大木裕之 『3+1』 (1997)
  第2回 アートフィルム・フェスティバル
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1997年11月1日(土)〜9日(日) (*4日(火)は休映)  アートスペースA
主催: 愛知芸術文化センター、ポンピドーセンター
<上映作品>
ナム・ジュン・パイク『ジョン・ケージに捧ぐ』 (1973-76年)
エディン・ヴェレツ『ダンス・オブ・ダークネス』 (1989年)
AAC オリジナル映像作品第6弾 大木裕之『3+1』 (1997年)
原將人『百代の過客』 (1995年)
ニコラ・フィリベール『ルーブル』 (1990年)
<マン・レイ監督 上映作品>
『理性への回帰』 (1923年)
『エマク・バキア』(シネ・ポエム) (1926年)
『ひとで』 (1928年)
『骰子城の神秘』 (1929年)
ほか計28本上映

今日、芸術の世界は、複雑・多様な展開を見せ、映像、音楽、舞踊、美術など、 伝統的なジャンルの枠組みを越えた相互的な関わり合いが活発化している。
「HUMAN COLLABORATION '97」の一環として開催したこの上映会は、映像における 異ジャンル間の関係や、それらの融合する状況を照らし出すことを意図したものである。 第2回となるこの企画では、現代音楽やダンスなど、ジャンル別の小特集という形式で プログラムを組んだ。

この上映会では、前後して開催した企画との関係を結んでいる点も一つの特色である。
「ビデオで見るジョン・ケージの世界」は、ナム・ジュン・パイクが手掛けた現代音楽の 巨人ジョン・ケージに関するビデオ作品のプログラムで、1998年1月13日−2月1日に 開催した、公演・版画展・ビデオ上映会「ジョン・ケージ特集」と関連している。
また、エディン・ヴェレツのビデオ・アート作品『ダンス・オブ・ダークネス』(1989年)は、 土方や大野一雄など日本の舞踏を題材とした一種のドキュメンタリーで、 1997年12月19日・20日のイベントークPart6「土方巽を幻視する」に先立つ、 "舞踏入門編"的なニュアンスがある。『コラボアート「環」』 (1997年10月7日公演)に参加したスー・ヒーリーのビデオ・ダンス作品は、 彼女の映像表現という異なる側面を紹介するものであった。

さらに、マルチ・メディア的なアーティストの先駆という観点から写真家マン・レイを 取り上げ、彼の全映画を回顧上映した。前衛映画のみならず未公開のプライベート・ フィルムを含む上映は、作家の人間的な側面も照らし出すものであり、好評であった。
また、作家自身が作品を寄贈したポンピドー・センター提供の良好な状態のプリントは、 作品本来の意図が十分に伝わり、特に今回実現した作家指示による音楽の伴奏は、 『骰子城の神秘』(1929年)の持つドキュメンタリー的な構築性を明瞭に浮かび上がらせる 結果となった。
マン・レイ 『理性への回帰』 (1923)
photo:CNAC/MNAM


ベルナール・エベール
『ベラスケスの小さな美術館』 (1994)


ナム・ジュン・パイク
『ジョン・ケージに捧ぐ』 (1973-76)
東京日仏学院の協力を得た「映像表現の最前線−ドキュメンタリーの現在」は、 同学院の企画「交差する視点−日仏におけるドキュメンタリー映画をめぐって」から4本の 作品をセレクトした特集である。小規模ながら、今日映像表現において最も注目される ドキュメンタリーに焦点を当てたこの特集は、当地区で紹介されることの少ないこの ジャンルの作品の鑑賞機会として観客の強い支持を得た。

(越後谷卓司)

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