1994年7月29日(金) 19:00 愛知県芸術劇場小ホール
出演: |
ガムランアンサンブル ダルマ・ブダヤ
藤島啓子(ピアノ)、寺原太郎(スリン) 、伊藤朱実子(ガンバン)、安達綾子(ソプラノ)
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演奏曲: |
ジョン・ケージ「ハイカイ」1988、 松永通温「ウェイヴス」1981、 松平頼暁「鳥類学」1987
ルー・ハリソン「ピアノ・コンチェルト・ウィズ・ガムラン」1987日本初演
ブディ・ラハルジョ「グディ・ジャティ・ディリ」1994初演
シンタ・ウルル「ガナンタラ」1988日本初演
マイケル・ナイマン「タイムズ・アップ」1983
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「ガムラン・メッセージ」の締めくくりとして、このコンサートでは、作曲家によって
様々な姿に生まれ変わったガムランを、世界各地で異種配合される類稀な音楽
「ハイブリッド・ミュージック」とし、紹介した。
演奏は新しいガムラン音楽を演奏し続けている日本の先鋭的ガムラン・グループ、
ダルマ・ブダヤ。
公演のプログラムは、アメリカのルー・ハリソン、ジョン・ケージ、日本の松永通温、
松平頼暁、イギリスのマイケル・ナイマン、インドネシア系オランダ人のシンタ・ウルル、
1ヶ月前に公演を行ったインドネシア国立ヨグヤカルタ総合芸術大学の教官で日本に
留学して義太夫を学んだブディ・ラハルジョの曲と、非常に充実した構成となった。
演奏はケージの作品から始まった。「音楽を集中して聴かないように」という意図に
そくし、客入れの途中から演奏を開始した。満席の観衆を前に、ダルマ・ブダヤは
曲ごとに趣向を凝らした集中力の高い演奏を行った。同じ楽器から生み出される
これほど多様なスタイルをもち、異なる印象を与える音楽に観客は圧倒されただろう。
特にハリソンの「ピアノ・コンチェルト」と、シンタ・ウルルの「ガナンタラ」は、
どちらも日本初演だったが、表情豊かな美しい仕上がりだった。
「ピアノ・コンチェルト」は、ハリソン特有の流麗な旋律が、藤島啓子のピアノと
ガムランの双方によって相乗的に重なって響き合い、本来のガムランとは全く異なる
不思議な美しさを創り出した。ピアノをガムラン楽器に合わせて調律するという難題を、
調律師の理解と協力を得て解決した貴重な演奏だった。
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このコンサートは、現代のガムランの動向を伝え、ガムランの新曲の魅力を伝える
というテーマを、質の高い演奏により実現した他に類のないコンサートだった。
(藤井明子)
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Photo : 都築秀俊 |