仮装する空間

  瀬田哲司・岡崎乾二郎 & 津田佳紀・鈴木昭男
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1994年3月8日(火)〜3月27日(日)
2階北側連絡通路、地下2階フォーラム(マルチビジョン)、11階展望廊下

<関連企画>
アーティスト・トーク  アートスペースE,F
1.  「音の環境へ−鈴木昭男の世界をめぐって」  1994年3月12日(土)
出演者=川崎義博(音響デザイナー)、中川真(京都市立芸術大学助教授)
2.  「やっぱしアート」  1994年3月20日(日)
出演者=瀬田哲司(美術家)、正木基(目黒区美術館学芸員)
3.  「情報スーパーハイウェイ時代のお化けと幽霊」  1994年3月26日(土)
出演者=岡崎乾二郎(美術家)、津田佳紀(美術家)

愛知芸術文化センターのオープンスペースにおいて、その空間そのものをテーマにした インスタレーション作品の展覧会を実施した。愛知県美術館との共同企画であるこの展示は、 展示室の枠を越えて、パブリックスペースと美術のかかわりかた(手法)を探ろうとしたもの である。

瀬田哲司は、2階連絡通路において火のイメージにインスピレーションを得て、6本の柱に ペインティングを施した。そして、真っ赤な衣装のパフォーマーが、通行者とは無関係に 柱の回りをぐるぐると移動したのである。その作品は、作品を見るためにではない、 通過していく日常的な視線を前提としているものであった。

同様に、岡崎乾二郎と津田佳紀の作品もまた、それが作品であることをあえて主張しない、 企みに満ちたものであった。地下フォーラムのマルチビジョンと天井照明を用い、 建築構造にすでに組み込まれた機能を取り込むことで、その空間の特徴を強調し、 同時にまた反転させる手法でもあった。

また、11階展望廊下の鈴木昭男のサウンドインスタレーションは、電気音響を用いながら、 石の素朴な動きと音をきっかけとした作品であった。微妙な音空間の変化と、その場所から 見下ろす都市の光景からは、都市環境における自然の意味が問われているようでもあった。

この三つの作品は、どれもいわゆる野外彫刻やモニュメントから想定されるパブリックアート とは、大きな隔たりがあるようだが、それぞれが、その場所のための作品をどう創るかに ついて、クリティカルな、そして実験的な解答を提示したといえる。

現代の都市環境において、アートが積極的に関わっていくための、問題と矛盾、 そして可能性。場所のもつ空間的・意味的な特性と、観賞者の視点の設定について、 どの作品も意識的な取り組みであった。しかし、企画者として自らに問いなおしていくべき 課題は多い。今回の試みを、単なるイベントにとどめることなく、問題意識の確認として、 今後の事業にも反映していきたいと考えている。
(高橋綾子)






Photo : 山口幸一

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