コンサート「ピアノを越えて」
 コンサート・版画展・ビデオ上映・ワークショップ

   ジョン・ケージ特集
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コンサート

「ピアノを越えて」1998年1月14日(水) 愛知県芸術劇場小ホール


出演者: 松永加也子(ピアノほか)、西澤幸彦(フルート)
アンサンブル・トゥデイ
〈村田四郎(フルート)、山本直人(オーボエ)、 堤淳喜(クラリネット)、近藤敬(ホルン)、青谷良明(ファゴット)〉
演奏曲: 「ソナタとインターリュード」「管楽器のための音楽」
「TOW」ほか

「偶然性とパフォーマンス」1998年1月29日(木) 愛知県芸術劇場小ホール


出演者: 小杉武久、高木元輝、ニシジマアツシ、村井啓哲、森本誠士
演奏曲: 「カートリッジ・ミュージック」「ヴァリエーションズ4」「ONE 7」ほか

ワークショップ

「ピアノを仕立てる・・プリペアド・ピアノ」1998年1月13日(火) 愛知県芸術劇場小ホール
講師: 松永加也子
「空間を聞き取る・・サウンド・パフォーマンス」
1998年1月28日(水) 愛知県芸術劇場小ホール
講師: 小杉武久

今世紀の音楽に大きな改変をもたらし、音楽以外の芸術家にも大きな影響を与えた ジョン・ケージ。 ケージの死から5年を経た今、現代音楽の一つの原点である彼の実験的作品を 改めて取りあげ、今後の音楽の方向を探る機会を設けた。 同時に振付家マース・カニングハムとのコラボレーション作品のビデオ上映や、 ケージ自身が制作した版画作品の展示を行い、マルチメディア・アーティストの 先駆者とも言える彼の多様な活動を紹介した。 ケージの音楽作品はこれまでも時々演奏されてきたが、今回は彼の活動をジャンルで 区切らず総合的に取りあげた点でオリジナリティの高い企画となった。

2回のコンサートは、それぞれ、ピアノを軸に初期から晩年までの作品、 1960-70年代を中心とするパフォーマンティヴな作品を特集した。 現代音楽のおもしろさは、作曲だけでなく演奏者によるところが大きい。 とりわけケージのような自由度の高いパフォーマンス作品はそうだろう。 その点で今回は両公演とも非常に優れた演奏を聴くことができた。

第1回コンサートでは、松永加也子がピアノ、おもちゃのピアノ、プリペアド・ピアノ と多彩なピアノ曲を演奏、軽やかだが熱のこもった音楽を聴かせてくれた。 とりわけ西澤幸彦(フルート)と共演した「TOW」は、ピアノとフルートが 同じ舞台上にいながら独立し、といって互いに無視するのではなく、 神経を張りつめて呼吸するような、ケージらしい音楽だった。 地元で活躍する現代音楽演奏グループ、アンサンブル・トゥデイも、 初期の難曲を息のあった演奏で聴かせてくれた。

第2回コンサートでは、ケージと直接交流も深かった小杉武久を中心に、 若手音楽家らが加わり、それぞれ趣向を凝らしたパフォーマンスを行った。 巻き貝に水を入れ揺らして音を出す「インレッツ」、ホールの外での演奏を開いた 扉の内側から聴く「ヴァリエーションズ4」、オープンリール・テープを次々と かけてゆく「ローツァルト・ミックス」、演奏会場の周辺地域の地名を次々と読み 上げてゆく作品「ONE7」など、通常の音楽演奏からかけ離れたスタイルのもの ばかりである。観客は多様な音、幅広い現代音楽を楽しんだ。

また公演前日にワークショップを行ったことは、観客に現代音楽の知識を 深めてもらい、難解、退屈という現代音楽のイメージを払拭してもらうために有効だった。
ビデオ上映

1998年
1月15日(木)、23日(木)、29日(木)
アートプラザ・ビデオルーム

上映作品:
 『ヴァリエーションズ4』
 『カメラのためのビーチ・バード』
 『ロカール』 ほか

版画展

1998年1月13日(火)〜2月1日(日)
アートスペースX

展示作品:
 『WITHOUT HORIZON#5』
 『HV2』『75 STONES』 ほか

企画監修: 庄野進
協力: 愛知県美術館
    名古屋アメリカンセンター






ワークショップ  

コンサート「偶然性とパフォーマンス」
ビデオ上映会や版画展でも、予想以上の入場者が得られた。ケージの音楽は、 初演がカニングハムのダンスとのコラボレーションだった作品も多い。 ダンスと合わせた音楽を知る上で、ビデオは貴重な資料だった。 版画作品に関しては、ケージは作曲と同様に易を使って、刷る物の順番や紙上に 置く版の位置等を決めた。このような彼の偶然性の思想が視覚的に表現された 版画作品は、繊細で美しく、音楽作品と通じる緊張感を感じさせるものだった。
(藤井明子)

Photo : 南部辰雄、羽鳥直志

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