「裸足の工房−with Dance」

   ヴォルフガング・シュタンゲ
        ダンス・ワークショップ&レクチャー
前へ 自主企画事業報告書 > 1998年度 > 「裸足の工房−with Dance」 次へ
ダンス・ワークショップ  1998年7月22日(水)〜24日(金)
レクチャー  1998年7月22日(水)
愛知県芸術劇場大リハーサル室
講師: ヴォルフガング・シュタンゲ

ダンスは一握りの限られた人だけのものではなく、多くの人が親しみ、表現する喜びを 感じることのできるものである。仕事や生活に追われている現代社会に生きる私たちが、 本来の創造性豊かな感性を取り戻し、さらにこれからの人生をより創造的に生きていくため の手だてとなるような「場」として、誰もが参加できるワークショップを開催している。

今回は英国のアミキ・ダンス・シアターを主宰しながら、過去20年にも渡って、障害を もった方とのダンス活動を続けているヴォルフガング・シュタンゲ氏が、全ての人の 中にある創造性を、独自の方法で引き出していった。コースは対象別で、身体表現教育に 従事する指導者向けのコースと子供や障害のある方のコース、これらを通しで受講する コースと、3つに分けて公募した。また、さらに深く理解したい方、ワークショップに 参加できなかった方のために、シュタンゲ氏に活動や舞踊観を語ってもらうレクチャーも 同時開催した。

ワークショップでは、まず輪になって、自由に音楽に合わせてからだを動かすことから 始めた。初めて場を共有するメンバーに緊張していた参加者も、リズミカルな民族的な 音楽と、互いに身体を触れ合うコンタクト的な身振り、そして何よりもシュタンゲ氏の 温かい人柄に、何分も立たぬ間にすっかりとリラックスしていた。 心身がほぐれたところで、シュタンゲ氏は様々な課題を与え、内容は創造性を働かせる ものに変わっていった。課題はその場にいる人々の様子を見ながら随時変えていく ということであるが、例えば、色とりどりのひもを使うなど、多少の制約を与えた上で、 自由な発想を引き出し、参加者それぞれが、「自分の動きを創り出している」という 実感がもてるような工夫が随所に見られた。シュタンゲ氏は、アーティスト自身が、 自由な発想をする子供や障害者と一緒にダンスを行うことによって、アーティストの 作品の幅が広がり、より深いものになると語っていた。









ワークショップは非常に充実した内容で、ほとんどの参加者が3日間継続して 「創造的である」ことを体験していた。特に子供や障害者の変化は著しく、初めは堅く なっていた参加者も、最終日には堂々とした動きで自分の表現を行っていた。 これは自らが体感できるワークショップならではの成果であり、今後も参加者を 限定しないこのようなワークショップを通じて、一般の人々のアートへの理解を 深めていくことが重要であると感じた。
(唐津絵理)

Photo : 南部辰雄

前へ このページのトップへ 次へ