イベントークスペシャル

   空間創出−ダンスとアートの悦楽
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1995年8月29日(火)〜9月3日(日)  愛知県芸術劇場小ホール
<SCENE 1: 展示>
庄司達インスタレーション展示
  8月29日(火)〜9月3日(日)
<SCENE 2: 公演>
パフォーマンス 1
   8月30目(水) 19:00
「李惠京(ダンス) & 斎藤徹(べース)・コラボレーション」

パフォーマンス 2
   9月2日(土) 19:00, 3日(日) 15:30
「木佐貫邦子(ダンス) & カール・ストーン(コンピュータ)コラボレーション」
<SCENE 3: トーク>
トーク 1
   8月30日(水) 20:00
「空間を創る−コラボレーションのプロセス」 出演: 李惠京、斎藤徹、庄司達、萩原朔美

トーク 2   9月3日(日) 13:00
「空間を創る−身体と空間の対話」 出演: 鷲田清一、萩原朔美

この催しでは、ダンス、音楽、美術とジャンルも、また日本、韓国、アメリカと その国籍も異なる5名のアーティストが、愛知芸術文化センターで共同制作を行い、 新しい空間の創出に挑んだ。

まず空間として選んだのは、愛知県芸術劇場小ホール。客席の一部を取り払った 闇黒の実験スペースに、ダンス公演の舞台装置として使用することを前提に、 インスタレーション展示を依頼。美術作家の庄司達は、長さの異なる18個の真紅の 布を円柱状にしつらえ、同心円上に天井から吊り下げ、その内部を電球で照らし出す 作品を制作し、黒一色の小ホールを一定の距離感、スケール感のある空間に仕立てた。

美術作家が空間との対話から、作品制作を開始したのに対し、ダンス、音楽の それぞれのアーティストたちは、舞台装置として使うことになる、この庄司達の 美術作品のイメージ図を参考にしながら、互いの共同制作者との手紙のやりとりから コラボレーションをはじめた。最初の手紙では、まだ会ったこともない相手に対する不安と、 期待とを感じながらも、それぞれが今感じていること、表現したいこと、そしてこの コラボレーションに対する考えや、期待を交換した。

その後、韓国のダンサー、李惠京と、アメリカの音楽家、カール・ストーンの2度に わたる来日でそれぞれ音楽家の斎藤徹とダンサーの木佐貫邦子との打ち合わせを行い、 徐々にコラボレーションの形が見えてきた。それ以降も何度という音楽テープの やりとりを経て、リハーサル、本番へと進んだ。

8月28日、インスタレーション展示開始日の前日。共同制作者、スタッフ等全ての者の 頭の中にだけあったイメージが、従来の小ホールを新しい空間に変質させていった。 ようやく現前したこの空間で、アーティストたちは初めてのリハーサルを行うことになった。 李惠京、木佐貫邦子はそれぞれこの空間との対話を試み、自身の作品を完成させた。

コラボレーションはそれぞれのアーティストを立てながらも、自己を主張していく という非常に難しく、それ故に挑戦しがいのある催しであろう。 今回のコラボレーションでは、アーティストどうしが共同で制作を試みたことは もちろんのこと、観客も美術作品の中に入り込み、床に座ってこれらの作品を 共有することができたと思う。これこそアーティストと観客と、そこに立ち会った 全ての人間の共同制作であり、新しい空間の創出であったと考えている。






またそれぞれのパフォーマンスの前後にトークを交え、コラボレーションの経緯に 関する出演者の生の声を聞くとともに、「身体と空間の対話」と題した鷲田清一による レクチャーを行った。レクチャーの後、会場からも多くの質問や感想が寄せられ、 観客をも巻き込んでの熱気のある催しとなった。
(唐津絵理)
Photo : 南部辰雄

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