東南アジア諸国の中でも映画の盛んな国の一つといわれるインドネシアであるが、
その作品はいまだ体系的な紹介がなされていない。
この上映会は、50年代の黎明期から80年代のニューウェーブまでの歴史を、
短編を含む19作品によって俯瞰的に眺めようという試みで、インドネシア映画の父と
称されるウスマル・イスマイルからスラメット・ラハルジョ・ジャロットら現代の
作家までの流れをたどる「インドネシア映画パノラマ」、アジアを代表し国際的に
活躍する社会派「女優クリスティン・ハキムの軌跡」、旧ソ連に学んだ社会派の巨匠
「シュマンジャヤ監督回顧展」の三つの特集から構成。
ガムラン音楽などの伝統的な要素も取り入れながら生み出される、この国の映画の
持つ緩やかな時間の流れやリズムは、日本の観客にとって非常に新鮮な刺激であった。
観客は、若者から年配までの幅広い層が集まり、また、特に土曜日以降はインドネシアに
興味を持つ人や、インドネシア語を学んでいる人、インドネシアからの留学生・労働者など、
映画ファン(特にアジア映画ファン)以外の客層も集まり、この催しにふさわしい広がりを
感じさせた。
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<上映作品>
ウスマル・イスマイル監督
『血と祈り』 ('50)
スラメット・ラハルジョ・ジャロット監督
『月と太陽』 ('80)
トゥグ・カルヤ監督
『蚊帳の中』 ('82)
シュマンジャヤ監督
『オペラ・ジャカルタ』 ('85)
ほか全19作品(参考上映を含む)
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<参考上映>
5日(金) ゴトット・プラコサ作品集
6日(土) ガリン・ヌグロホ監督
『水とロミ』('91)
* いずれも短編作品を上映
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