はもちろん、国際映画祭や企画上映会への出品など海外での上映機会も少なくない。 なかでも平成5年度制作の天野天街監督『トワイライツ』(1994年)や、平成11年度制作の 和田淳子監督『ボディドロップアスファルト』(2000年)は、国際映画祭での受賞という 成果を挙げるに到っている。


また、「身体」というテーマから進展して、作品がジャンルを越えた展開をみせる ケースもある。平成8年度制作の大木裕之監督『3+1』(1997年)は、愛知芸術文化 センターのオープンスペースであるフォーラムを舞台に行われたコラボレーション公演 『舟の丘、水の舞台』(1996年9月24日開催)を記録したドキュメンタリーであるが、 公演にも監督の大木が参加するという、ユニークかつ実験的なプロジェクトであった。 平成12年度制作の石田尚志監督『フーガの技法』(2001年)は、バロック音楽の巨人J.S. バッハの同題曲を映像化する試みであった。完成後に開催したイベントークPart10 「J.S.バッハ『フーガの技法』をめぐって」(2002年1月30日、 於:愛知県芸術劇場小ホール)は、この作品の上映とともに、チェンバロの演奏や詩の 朗読を行い、公演の構成自体がバッハのフーガ(対位法)の技法そのものになるという、 知的な独自性に満ちた展開を見せた。

通算11本目となる平成13年度は、「バンクーバー国際映画祭」や「ロッテルダム国際 映画祭」などへの出品歴を持ち、注目を集めている若手の映像作家・白川幸司を監督として 選出。『意識さえずり』(1997年)や『ヒダリ調教』(1999年)など、強い身体的な オブセッションに依拠した作品から出発した白川だが、本作品においては、初期から 発展して、家族など人間の関係性を追求するドラマへと展開し、作家としての新たな 境地を見せている。

(越後谷卓司)

スチール : モリエイキ

プロフィール

白川幸司
1967年生まれ。宮崎出身。27歳の頃、映像作家になる決心を固め、仕事を辞し、イメージフォーラム付属映像研究所に第20期生として 入所。第21期も特待生として在籍。『意識さえずり』(1997年)や『ヒダリ調教』(1999年)で、8mm映画というメディアの表現の 限界に挑む。他の作品に『獣の処刑』(2000年)、『ファスナーと乳房』(2001年)がある。

〈作品クレジット〉
脚本・編集・監督:  白川幸司
音楽:  小松清人
撮影:  井川広太郎
録音:  木村恵子
照明:  村野とおる
企画:  愛知芸術文化センター
制作:  愛知県文化情報センター
エグゼクティブ・プロデューサー:  越後谷卓司
オリジナル映像作品作家選定委員:  竹葉丈、とちぎあきら、平野勇治、 村山匡一郎
出演:  草野康太、山崎君子、二見林太朗、沖本達也(ワンダラーズ)、平井賢治、齊藤剛、 大鷹明良、
岸燐、藻羅


前へ このページのトップへ 次へ