現代音楽家シリーズ4

   フリッツ・ハウザー講演会
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「現代音楽家シリーズ」は、活躍中の作曲家や演奏家の語る"言葉"を通して、 現代音楽の多様な様相を紹介するシリーズである。民族音楽、コンピュータ音楽、 シリアスな現代音楽、ネオ・ロマンティシズム、即興など、細分化された音楽内の ジャンルにとらわれずに自らの表現を追求し、その結果何らか"越境"の視点を持ち活動を 続けている音楽家を取り上げている。
また老練の作曲家から現代を担う気鋭のパフォーマーまで幅広く紹介することに務めている。

シリーズの第4回として、スイスのドラマーであり作曲家でもあるフリッツ・ハウザーの 講演会を行った。彼はジャズやフリー・ミュージック・シーンで活躍する、高度な テクニックと深遠な音楽感受性の両方を備えた打楽器演奏者として知られている。
しかし、静寂から始まり、ドラムやシンバルの一音に深い響きを聴き取って、単調に 思われがちなこれらの楽器から信じがたいほど豊かな音を引き出すその音楽は、 アメリカの作曲家ジョン・ケージや日本の作曲家武満徹の作品にも通じるものがある。
実際ケージからソロ作品の献呈を受けており、ジャンルの枠に囚われずに活動する 演奏家であると言える。またハウザーは、作曲家としてアンサンブルやソロ、 フィルムやダンス、そしてラジオドラマのために作曲し、建築空間にあわせて インスタレーションを制作している。
今回、打楽器の岡田知之、マリンバの安倍圭子、 栗原幸江の各氏の協力により初来日を果たしたのを機会に、講演会を開催した。
1999年11月27日(土)
アートスペースA
講師: フリッツ・ハウザー
    (ドラマー、作曲家)



ハウザーは、その独自の音楽を知ってもらうべく、講演会場に特別製の小さな ドラムセットを持ち込み、10分程度のソロ・デモンストレーションを織り交ぜながら 自らの音楽について語った。
ドラムとシンバルの独特のセッティングに始まり、リズムも音の大きさも叩き方も 全く自由な彼の演奏は、通常考えがちなリズム・マシーンとしてのドラムの イメージを刷新するもので、そんな彼の音楽に対して客席から、調律、セッティング、 作曲と即興についてなど、具体的な質問が相次いだ。
講演は途中からこれらの質問に答える形で進められ、ハウザーのドラムとシンバルに 対する愛情と音楽観をよく知ることができた。
(藤井明子)

Photo : 南部辰雄

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