ナム・ジュン・パイク
『ガダルカナル鎮魂歌』(1977-79)
  テーマ上映会

   「アジアの実験映像」
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1995年8月2日(水)〜13日(日)  アートスペースA
複合企画「HUMAN COLLABORATION'95」の一環として企画した、主として東アジア地域出身 の実験的なアプローチを試みる作家の作品による特集上映会である。

企画テーマとして「アジアの実験映像」を設定するに際し考慮したのは、単にアジア地域 の実験映画、アジア的なエキゾチズムや趣味に彩られた実験映画を特集するのではなく、 むしろ、アジア的な精神性や思考に根ざした映像作品に積極的な意義を見い出すこと であった。

この上映会の中心となった作家はナム・ジュン・パイクであるが、それは彼の "衛星イベント"に端的にあらわれている、電子メディア時代における国境やジャンル を越えたコラボレーション的な志向に、西欧近代の"作家"や"個人"といった概念を 超克しようというベクトルを見い出せるからである。キドラット・タヒミックやここで 取り上げた他の作家たちも、西欧近代の方向性に対し何らかのアンチテーゼを提示して いるといえよう。
<上映作品>

ナム・ジュン・パイク (韓国)
『グローバル・グルーブ』 (1973)
キドラット・タヒミック (フィリピン)
『悪夢の香り』 (1975-77)
金井勝(日本)
『GOOD-BYE』 (1971)
ロックス・リー (フィリピン)
『とかげ』 (1986)
スティーブン・テオ (マレーシア)
"Bejalai"(1987)
張元 (中国)
『北京バスターズ』 (1993)
ほか全28本
開催状況は、ナム・ジュン・パイクの主要な作品がほぼ網羅された上映会として、 近年にはなかった企画であり、ビデオアートや美術のファン、学生を中心に、広く 一般から反響があった。中には東京や関西方面など、遠方から足を運んだ観客もあった。 また、アジア映画のファンからも、映画館では見ることのできないユニークな作品を 集めた特集として、歓迎された。

キッドラット・タヒミック作品の上映日には、広島・長崎の原爆慰霊祭のために来日中の 監督が飛び入りで参加し、講演やパフォーマンスを行うなど、会場を大いに沸かせ、 企画を盛り上げることになった。
(越後谷卓司)
スティーブン・テオ 『ベジャライ』 (1987)
キドラット・タヒミック 『悪夢の香り』 (1975-77)

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