過去、日本からは、寺嶋真里の『姫ころがし』(1999年)などが出品され、また、
ヨーロッパで活躍しているビデオ・アーティストの緒方篤や、日本実験映画の第一人者
かわなかのぶひろが、審査員として招かれるなど、既に少なくない関わりがある。
かわなかが参加した1998年の映画祭の模様は、彼がその際にデジタル・ビデオで撮影した
映像をもとに、翌99年に16mmの映像作品『夢の繪』としてまとめられ、上映されている。
日本ではこの作品を通じて、クロアチア南部のアドリア海に面したスプリト市の風景と
ともに、この地で毎年秋に開かれている本映画祭の存在を知った者もいるだろう。
『ボディドロップアスファルト』の受賞理由は、「短編映画から別の(新しい)ものへ
の飛躍だ。深刻さを秘めた自分自身へと言及する典型的なビデオによる表現と、空想的で
キッチュ(世俗的)な表現やポップな流行歌が並置されている。
ビデオ言語から長編映画を作り出そうとする試みである。」となっている。
個人映画的な表現とTVドラマ的な描写、あるいはシリアスな内面告白とポップで通俗的、
遊戯的な映像が共存し、それらが飛躍するように接続される映画文法的な実験が
評価されたことがうかがえる。また、ビデオを使った長編作品ということも、一種の
メディア的な実験として、積極的に受け止められた様子がある。
なお、ビデオ部門のグランプリは『INSTRUMENTAL』(2000年、監督:Velika Britanija、
イギリス)、特別賞は『ボディドロップアスファルト』とともに、『QUARTO』
(2000年、監督:Ennio Ruffolo、イタリア)の2本が受賞している。また、フィルム部門
では、ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠、ジャン=リュック・ゴダールの新作
『ELOGE DE L'AMOUR』(2001年、スイス・フランス、2002年に『愛の世紀』の邦題に
より劇場公開)が特別賞を受賞していることが特筆されよう。
(越後谷卓司)
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