これまでも4年間に渡ってワークショップを開催してきたが、今年度からは、
個人がありのままの姿に戻れる場を提供したいとの願いをこめて「裸足の工房」と
タイトルをつけて、参加者を限定しない、より多くの人に開かれたワークショップを
スタートさせた。
今回の講師アダム・ベンジャミンが創設、芸術監督を務めるカンドゥーコ・ダンス・
カンパニーは、車椅子の利用者などの身体障害のある方々のからだが語ることばを生かした、
全く新しいコンテンポラリーダンスの境地を開いたとして世界的に注目を集めている。
今回は車椅子の利用者の参加が4名。計34名でのワークショップの前半では、アダムは
優しく言葉を投げかけ、ひとりひとりの心身が解放するよう丁寧に参加者を導いていった。
それぞれの気持ちが解れ始めたら、少し強く言葉掛けを行い、今度は気持ちを掻き立てる
ような指導を行っていった。参加者の心理状態を察しながら、その時々に最も適した言葉を
かけていく進行は、プロの舞踊教育家としての卓一した洗練さを感じさせるものであった。
まず始めに、2人組互いの手を合わせ、相手の動きに合わせながらついていくという
パターンの動きを行った。ここで重要なことは、相手を感じること、決して自分から
動いていくのではなく、相手の動きを感じようとすること、そのとき初めて新しい
発見があるのだという。そして2日目のテーマは、空間を感じること。自分のぴったりと
くる場所と、「今だ」と感じる時間を見つける。
「身体が適切な時に適切な空間におかれるとき、それが美となるのです」と語るアダムは、
身体が創り出すフォームそのものよりも、動きの導き出される動機や、空間の中での
自分の居場所とタイミングをより重要と考えている。
これまでの日常で感じていた抑圧から解放されたためか、途中で涙を流す参加者もいて、
精神と身体の結びつきの強さと共に、現代の引き裂かれた身体の状態を感じざるを
得なかった。最後にみんなで即興で踊ったダンスでは、どの参加者も始まりの時とは
別人のように清々しい表情をしていた。一人一人が異なる表現を行うことによって、
それぞれが創造的になることを目指したワークショップは、これまでにないほどの
熱気をもって、目的通りの成果をあげることができたと思う。
(唐津絵理)
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心身を解放し、からだの中に蓄積されている抑圧から自由になること。
ひとりひとりが、私だけの表現ができると感じること。
異なる創造力をもった者どおしが、お互いを活かしながら共同で創作をすること。
「裸足の工房 with Dance」ではこれらを通して、人生を創造的に生きていくための
手だてとなる場を作っていきたいと考えています。
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