映画生誕100年となる1995年、映像の原点を再発見すると同時に、新たな映像の世紀を
見つめることを意図し、その偉大なるパイオニア、映画の発明者リュミエール兄弟と、
トリック映画・劇映画の創始者ジョルジュ・メリエスの特集上映を開催した。
この催しでは、まず、彼らの作品が上映されていた当時の様子を出来る限り再現するため、
「リュミエール」ではピアノ伴奏を、「メリエス」ではさらに弁士による解説を加え、
18コマ回転で上映を行った。この試みは、サイレント映画上映の単なる考古学的興味に
留まらず、映画上映と演奏者、そして弁士が織りなす一種のコラボレーションとなり、
そして、彼らの生み出す熱気は100年前の映像を現代に息づく存在とした。
この上映会に老若男女を問わず多くの観客が詰めかけ、熱狂的な支持が得られたのは、
現在も色あせない作品の魅力もさることながら、こうした要因によるものが大きいと
いえるだろう。
「リュミエール」においては、コンスタン・ジレルとガブリエル・ヴェールの日本に
おける活動の調査・研究が反映された上映プログラムが組まれ、また「メリエス」は、
わが国では見る機会のなかった作品群を集中して鑑賞できる場となり、映画史研究的な
観点において、大きな意義をもつ企画であったといえよう。
特にフランス本国でも実現しなかった、映画生誕の年における大がかりな「メリエス」
回顧上映の開催は特筆に値するといってよい。
(越後谷卓司)
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「光の生誕 リュミエール!」
1995年12月13日(水)
『工場の出口』 (1895)
『庭師』 (1895)
『赤ん坊の食事』 (1895)
ほか全103本を上映
ピアニスト: 柳下美恵
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「ジョルジュ・メリエス 夢と魔法の王国」
1995年12月13日(水)
『ロベール=ウーダン劇場における 夫人の雲隠れ』 (1896)
『月世界旅行』 (1902)
『妖精たちの王国』 (1903)
ほか約80本を上映
弁士: マリー=エレーヌ・メリエス
ピアニスト: ロランヌ・レリセイ=メリエス
エリック・ルグアン
弁士通訳: 吉武美知子
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