山口勝弘
   文化情報センターゼミナール

    「20世紀を編集する」
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1999年5月18日(火)−2000年2月8日(火)

愛知県文化情報センターでは、「イベントーク」を始めとする事業の中で、主として 現代の実験的な芸術表現に焦点を当て、従来のジャンル区分に捕らわれない横断的な 切り口によって、様々な作品や作家を取り上げてきた。 現代の芸術表現は、同時代に生きる私たちに共通するテーマや問題を背景に生まれてきた ものだといえるのだが、一般の観客が実際にこうした作品を鑑賞する時に、難解で 馴染みにくいものだと感じてしまうことが、しばしばあるのも事実といえる。

通年で開かれるこの連続講座「文化情報センター・ゼミナール」は、これまでの企画や 事業を踏まえた上で、それらをより楽しみ、深く理解してもらうことを目的に、 その背景にある20世紀芸術のエッセンスについての、歴史的な展開に則した講義を 中心に構成した。その内容は、複合文化施設である愛知芸術文化センターという場の 特性を活かし、映像、音楽、舞踊、美術など、実際に開催される催しとも連動した、 具体的で手応えのあるプログラムとなった。 この企画はまた、昨年度まで3年間展開してきたフォーラムでのコラボレーション 公演などの成果を踏まえつつ、愛知芸術文化センターの最大の特長である"複合性"を、 新しい観点から照らし出す意図も込められていた。

講師は、愛知県文化情報センターの、映像、舞踊、音楽の各担当学芸員が受け持ち、 ゲストとして萩原朔美や山口勝弘(総論)、ミエ・コッカムポー (ダンス・ワークショップ)らを招いた。 また、美術では、愛知県美術館などで開催中の企画展と連動し、担当学芸員の レクチャーと合わせて、実際の作品を鑑賞するというスタイルを採用した。

「文化情報センター・ゼミナール」は、現代芸術の基礎的な知識を横断的、複合的観点 から吸収することのできる、新しいタイプの教育普及事業として、高い関心を 呼ぶとともに、好意的に受け止められた。 複合・横断的な観点から組み立てられた講義プログラムは他になく、そのために、 予想を上回る受講の応募があった。 結果として、募集していた受講者数の約4倍の人員を受け容れることになり、 当初想定していたゼミナール的な形式による受講者どおしのコミュニケーションの 密度は薄れるのではないか、という危惧もあったが、終了時には、受講者より、 異ジャンルの表現に触れる良い機会になった、未知の分野に接し世界が広がった、 次年度以降も参加したい、といった反響があり、好評を得ることができた。
(越後谷卓司)

<講義内容・スケジュール>
1999年
4月20日(火)
 オリエンテーション
5月18日(火)舞踊1上映会 「それぞれの春の祭典」鑑賞
5月25日(火)映像1講義 「映像メディアの特性」
6月1日(火)音楽1講義 「音列」
6月4日(金)美術1「ファウスト・メロッティ展」 鑑賞  ゲスト講師: 拝戸雅彦
6月8日(火)映像2 上映会 「アメリカン・インディペンデント・フィルム」鑑賞
(ゲスト: クリス・タシマ監督、リック・ウィルキンソン監督)
6月22日(火)音楽2講義「具体音」
7月1日(木)
   2日(金)
映像特オリジナル映像作品第8弾 『うつしみ』 鑑賞
7月6日(火)舞踊2講義 「古典バレエ-モダンダンス」
9月17日(金)美術2「危機の時代と絵画展」 鑑賞  ゲスト講師: 牧野研一郎
9月21日(火)総論1講演 「作り手の視点から」  ゲスト講師: 萩原朔美
10月 5日(火)映像3講義 「実験映画の流れ 戦前/1920年代を中心に」
10月15日(金)美術3 「エコール・ド・パリとその時代展」鑑賞 ゲスト講師: 深谷克典
「新興の烽火 舞台・美術・写真 築地小劇場とその時代展」 鑑賞
ゲスト講師: 竹葉丈 (於:名古屋市美術館)
10月19日(火)音楽3講義 「偶然性と即興」
11月3日(水)‐14日(日)映像特「第4回アートフィルム・フェスティバル」 鑑賞
11月16日(火)舞踊3講義 「モダンダンス-ポスト・モダンダンス-コンテンポラリー・ダンス」
11月23日(火)舞踊4講演とパフォーマンス  ゲスト講師: 伊藤キム
11月27日(土)音楽4「現代音楽家シリーズ4 フリッツ・ハウザー講演会」 聴講
11月30日(火)映像4 参考作品上映会(ジガ・ヴェルトフ 『カメラを持った男』 1929、
マヤ・デレン 『午後の網目』 1943、他)
12月7日(火)音楽5「現代音楽家シリーズ5 テリー・ライリー講演会」 聴講
12月14日
1月7日(金)
美術4「セザンヌ展」 鑑賞  ゲスト講師: 栗田秀法
1月18日(火)映像5講義 「実験映画の流れ 戦後/1960年代から現在」
2月1日(火)
   2日(水)
舞踊5 「ダンス・ワークショップ」
ゲスト講師: ミエ・コッカムポー、パル・フレナク
2月8日(火)総論2 講演 「20世紀の総括 実験工房からコラボアートへ」
ゲスト講師: 山口勝弘

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