ダンス・ルネッサンス

  米井澄江&ダンサーズ公演 『箱の中のメヌエット』
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    米井澄江&ダンサーズ公演
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1994年10月29日(土) 14:00/19:00  愛知県芸術劇場小ホール
振付・出演: 米井澄江
出演: 石巻由美、佐々木秀子、飯田泉、吉沢 恵、塚本晃司、大野光一
米井澄江が5人のダンサーを引き連れて、初めての地方公演を行った。 日本のモダン・ダンス界では、一度発表された作品は、その場限りで捨て去られて しまうことが多いが、同じ作品の公演を時間をおいて行うことで、作品の完成度が 増すことは、多くの作品にあてはまるだろう。少なくとも米井の場合は期待以上の 作品となっていた。

ホールの天井からは、聖書から発想を得たという巨大な鯨の骨がぶら下がり、 時折青白く光って揺らめく。地球を箱の中に置き換え、ダンサーたちは、忙しく くるくると走り回る。「難解で暗い」というモダン・ダンスにこびりついたイメージを 払拭するために、子供の遊戯やマイムを用い、一般の人が馴染みやすい明るく、 楽しい作品を創作するようになった、と語る米井だが、この作品でも、手遊びのような マイム風の動きを全体に散りばめ、飽きる間もなく次々と作品を展開させている。

場面転換の度に何度も変化するオリジナル曲は、鯨の下で動き回る人々の心情を 代弁するかのように、リズミカルにテンポを上げていく。ダンサーのからだは、 床に投げられ、打ちつけられ、回転し、また立ち上がり、同じ動きを繰り返す。 輪廻を想起させるこのアクロバティックな動きの歯車は、いつしか微妙なずれを生み出し、 作品はクライマックスを迎える。桟敷席でダンサーの汗、息づかいをほんの間近かに している観客は、このホール全体が、そのまま箱の中に置かれているような不思議な 共振を感じたことだろう。

鋭い人間観察に基づいたエネルギッシュな作品は、「ダンスは楽しいもの」との、 新たな認識と共に、これからも地球という箱の中で生き続けねければならない我々に、 ちょっぴり辛口の、けれど温かい示唆を与えてくれたにちがいない。
(唐津絵理)




Photo : 南部辰雄

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