土方巽 『疱瘡譚』より  写真:小野塚誠
 イベントーク Part 6

   「土方巽を幻視する」
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1997年12月19日(金)・20日(土)  愛知県芸術劇場小ホール
協力: アスベスト館 / 助成:財団法人 地域創造・ジャンボ宝くじ助成事業
企画監修・司会: 萩原朔美(エッセイスト)


1950-80年代に活躍した「舞踏」の創始者・土方巽は、日本人の身体を見据えることで、 西欧的なモダン・ダンスにアンチテーゼを提示し、ダンス表現に革命をもたらした。 また、土方の活動は身体表現に留まらず、美術、文学、映像、音楽等、広範な領域に 及んでいた。"身体"をテーマとしたシリーズ「イベントーク」では、 今回、彼の「舞踏」を身体による思考活動そのものであったと捉え、その現代性について 考察することを意図した。

舞踏公演「鏡のテオーリア」は、土方夫人であり舞踏家の元藤あき子が演出を担当。 出演は元藤と、土方の「舞踏」の出発点といえる「禁色」(1959年)で共演した大野慶人。 また、土方とともに「舞踏」の創生に携わった盟友・大野一雄が特別出演し、 元藤・大野の約30年ぶりの共演という記念碑的なものになった。 同時に、土方の方法論を継承しつつ独自の創作性を加えた元藤の演出・振付と、 土方の「様式舞踏」に対し「即興舞踏」を称される大野一雄のエッセンスが舞台上に共存し、 土方へのオマージュであるとともに、「舞踏」表現のさらなる可能性を提示するものとなった。 公演後、彼らが参加したトークセッションは、公演に携わった関係者の実体験に基づくもの であり、土方舞踏の発想法や振付を知る上で興味深い内容となった。

20日の連続トークショー「土方巽という事件を語る」は、宇野邦一、宇野亜喜良、 種村季弘ら異ジャンルのゲスト。それぞれが独自の論考であるとともに、日本における シュルレアリスムの受容と土方の関係についての連鎖的な関連をみせ、深みのある内容 となった。 また、上映した映画3本は、60年代初・末、および70年代初の各時期の土方の表現を記録し、 その一端が伺えるものであり、土方舞踏の変遷をコンパクトに知ることができる構成と なっていた。舞台上の土方の踊りを追体験するかのように多くの観客は熱心に映画を観賞し、 前日行われた公演の余韻もあってか、終了後に拍手が起こる程、会場に濃密な空気が 生じていたことが印象深い。

公演に併せ制作したパンフレットも、中西夏之や加納光於、赤瀬川原平、水谷勇夫ら 美術家からも協力を得て、今回のテーマにふさわしい内容となった。 また作家の好意によりその一部はホワイエに展示され、この催しに空間的な立体性が 加わった点も、「イベントーク」の新しい成果といえるだろう。
(越後谷卓司)
19日: 舞踏公演&トーク・セッション

20日: 連続トークショー&映画上映
 「土方巽という事件を語る」

舞踏公演「鏡のテオーリア」





Photo : 南部辰雄

イベントーク Part 6 「土方巽を幻視する」

舞踏公演&トーク・セッション (19日)
―<第1部>―――――――――――――
「舞踏公演ー鏡のテオーリア(多田智満子著作より)」
演出: 元藤あき子
出演: 藤あき子、大野慶人、大山吉隆、川道達也
    鈴木幸夫、水川勝利、中嶋貴義、戸刈基博
    観不如、人見頼衡、近藤瑞樹、中野啓敏
特別出演: 大野一雄
美術: 原裕治、水川勝利
―<第2部>―――――――――――――
トーク・セッション
出演: 元藤あき子、大野一雄、大野慶人、萩原朔美
連続トークショー&映画上映
    「土方巽という事件を語る」
(20日)
―<トークゲスト(出演順)>―――――――
宇野邦一(評論家)
元藤あき子(舞踏家)
宇野亜喜良(イラストレーター)
種村季弘(評論家、ドイツ文学者)
―<上映作品>――――――――――――
『へそと原爆』
 (監督:細江英公、1960年、20分、16mm)
『疱瘡譚 四季のための二十七晩より』
 (撮影:大内田圭弥、1972年、95分、16mm)
『元禄女系図』 よりタイトル・クレジット
 (監督:石井輝男、1969年、東映作品、35mm)


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