ダンス公演 『島・唄』
  コンテンポラリー・ダンス・シリーズ2

  1999年・今、ダンスが表現すること
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1999年2月8日(月)、2月22日(月)〜24日(水)  愛知県芸術劇場小ホール および 大リハーサル室
協力: アーキタンツ、財団法人児童育成協会 / 助成: 財団法人セゾン文化財団

<ユーリ・ン ダンス公演 『島・唄』 &トーク> 1999年2月8日(月) 小ホール
ダンス公演 『島・唄』
振付: ユーリ・ン(伍宇烈)
ダンス: YURI and company danciNG、オン・ヨン・ロック(王榮禄)、アビー・チャン(陳敏嬰)
音楽: カン・チー・シン(龍志城) / 衣裳: ウイリアム・タン(ケ達智) / 美術: アーキタンツ

トーク「1999年・今、ダンスが表現すること」
パネラー: ユーリ・ン(振付家)、立木あき子(舞踊評論家)、前田允(舞踊評論家)


<ダンス・ワークショップ> 1999年2月22日(月)〜24日(水) 大リハーサル室
講師: ユーリ・ン

コンテンポラリー・ダンス・シリーズは同時代の優れたダンスを、多角的に紹介する もので、今回はコンテンポラリー・ダンスの登竜門ともいわれるバニョレ国際振付賞で、 1998年に振付賞を受賞したユーリ・ン(中国・香港)を招き、ダンス公演を行うと共に 、振付家と舞踊評論家を交えたトークを行った。
1999年の現在、今最も先端にいる舞踊家は身体をどのように扱い、何を表現しようと しているのか。トークでは、ユーリ・ンのほかに舞踊評論家にも加わってもらい、 「表現」をキーワードとして20世紀のダンスを振り返りながら、21世紀を目前にした現在、 ダンスが向かっている行方を探った。

公演の前半はユーリ・ンの最新作「島・唄」の公演。 男女2人のダンサーによるデュエット作品が、バイオリンの生伴奏で上演された。 これはバレエダンサーとして英国やカナダで活躍していたユーリ・ンが、香港に生きる 一市民のとして、自身のオリジナリティーを追求した作品。 また公演後ユーリ・ンがバニョレ国際振付賞を受賞した作品「BOY STORY」の上映も行い、 より深くユーリ・ンの創作の世界に触れることができるよう考慮した。
世界レベルのバレエダンサーではコンテンポラリー作品も踊れるのがあたりまえと される今日、バレエの盛んな名古屋におけるユーリ・ンの公演は、地元のダンサーたち が今後のバレエの在り方を考え、ダンスに取り組んでいく上で非常に参考に なっていたようだ。

また後半のトークでは、舞踊評論家の司会により「表現」をテーマにユーリ・ンとの トークを進めた。非常に長い時間だったにもかかわらず、コンテンポラリー・ダンスの 非常に少ないこの地域の観客やダンサーたちは、最後まで熱心に話しに耳を傾けていた。

また2週間後にはワークショップを行った。英国ロイヤル・バレエ・スクールで学び、 カナダ・ナショナル・バレエで活躍していたユーリ・ン。 ユーリ・ンの通ってきた道筋を辿るように、それぞれの日程の前半で、 バレエのレッスン、後半は「表現」をテーマにしたコンテンポラリーの作品制作を行った。
後半のコンテンポラリーのワークショップでは、参加者それぞれが自分の大切な物を 持ち寄り、その印象をダンスで表現した。 そこからユーリ・ンが印象に残った動きを取り出し、その動きを繰り返したり、 組み合わせたり、速度を変えたりしながら、再構成してひとつの作品を創り上げた。 短時間で作品を構成するその振付は、ユーリ・ンの力量を強く感じさせるもので、 参加者はバレエのテクニックやコンテンポラリー・ダンスの動きの創り方を学ぶほか、 短時間のワークショップで振付方法まで垣間見ることできた。
ユーリ・ン








参加者の経歴はバレエのダンサーを中心に、年齢も幅の広いものだった。
ワークショップ中に行われた参加者によるトークでは、この地域はバレエが非常に 盛んであるものの、実際の内容は古典が多く、現代に生きる自分たちの「表現」と してのコンテンポラリー・ダンスを学ぶことがほとんどできず、模索していることが、 数人のダンサーより挙げられた。アジア人のユーリ・ンのワークショップは、 私たち日本人が、西洋の文化であるバレエにどのように取り組むべきか、 多くの示唆を与えてくれるものになったと思う。
(唐津絵理)

Photo : 南部辰雄

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