現代音楽家シリーズの第5回は、アメリカ現代音楽を代表する作曲家の一人である
テリー・ライリーが登場した。「ミニマル音楽の父」と呼ばれるライリーを一躍著名に
したのは、1964年に発表した革命的作品《In C》だった。
この作品は、パターンを繰り返すという形式のコンセプトへと発展し、20世紀の音楽の
流れを変え、スティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラス、ジョン・アダムズら現代の
アメリカを代表する作曲家たちから、ザ・フー、ソフト・マシーン、カーヴド・エア、
タンジェリン・ドリームなど欧米のロック・グループにまで大きな影響を与えたと
言われている。
しかし彼自身は、むしろ純正調やラーガなど12音平均律に収まらない微分の響きに
魅せられ、ジャズをはじめ即興という演奏スタイルに興味を注いできたのだという。
今回、神奈川県立音楽堂での新作公演のために来日する機を捉え、
その活動や音楽観をライリー自身から直接うかがうことのできる講演会を開催した。
ライリーは、まずビデオを用いながら、神奈川県立音楽堂で発表した最新作
《The Dream》と代表作《In C》を紹介した。
ビデオを通じてではあったが、彼の作品に、短い旋律を繰り返すミニマル音楽の要素、
即興、純正調の要素の混在することが確認され、東洋・西洋という文化の違いを越え
美しくもラディカルに響いた。
講演は音律についての専門用語が多用され、専門に音楽を学んでいない聞き手にとっては
理解しづらいところもあったが、彼の音の響きに対する非常に繊細な感覚と、60歳を
越えてなお美しい響きを探求し続ける情熱は、強く感じ取ることができた。
そしてその背景には1970年代以来続く北インド古典音楽からの大きな影響があったことが
明らかになり、「ミニマル音楽の父」という一面的な見方では決して語れない彼の
音楽観に触れることができた。
後半は、作曲家の藤枝守を対談者に迎え、いくつかの質問を行いながら、より具体的に
ライリーの考えを知ることができた。
(藤井明子)
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1999年12月7日(火)
アートスペースA
講師: テリー・ライリー
(作曲家、ピアニスト)
聞き手: 藤枝守(作曲家)
特別協力: 名古屋アメリカン・センター
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テリー・ライリー講演風景
藤枝 守
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