文化情報センターが開館以来追求してきたテーマである「身体」を正面から取り上げた
上映会である。これまでも「オリジナル映像作品」の制作などを通し、映像事業でも
このテーマを扱ってきたが、上映会のテーマとして取り上げることは初めてであった。
「映像と身体」といってもこのテーマの指し示す範囲は極めて広く、そのため、
ある方向づけを行う必要がある。この上映会で意図したのは、これをより具体化する
ために「映像と身体表現(=パフォーミング・アーツ)」との関係という観点から、
様々な時代やジャンルの作品を横断的にとらえ、映像表現が獲得した多様性と、
およそ100年に渡る歴史の中で培われた独自性を探ることである。
マジックをべースにしつつフィルムでしかなし得ない映画的トリックを開発した
ジョルジュ・メリエスや、ボードビル芸を究極ともいえる映画的運動へと昇華した
バスター・キートンなど、映像芸術のパイオニアたちの例を引くまでもなく、
「映像と身体表現」の間には深い関係があった。
そして、こうした両者のプリミティブな関わりは、パフォーマンス的要素を含んだ
今日の実験映画やビデオアートなどとも共通する側面を持っているのではないか。
この催しは、単なる舞台公演の記録といったレベルを越え、身体や身体表現を
映像メディアはどう捉え、表現するのか、という問題に対する、様々なアプローチの
集積ともいえるだろう。
(越後谷卓司)
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<上映作品>
バスター・キートン
『ハイ・サイン』 ('20)
ヤン・シュワンクマイエル
『自然の歴史(博物誌)』 ('67)
ピーター・グリーナウェイ&
トム・フィリップス
『TVダンテ』 第1〜8歌 ('88)
河原敏文
『恐竜マイケル』 ('93)
ほか全77作品(参考上映を含む)
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バスター・キートン『ハイ・サイン』 (1920)
ピーター・グリーナウェイ&
トム・フィリップス『TVダンテ』 (1988)
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