オーケストラ演奏と合唱による

  H・アール・カオス ダンス公演 『カルミナ・ブラーナ』
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2002年11月6日(水) 愛知県芸術劇場大ホール
企画制作: 有限会社東京アートファクトリー、愛知県文化情報センター
主催:  H・アール・カオス、あいち芸術文化フェスタ2002開催実行委員会、 財団法人自治総合センター
助成:  平成14年度文化庁支援事業、財団法人セゾン文化財団、
社団法人企業メセナ協議会助成認定活動
構成・演出・振付: 大島早紀子
出演: 白河直子、奥山由美子、菊池久美子、木戸紫乃、泉水利枝、小林史佳、日原ゆり
ソリスト: 大須賀園枝(ソプラノ)、波多野均(テノール)、妹尾樹・浅井隆仁(バリトン)
指揮: 笠松泰洋
オーケストラ: 中部日本交響楽団
合唱: バッハ室内合唱団 (合唱指導:妹尾樹)
原曲: カール・オルフ
音楽監督: 都築正道 (中部大学教授)

10周年を迎えるにあたり、複合文化施設である愛知芸術文化センターにふさわしいダンスと 音楽による総合舞台芸術として、三面舞台を備えた愛知県芸術劇場大ホールの機能を十分に 活かした新しい舞台芸術作品の創作公演を行った。 作品はカール・オルフ作曲の「カルミナ・ブラーナ」。この音楽は、修道院で見つかった 12・3世紀の古い歌集にオルフが新たに作曲を加えた、ソロ・合唱・器楽合奏ありの 「舞台上演用世俗カンタータ」である。

とはいうものの、これまでは実際に生の音楽と ダンスで上演されることはめったになく、コンサートもしくはテープ演奏でのバレエ公演、 という形式で上演されることがほとんどであった。 そこで21世紀にふさわしい作品の創作にあたり、オルフの目指したダンスと音楽の統合という 考え方に当センターの理念を重ね合わせ、音楽と人間感情の根源に遡ろうとするオルフの プリミティズムを、実際の演奏を伴った新解釈・新演出により最新の舞台作品として 甦らせようと考えた。

演出・振付をした大島早紀子が、「『生』の凝縮した時間を内包するダンサーの身体 と、『生』を開放させる音楽との共振を通して、刹那的快楽を求める人間の欲望や、 その対照にある聖なる力を表出したい」と述べて、今回の演奏のために結成された地元の オーケストラと合唱による重厚な音楽をベースに、独自の解釈による今日の 「カルミナ・ブラーナ」の世界を創り上げ、多くの観客をその異次元世界へと惹きこんだ。

ダンサーとソリストをのせたまま奥舞台から前方へとスライドで移動する巨大な 舞台装置、奈落からせり上がる壁や酒場のシーン、大島は自身の演出の才を存分に生かし、 次々と大掛かりな演出を施した。 なかでもラストシーン、演奏に合わせてせりと共に天上へと飛翔していくダンサーたち、 演奏に合わせてせりと共に天上へと飛翔していくダンサーたち、そして50Mもの奥舞台から 照射される光源へと小さくなっていく白河直子の後ろ姿は、多くの観客の目にいつまでも 焼きついて離れないことだろう。


愛知芸術文化センターの舞台機構を十分に活かして繰り広げられたこの舞台は、 21世紀の幕開けと呼ぶにふさわしい総合舞台芸術作品の誕生となった。なお、 H・アール・カオスはこの作品の成果によって、2002年度の舞踊批評家協会大賞を受賞した。
(唐津絵理)

撮影 : 南部辰雄

プロフィール
 H・アール・カオス
1989年、演出・振付家の大島早紀子とダンサー白河直子により設立。 独創的な作品は、アイデアと多彩なメディアを駆使しながら、時代の空気と鋭く共振し、 その精神や思考の在り方を形にすることで、優れて個的でありながら普遍的な説得力を 発揮している。ダンスの美学を書き換えた、既成概念を打ち破る大島の空間感覚溢れる 創造力と、衝撃的な天才ダンサー白河の究極の身体造形とにより、国内でも圧倒的支持を 集めている。2000年には当センターにおいて日本で初のオーケストラによる「春の祭典」 を成功させた。

 笠松 泰洋 (指揮者)
東京大学文学部美学芸術学科卒業。作曲を三善晃、ピアノを山根美代子の各氏に師事。 蜷川幸雄の「グリークス」をはじめとする多数の演劇、是枝裕和監督作品を中心とする 映像作品にも数多く音楽を提供。

 大須賀園枝 (ソプラノ)
名古屋芸術大学音楽学部卒業。安藤恭子、大海丘也、阿久津紀子、林安喜子、澤脇達晴、 千葉清子の各氏に師事。現在、松本美和子女史に師事。第9回全日本ソリストコンテスト 声楽部門優秀賞。第4回「万里の長城杯」国際音楽コンクール声楽部門第3位。

 波多野 均 (テノール)
愛知県立芸術大学院修了。ウィーン国立音楽大学卒業(最優秀ディプロマ取得)。 カラヤン財団声楽研修所修了。ザルツブルグ国際モーツァルトコンクール第3位、 東ドイツ・オペラ歌手コンクール第2位入賞。75年以降、ウィーン室内歌劇場、 マクデブルグ、アーヘン、ルツェルンの各市立歌劇場と契約。

 妹尾 樹 (バリトン)
愛知県立芸術大学卒、同大学院修了。愛知県知事賞、豊田市文化奨励賞受賞。 オペラ歌手集団<樹>Kodachi主催者。バッハ室内合唱団指揮者。 バリトン歌手としての多彩な経験から豊かなイメージを与える合唱指導で有名。

 浅井 隆仁 (バリトン)
東京音楽大学声楽専攻(オペラコース)卒業、同大学院声楽修了。 二期会オペラスタジオ第41期マスタークラス研究生修了。第9回日本モーツァルト 音楽コンクール第2位、第12回奏楽堂日本歌曲コンクール第2位、国際モーツァルト コンクール派遣者選考演奏会2001優勝等。
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