第3回ブラッシュアッププログラム レポート4

2008/10/4(土)15:30-19:30 本公演

会場:愛知県芸術劇場小ホール


 本番の一昨日から行われたリハーサルには緊迫感が漂い、アーティストの意気込み やその作品の包含するメッセージがひしひしと伝わってきた。入選4企画のアー ティストの作品は、2回のプレゼンテーションを通してブラッシュアップされ、一層完成度が高いものとなり、作品が持つ意味、またはそのベクトルはますます鋭角的に突き詰められた。それぞれの方向に明確化したことを裏付けるかのように、公開審査でも評価が分かれ、オーディエンスの得票によっても2つの作品が同数となり、優秀賞受賞作品が2つということになった。
 それだけの作品のレベルの高さ、次元の高いクオリティ、それゆえに均衡があった。


*各アーティストの上演と公開審査


1. 中上淳二「lightimagefourdance」

 

ブラッシュアップの過程で内容が大きく変化し作品の方向性がはっきりとした作品。光と映像、そして実際ダンサーが作り出す幻惑的な作品。とても緻密に計算された4面体をどのように使うのかいうことが、ありとあらゆる可能性を引き出せていた。しかし、サウンドという面での強さ、全体の構成について可能性がまだまだある作品だと感じられた。


2. 00(オゥオゥ)「object」  <優秀賞受賞>

最初の書類選考からブラッシュアップを経て、どんどん内容がよくなっていった。舞台の上のリアリティを積極的に追求して、それを説教くさくなく観客に体験させてくれた。全体の構成などについて問題点はあったものの、口パクも指揮も非常に綺麗にできており、生の声なのか、録音なのかのボーダーラインを実感することができて良かった。その中間的な浮遊感をもう少し味わっていたい作品に仕上がっていた。


3. 鈴木悦久「自動演奏ピアノとピアニストのための組曲~Chromatic scale variation~」 <優秀賞受賞>

コンピューターがだんだん見えなくなりピアノという機械に知性が憑依して、人間との知性と対話をしているように見えてくる。共通のコードがゲーム理論なのだが、ゲームを意識せずに二つの知性の間で繰り広げられる、なにか新しい第3の音楽として感じることができた。ルールが全然わからなくても、音楽作品としても高いクオリティーを持って成立しており、それ自体がなかなかに無いことだ。


4. 徳久ウィリアム「VOIZ」  <オーディエンス賞受賞作品>

うまく説明できないが、「無視することができないもの」を見る事ができた。圧倒的なボイスパフォーマンスで、それがどのようにこの舞台で作品として完結していくのか、どのように舞台作品として結晶化してゆくのかが見所だった。サウンド、パフォーマンス、空間、全てにおいて答えを提示していた。アーティストとしてのあり方、観客に対するスタンスを強く感じた。しかし、PAやマイクなどのテクノロジーを超えてゆけるような可能性を感じさせられ、ボイスパフォーマンスだけではなく、次への進化した形を舞台上で感じさせてくれた。