コラボアート 「環」<顔の中に水がある>

   Collabo-Art "Kan"−Water in Faces
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1997年10月7日(火) 午後3時〜午後8時30分 愛知芸術文化センター全館
コラボアート「環」は愛知芸術文化センターの公共空間である巨大な吹き抜け空間 フォーラムを舞台としたダンス・音楽・映像が織りなす共同制作(コラボレーション)公演、 Art Around Projectの第2弾として制作された。 今年は3年間に渡って行われるプロジェクトの2回目にあたるため、初回の経験も 踏まえつつ、ひと味違った試行、新しい展開を考慮しながら企画にあたった。

主な特徴としては、数ある公共スペースをより魅力ある空間になるよう、公演空間を広げて、 それぞれの場所を活かすような利用法を考えたこと、それぞれのアーティストが、 対等の立場にたって、互いに興味を感じた部分でコラボレーションを行えるように、 「水」という普遍的でかつ解釈の自由なテーマを設定したことが挙げられる。 このようにしてジャンル間のアーティストが互いに興味を感じた接点の部分で、 積極的にコラボレーションを試みることになった。

当センターと友好関係にあるビクトリアン・アーツ・センターとの共同プロジェクトと いうことから、オーストラリアよりスー・ヒーリー始め5名のダンサーが参加した。 日本側の出演ダンサーはオーディションで選出し、地元のダンサーを起用、 地域舞踊界の活性化を意図した。 また映像担当のIKIFによって、制作過程やリハーサルをも写し取ったコラボアートの ドキュメンタリー映像を制作することにより、ここでもパフォーマンスと映像による 一種のコラボレーションを行い、一過性のイベントとならざるを得ない公演の後も、 館外に向けて情報発信的な展開を行うことができるように考慮した。

また今回は、第1回の公演の経緯に基づいて各ジャンルの学芸員の練り上げてきた コンセプトを踏まえた上で、フォーラム空間をより活かすことのできるアーティストとして、 造形作家の山口勝弘に参加してもらった。山口の提案は「環境舞台」。 広大な空間の中で繰り広げられる様々なジャンルのパフォーマンス。 その空間を観客もパフォーマーとなりながら移動して観ていくという観客参加型 公演であった。

開催時間を延長したことも今回の催しの大きな特徴であった。 それによって、お祭り的な気分を徐々に盛り上げ、より多くの観客に観てもらえるように 意図した。15時から18時までは館内の様々な場所でダンスや音楽演奏等、 単ジャンルでのパフォーマンスを中心に公演を行った。 時間がたつにつれて公演間の時間を短くしていき、密度を高め、さらにお祭り的な 雰囲気を作り出した。夜のメイン公演となる18時からは、観客を2つの流れに乗せて 誘導した。地下から10階へ向かう流れと、上階から地下に向かう流れ、 この2つの流れをオーストラリアと日本のダンサーが誘導していった。

当日の昼の時間帯は、平日であったにも関わらず、学生や主婦など若い層が中心に 予想以上に多くの人が詰めかけた。 訪れた観客は、好きな場所で自由に観ることができるため、非常にリラックスした 雰囲気で、一日だけの環境舞台を楽しんでいた。 また夜の時間になると、会社帰りのサラリーマンやOL等さらに様々な年齢、職業の人々が 訪れた。この時観客は館内の様々な場所を活かして繰り広げられるパフォーマンスを 観ながら、自身もアイマスクをつけて、パフォーマになってしまうという日常と 非日常が入り交じった不思議な体験を満喫していたようだった。

コラボレーションの表現方法における新しい芸術表現の可能性を追求するという 実験的色彩も強い公演でありながら、公共空間を最大限に利用し、観客をも巻き込んで いった結果、多くの一般の観客にも気軽に且つ驚きや発見をもって楽しめる公演に なったことは、画期的であり空間のスケールからみても日本最大級の規模を誇る 催しになったと思う。
(唐津絵理)











Photo : 南部辰雄

コラボアート 「環」<顔の中に水がある> Collabo-Art "Kan"−Water in Faces

総合演出: 山口勝弘
映像: IKIF
音楽: 今堀恒雄
振付: 米井澄江、スー・ヒーリー
演奏: 今堀恒雄(ギター)、小田島亨(サックス)、菊地成孔(サックス)
ダンス: スー・ヒーリー、ニコル・ジョンストン、ミシェル・ヘブン、 ジェニファー・ニューマン=プレストン、
デビット・ティンドール、 コラボアート・ダンサーズ
(鹿島聖子、奥田寛明、北尾千鶴、宮沢さおり、 長谷川美樹、水野裕子、野田さとみ、瀧瀬麻衣)
技術統括・照明デザイン: 児玉道久
音響デザイン: 小林高治
衣裳: 石田佳代子、稀温
舞台製作: 愛知県舞台設備管理事業協同組合
舞台監督: 遠藤圭介
映写: IKIF、光響社
撮影: IKIF、東海ビデオ
レーザ操作: (株)カスト
書: 土谷陽山
プロデューサー: 唐津絵理(統括、舞踊)、越後谷卓司 (映像)、藤井明子(音楽)、アンドリュー・マーティン
          (ヴィクトリアン・アーツセンター)

主催: 愛知芸術文化センター 、愛知県文化振興事業団 、ヴィクトリアン・アーツ・センター
企画制作: 愛知県文化情報センター
助成: 財団法人地域創造・ジャンボ宝くじ助成事業、オーストラリア・カウンシル

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