自主事業:ミニセレ
第21回AAF戯曲賞受賞記念公演 『鮭なら死んでるひよこたち』
「戯曲とは何か?」を探求する、上演を前提とした戯曲賞の舞台公演。
2019年にデビューした岡山在住の劇作家・守安久二子による、色付けされたことに気づかず鳴くひよこや、産卵後に死ぬサケ等のイメージから人の性(さが)や巡る命の不思議さに人生観を織り交ぜた物語。
演出は、過去のAAF戯曲賞で審査員を務めた経歴を持ち、瀬戸内国際芸術祭や新潟の大地の芸術祭で地域の特性を活かした作品制作を行うことに定評がある羊屋白玉。
インタビュー記事掲載のお知らせ(2024/6/28):
第2回AAF戯曲賞受賞作家 永山智行さん観劇インタビューを掲載しました。詳細は以下の「レビュー」よりご覧ください。
レビュー掲載のお知らせ(2024/6/26):
鑑賞&レビュー講座2023参加者によるレビューを掲載しました。詳細は以下の「レビュー」よりご覧ください。
当日券のお知らせ(2023/11/22):
各日10:00より 地下2階プレイガイドにて販売します。
※ 24日(金)19:00以降は、小ホール入口で販売となります。
※ 前売券は愛知県芸術劇場オンラインチケットサービス、地下2階プレイガイドにて各公演の前日正午まで販売しております。
高校生以下ゲネプロ招待のお知らせ(2023/11/13):
11月23日(木・祝)のゲネプロ(本番同様の最終リハーサル)に、高校生以下の方をご招待いたします。詳細は以下の「小・中・高校生招待」よりご覧ください。
アフタートークゲスト決定のお知らせ(2023/10/15):
以下のとおり、アフタートークのゲストが決定いたしました。
25日(土):守安久二子 氏、 26日(日):清水宏 氏
ワーク・イン・プログレス開催のお知らせ(2023/8/24):
8月30日(水)に、さっぽろ天神山アートスタジオ滞在制作の過程を公開し、皆さんと一緒に作品について考える「ワーク・イン・プログレス」を開催します。詳細は以下の「関連イベント」よりご覧ください。
概要
公演日時 | 2023年11月24日(金)19:30開演 25日(土)15:00開演★◯ 26日(日)15:00開演★◎ ★公演後、アフタートークあり <アフタートークゲスト> ◯託児サービスあり ※ 開場は開演の30分前 |
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会 場 | 愛知県芸術劇場 小ホール |
助成 |
文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等活性化・ネットワーク強化事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化))|独立行政法人日本芸術文化振興会 |
協力 | 非・売れ線系ビーナス 手描きTシャツ屋 chobico 特定非営利活動法人アートマネージメントセンター福岡 株式会社ステージクルー・ネットワーク さっぽろ天神山アートスタジオ 公益財団法人北海道文化財団 河野千晶(エンタメトレーナー)UniqueRhythmic |
主催・製作・企画制作/お問合せ |
愛知県芸術劇場 TEL: 052-211-7552(10:00~18:00) FAX: 052-971-5541 |
スタッフ・キャスト
出演者・スタッフ |
戯曲:守安久二子 美術:サカタアキコ、小駒豪 ※ SKANK/スカンク氏(音楽)は、ご自身の意向により降板されることになりました。 |
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チケット情報
チケット料金 |
全席自由 ※ U25は公演日に25歳以下対象(要証明書)。 |
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チケット取扱 |
チケット発売 2023年10月13日(金)10:00~ 愛知県芸術劇場メンバーズへの登録が必要です。詳細はこちら 愛知芸術文化センタープレイガイド(地下2階) TEL 052-972-0430 平日10:00-19:00 土日祝休10:00-18:00 (月曜定休/祝休日の場合、翌平日・年末年始休) |
鑑賞サポート
託児サービス (有料・要予約) |
対象:満1歳以上の未就学児 |
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鑑賞サポート | 聴覚に障がいがあるお客様へのサポート ・事前に上演台本のデータをEメールでお送りできます。 ・11月26日公演では日本語ポータブル字幕をご利用いただけます。 ご希望の方は、前日までに 劇場事務局(問合せ先)までご連絡ください。(予約優先) |
小・中・高校生招待
高校生以下 ゲネプロ招待
普段、舞台芸術に触れる機会の少ない若い世代の方に舞台に親しんでいただくため、ゲネプロ(本番同様の最終リハーサル)にご招待いたします。
公演日時 |
2023年11月23日(木・祝)17:00開始予定 ※ 上演時間:90分程度を予定 |
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会 場 | 愛知県芸術劇場 小ホール |
定 員 | 先着100名程度(引率の先生を含む)※未就学児入場不可 |
申込方法 | 【件名】高校生以下 ゲネプロ招待 【本文】①参加者氏名 ②代表者名 ③代表者のご連絡先(電話番号等)④学生の場合は学校名 をご記入のうえ、メールにて、お申し込みください。 【宛先】 メール:ws3△aaf.or.jp (「△」を「@」に置き換えてください。) ※ お預かりした個人情報は、愛知県芸術劇場(公益財団法人愛知県文化振興事業団)にて厳重に管理し、本事業を運営するために使用し、それ以外に使用しません。 |
プロフィール
羊屋 白玉
Shirotama Hitsujiya
(c)Aokid
札幌出身。「指輪ホテル」樹立に立ち会う。演出家、劇作家、俳優。ソーシャルワーカー。
言葉・音・身体・空間・五感・哲学を、斬新なビジュアルで貫く作品は、北米、南米、ヨーロッパツアーに及ぶ。国内外の現代美術の芸術祭では、海や列車など、その土地の風景の中で作品を発表している。2013・16年『瀬戸内国際芸術祭』2014年『中房総国際芸術祭』2017年『札幌国際芸術祭』など。
アジアの女性舞台芸術家たちとのコレクティブを目指す亜女会(アジア女性舞台芸術会議)樹立メンバー。アジアの女性達にインタビューをし、社会学や民俗学に基づいた、生活史のアーカイヴ作りをしながら、歴史における発展と保存の対立の中、どのようにバランスのとれた未来をつくってゆけるか。を、ミッションとしている。
北海道のアーティストの創作環境改善のための実践的勉強会。北海道アーティストユニオンスタディーズ(HAUS)樹立メンバー。ニューズウィーク日本誌で「世界が認めた日本人女性100人」に選ばれている。
守安 久二子
Kuniko Moriyasu
(c)Aokid
アートファーム岡山の戯曲講座(田辺剛講師)にて戯曲を書き始める。処女作『草の家』にてアートヴィレッジTOON戯曲賞2018大賞・観客賞を受賞。2020年愛媛県東温市、2021年東京公演。本作は3作目の戯曲。岡山市在住。
遠藤 麻衣
Mai Endo
(c)Aokid
俳優・美術家。近年は、美学校で「シャドーフェミニズムズの芸術実践」の開講や、丸山美佳との「Multiple Spirits(マルスピ)」でジン出版や展覧会企画などクィアフェミニスト的な実践を展開している。主な発表に「アイ・アム・ノット・フェミニスト!」(フェスティバル/トーキョー17、ゲーテ・インスティテュート東京、2017)。出演に、指輪ホテル「バタイユのバスローブ」(naebono art studio、BUoY、2019)、SONS WO:「シティIII」(音楽実験室新世界、鴨江アートセンター、2017)、 岸井大輔「始末をかく」(2013~2018)など。
神戸 浩
Hiroshi Kanbe
(c)Aokid
美学 1991年映画「無能の人」で 報知映画賞最優秀助演男優賞、1996年「学校Ⅱ」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、全国映連賞男優賞を受賞。1993年・1994年・1996年「男はつらいよ」シリーズ、2002年「たそがれ清兵衛」以降の山田洋次監督作品ほか、出演多数。2023年9月1日公開の映画「こんにちわ、母さん」にも出演している。Eテレ「バリバラ~障害者情報バラエティー~」にナレーションでレギュラー出演中。
スズエダ フサコ
Fusako Suzueda
(c)Aokid
札幌を拠点として活動。手描きTシャツ屋chobicoとして、オリジナル作品を販売中。各地のハンドメイド系イベントに参加したり展示即売会などを行っている。役者としては近年、映像作品をメインに活動しているため、今回は三年振りの舞台出演となる。趣味は映画鑑賞とアコーディオン弾き語り。自宅の黒猫を愛でる日々。
田坂 哲郎
Tetsuro Tasaka
(c)Aokid
福岡在住。劇団、非・売れ線系ビーナス主宰。劇作家、俳優として活動するほか、劇団うりんこ「ナゾトキシアター」など、謎解きイベントの制作も行っている。「些細なうた」で北海道戯曲賞の最終に残り、「先生の暗いロッカー」でAAF戯曲賞の最終に残った、今、一番惜しい男の一人。
リンノスケ
(c)Aokid
俳優。北海道出身。札幌市立大学デザイン学部卒。在学時の2015年より俳優・舞踏を始め、2016年に旗揚げしたきっとろんどんを共同主宰。また劇団千年王國に出演した際は「贋作者」では鴈次郎役、「ロミオとジュリエット」ではロミオ役でそれぞれ主演を演じた他、micell、モノクロームサーカス、東野祥子、伊藤千枝、田仲ハル、Sapporo Dance Collectiveなどのダンス・舞踏作品にも出演。2022年からは活動拠点を東京と北海道の2拠点に広げた。
サカタアキコ
(c)Aokid
造形作家。1992年武蔵野美術学園彫塑科在学中より「指輪ホテル」美術を担当。2010年動物モチーフを中心としたオーダーメイドブランド「DIET CHICKEN」始動。「アサクサコレクション2013」では手描きの鯉の衣装を製作、小島ケイタニーラブ作曲指揮のマーチング鯉バンドを結成し浅草の町を行進した。トクマルシューゴ主催「TONOFON FESTIVAL2010~2017」ではコラボグッズを製作。
清水宏 <26日(日)アフタートークゲスト>
1980~90年代にかけて小劇場ブームの中で劇団山の手事情社の中心的俳優として活躍。その後ピン芸人として活動を始めラジオ、舞台で活躍。ぜんじろう、ラサール石井と共に「日本スタンダップコメディ協会」を設立し、会長に就任。日本全国ツアーなどを行う一方で、海外でもロシア、台湾、韓国、メキシコなどで現地の言葉でコメディ敢行をする。
メッセージ/インタビュー
第21回AAF戯曲賞受賞公演『鮭なら死んでるひよこたち』福岡公演
第2回AAF戯曲賞受賞作家 永山智行さん観劇インタビュー
聞き手:山本麦子(愛知県芸術劇場プロデューサー)
山本―AAF戯曲賞記念公演初のツアーとして、『鮭なら死んでるひよこたち』福岡公演を実施することが出来ました。第2回AAF戯曲賞受賞作家として、また劇団こふく劇場代表として九州を中心に全国でご活躍の永山智行さんにご来場いただけましたのでインタビューいたします。ご覧になっていかがでしたか?
永山ーありがとうございます。終演後に観客のみなさんが「わーっ」と舞台上に来られてる風景を見て、「この風景が全てだな」と思いました。舞台上の空間が、お芝居の中の世界と見る人を分けたものではなくて柔らかい空間になっていく、その様子が素敵だなあ、と思ってみていました。
最近、劇場における物語って何だろう、と思っていて…。小説における物語、映画における物語、いろんな表現があるんだけど、劇場ってどういう場所か、劇場の物語はきっと風景のことなんじゃないかなって思いましたね。
山本―「風景」というのは今回の作品の内容にもつながっていますね。
永山ーそうそう。守安さんの戯曲のなかに、いろんな風景がある。「坂道」って言葉がたくさん出てくるでしょ?坂道ってみんな登ったことがあるし、もしかしたら身近にあるかもしれないし、ね。そういうものだから、舞台上には象徴的にシーソーがあるだけで、ここには「坂道」は実際にはないんだけど、観ていくうちに自分の中にこう、風景みたいなものが生まれていくのが良いなあと思いましたね。
そして、縁日という風景も、いいですよね。神戸さん(佐川会長・ボー爺)はその象徴なんだけど…出てきてしゃべるだけで、もうそれだけで感動しちゃう、風景が変わって見えるというか。
私は宮崎県の三股町を拠点に活動していて「まちドラ!」という企画をやっているんです。「まちドラ!」では町民の方、70歳や80歳のおじいちゃんおばあちゃんが舞台に出て、次はお客さんになって、と毎年そういう感じでやっているんですけど、そのときに風景の見え方が変わるのを思い出しましたね。この人は一人暮らしで普段話す相手がいなくて、でも「まちドラ!」のときだけは高校生役で台本をもってみんなと一緒に頑張っている、とか、そういう背景を知って見ると風景が全然違ってきますよね。今回、舞台の途中途中で役者が出てきて、それぞれトークをしたでしょう?それで、ただ「物語の中をこう見てる」というだけじゃなくて、「あの人が今、こうやって演じてる」っていうその背景込みで風景の見え方が変わってくるていう。本当はそれこそが劇場のにおける物語の在り様なんじゃないか、と感じましたね。
戯曲に「見渡せるけど見当たらない」という言葉があるでしょう?それが美しいな、本当にそうだなと思ったんですよね。私たちの日常っていろんな風景、街の風景とか、家の中とかね、いろんなものが見えてるんだけど見当たらないというか、見ようとしなければ見えなくなってることが沢山あるとおもうんですよね。それをこうやって劇場に来るとなんか改めてその風景に出会える、そうするとちょっと物の見方が変わったりして、劇場を一歩外に出た時に皆さんの見方も変わっているかもしれない、それこそが劇場の物語のありようかなみたいなことがあると思うんですよね。すごく象徴的な台詞だなあと。
守安さんの戯曲と、今回の演出、両方によって「今、いろんな風景に出会ってる」という豊かな時間でしたね。
山本―ありがとうございます。小道具のトランクも旅情がありますし、演出の羊屋さんも「風景」はかなり意識していたのではないかと思います。
旅というと、AAF戯曲賞公演初の旅公演、県外ツアーに挑戦することが出来ました。AAF戯曲賞作家として戯曲賞に思うことはありますか?
永山ーやっぱりAAF戯曲賞を取りましたっていうことが自己紹介する時とかプロフィールに書いたりとか、だいぶ恩恵を受けてますね(笑)そこにあるのとないのとで、相手との距離感みたいなことが変わっていくっていうところはありますね。
AAF戯曲賞の上演を見たことあるよ」とか、「戯曲賞の先輩・後輩だな」とか、不思議なつながりを感じたりもします。これがもし1年で終わってた賞だったらこういうことにはならなくて、リニューアルしたりしながらこうやって続いてくれていて、ツアーも行われるということは私にとって本当に勇気づけられますね。
山本―今回『鮭なら死んでるひよこたち』福岡公演をさせていただいたキビるフェスでは、永山さん演出の作品『ひなた、日本語をうたうvol.1』(ひなた旅行舎)も上演されていてて、不思議な縁を感じますね。
本日は公演後のインタビューにご対応いただき、ありがとうございました。
※2024年2月16日 第21回AAF戯曲賞受賞公演『鮭なら死んでるひよこたち』福岡公演 会場 なみきスクエア にて。
永山 智行(ながやま ともゆき)
劇作家/演出家/劇団こふく劇場代表
1967年生まれ。劇作家、演出家。宮崎県の三股町立文化会館をフランチャイズとする劇団こふく劇場代表。2001年『so bad year』でAAF戯曲賞受賞。同作をはじめ、戯曲は劇団外での上演も多く、三浦基(地点)、神里雄大(岡崎藝術座)、中島諒人(鳥の劇場)らの演出家によって上演されている。2006年から約<10年間、宮崎県立芸術劇場演劇ディレクターも務め、九州の俳優を集めてのプロデュース公演「演劇・時空の旅シリーズ」を企画・演出した。
2022年4月に初の戯曲集「ロマンス/いきたひと/猫を探す」(而立書房)を刊行。
ツアー情報
全国ツアー |
福岡公演 キビるフェス2024参加作品 ▼キビるフェス2024ウェブサイト 札幌公演 2024札幌国際芸術祭公募プロジェクト・札幌演劇シーズン2024-冬サテライトプログラム ▼2024札幌国際芸術祭公募プロジェクトウェブサイト |
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レビュー
第21回AAF戯曲賞受賞公演『鮭なら死んでるひよこたち』福岡公演
第2回AAF戯曲賞受賞作家 永山智行さん観劇インタビュー
聞き手:山本麦子(愛知県芸術劇場プロデューサー)
永山 智行(ながやま ともゆき)
劇作家/演出家/劇団こふく劇場代表
1967年生まれ。劇作家、演出家。宮崎県の三股町立文化会館をフランチャイズとする劇団こふく劇場代表。2001年『so bad year』でAAF戯曲賞受賞。同作をはじめ、戯曲は劇団外での上演も多く、三浦基(地点)、神里雄大(岡崎藝術座)、中島諒人(鳥の劇場)らの演出家によって上演されている。2006年から約<10年間、宮崎県立芸術劇場演劇ディレクターも務め、九州の俳優を集めてのプロデュース公演「演劇・時空の旅シリーズ」を企画・演出した。
2022年4月に初の戯曲集「ロマンス/いきたひと/猫を探す」(而立書房)を刊行。
山本―AAF戯曲賞記念公演初のツアーとして、『鮭なら死んでるひよこたち』福岡公演を実施することが出来ました。第2回AAF戯曲賞受賞作家として、また劇団こふく劇場代表として九州を中心に全国でご活躍の永山智行さんにご来場いただけましたのでインタビューいたします。ご覧になっていかがでしたか?
永山ーありがとうございます。終演後に観客のみなさんが「わーっ」と舞台上に来られてる風景を見て、「この風景が全てだな」と思いました。舞台上の空間が、お芝居の中の世界と見る人を分けたものではなくて柔らかい空間になっていく、その様子が素敵だなあ、と思ってみていました。
最近、劇場における物語って何だろう、と思っていて…。小説における物語、映画における物語、いろんな表現があるんだけど、劇場ってどういう場所か、劇場の物語はきっと風景のことなんじゃないかなって思いましたね。
山本―「風景」というのは今回の作品の内容にもつながっていますね。
永山ーそうそう。守安さんの戯曲のなかに、いろんな風景がある。「坂道」って言葉がたくさん出てくるでしょ?坂道ってみんな登ったことがあるし、もしかしたら身近にあるかもしれないし、ね。そういうものだから、舞台上には象徴的にシーソーがあるだけで、ここには「坂道」は実際にはないんだけど、観ていくうちに自分の中にこう、風景みたいなものが生まれていくのが良いなあと思いましたね。
そして、縁日という風景も、いいですよね。神戸さん(佐川会長・ボー爺)はその象徴なんだけど…出てきてしゃべるだけで、もうそれだけで感動しちゃう、風景が変わって見えるというか。
私は宮崎県の三股町を拠点に活動していて「まちドラ!」という企画をやっているんです。「まちドラ!」では町民の方、70歳や80歳のおじいちゃんおばあちゃんが舞台に出て、次はお客さんになって、と毎年そういう感じでやっているんですけど、そのときに風景の見え方が変わるのを思い出しましたね。この人は一人暮らしで普段話す相手がいなくて、でも「まちドラ!」のときだけは高校生役で台本をもってみんなと一緒に頑張っている、とか、そういう背景を知って見ると風景が全然違ってきますよね。今回、舞台の途中途中で役者が出てきて、それぞれトークをしたでしょう?それで、ただ「物語の中をこう見てる」というだけじゃなくて、「あの人が今、こうやって演じてる」っていうその背景込みで風景の見え方が変わってくるていう。本当はそれこそが劇場のにおける物語の在り様なんじゃないか、と感じましたね。
戯曲に「見渡せるけど見当たらない」という言葉があるでしょう?それが美しいな、本当にそうだなと思ったんですよね。私たちの日常っていろんな風景、街の風景とか、家の中とかね、いろんなものが見えてるんだけど見当たらないというか、見ようとしなければ見えなくなってることが沢山あるとおもうんですよね。それをこうやって劇場に来るとなんか改めてその風景に出会える、そうするとちょっと物の見方が変わったりして、劇場を一歩外に出た時に皆さんの見方も変わっているかもしれない、それこそが劇場の物語のありようかなみたいなことがあると思うんですよね。すごく象徴的な台詞だなあと。
守安さんの戯曲と、今回の演出、両方によって「今、いろんな風景に出会ってる」という豊かな時間でしたね。
山本―ありがとうございます。小道具のトランクも旅情がありますし、演出の羊屋さんも「風景」はかなり意識していたのではないかと思います。
旅というと、AAF戯曲賞公演初の旅公演、県外ツアーに挑戦することが出来ました。AAF戯曲賞作家として戯曲賞に思うことはありますか?
永山ーやっぱりAAF戯曲賞を取りましたっていうことが自己紹介する時とかプロフィールに書いたりとか、だいぶ恩恵を受けてますね(笑)そこにあるのとないのとで、相手との距離感みたいなことが変わっていくっていうところはありますね。
AAF戯曲賞の上演を見たことあるよ」とか、「戯曲賞の先輩・後輩だな」とか、不思議なつながりを感じたりもします。これがもし1年で終わってた賞だったらこういうことにはならなくて、リニューアルしたりしながらこうやって続いてくれていて、ツアーも行われるということは私にとって本当に勇気づけられますね。
山本―今回『鮭なら死んでるひよこたち』福岡公演をさせていただいたキビるフェスでは、永山さん演出の作品『ひなた、日本語をうたうvol.1』(ひなた旅行舎)も上演されていてて、不思議な縁を感じますね。
本日は公演後のインタビューにご対応いただき、ありがとうございました。
※2024年2月16日 第21回AAF戯曲賞受賞公演『鮭なら死んでるひよこたち』福岡公演
会場 なみきスクエア にて。
鑑賞&レビュー講座2023参加者によるレビュー
鑑賞公演:2023年11月24日(金)19:30開演
25日(土)15:00開演
26日(日)15:00開演
第21回AAF戯曲賞受賞記念公演 『鮭なら死んでるひよこたち』
愛知県芸術劇場 小ホール
愛知県芸術劇場では舞台芸術を言葉で紡ぎ、レビューを執筆することも舞台と観客とのコミュニケーションの一つと考えています。
以下の作品は、講師アドバイス、推敲を経て完成した2023年度ステップアップライターの作品です。
『鮭なら死んでるひよこたち』は、2023年11月24〜26日、愛知県芸術劇場にて上演された演劇作品だ。第21回AAF戯曲賞も受賞した戯曲は守安久ニ子によって執筆され、演出は「指輪ホテル」の芸術監督も務める羊屋白玉が担当する。
本作はもともと的屋のフーとムーが夫婦漫才的なやり取りを繰り広げる『寂しい大人』というタイトルで構想されていたそうだ。だが、キャラクターの増加と守安の感情の変化からタイトルは『鮭なら死んでるひよこたち』へと変更された。鮭は産卵でエネルギーを使い果たし、死に至る。その習性と自身の境遇とを重ねているわけだ。人は子を成すために生きるのではないが、子どもが一人前になった後、親の存在意義がわからなくなる時がある。そんな葛藤を戯曲に込めた。終盤に登場する夫人の会話はテーマを象徴するような「子どもを産んだ後の親」についての議論になっている。
今作では生と死、そして社会構造が大きなテーマになっている。メインキャラクターとなるのは、的屋の夫婦ムーとフー。学校前で子どもにひよこを売ることで生計を立てているふたりは「人づくり革命」の委員にも任命されている(「人づくり革命」は政府の「人づくり革命 基本構想」から着想を得たそうだ)。だが、その立場にもフーとムーは疑問を隠せない。夫妻を抑圧するのは社会そのものだ。フーとムーが信念を持って取り組んでいる仕事を、効率とルールだけを理由に否定する監査員はその象徴だろう。そういうふうに扱われるのはフーとムー夫妻だけではない。登場人物それぞれが社会構造やバックボーンの中で社会から疎外されたキャラクターとして設定されている。特に印象的なのはチャラ男と呼ばれるキャラクターだ。初登場時は明るく陽気で身勝手な若者だと思われた彼だが、舞台が進むにつれて貧困を抱えたキャラクターであることが分かってくる。そんな彼が言うからこそ「よりよく生きようなんて、生きるのが当たり前の奴らのお遊びだろ!生きるのが当たり前の奴らに、俺らの、こいつらの気持ちがわかるかよ!」というセリフが熱く響く。
今作がテーマにした社会との関係性については、幕間に挟まれるトークからも窺い知ることができる。基本はテンポよく軽妙に進められる一人漫才だが、その裏で、やはり社会との接点や摩擦のようなものを浮き彫りにする。社会構造の中で悩む存在は、決して演劇内だけの問題ではない。我々一人一人が必然的に社会と向きあい、その中で問題となってくるアレコレが存在するのだと強く訴える。
特に、パフォーマーでもある遠藤麻衣が語った言葉が強く印象に残っている。「日本では、舞台と社会を切り離そうとする」。自身が裸でパフォーマンスすることが多い遠藤は、それを疎外するような風潮に少し違和感があるそうだ。パフォーマンスとして裸を見せることが政治性や批評性を孕んでしまう。それを避けようとするのが今の社会であると遠藤は語る。
本作『鮭なら死んでるひよこたち』は、しっかり社会と向き合った上で問題を提示する。社会性や批評性を強く打ち出した上で、そこに作家として向き合ってみせた、骨太な一作となっているのではないだろうか。
加藤 隼一(鑑賞&レビュー講座2023ステップアップライター)
©今井隆之
©今井隆之
©今井隆之
2023年11月24日(金)~26日(日)、愛知県芸術劇場小ホールで、第21回AAF戯曲賞受賞公演「鮭なら死んでるひよこたち」が上演された。戯曲は守安久二子、演出はAAF戯曲賞の審査員でもあった「指輪ホテル」芸術監督の羊屋白玉が務めた。
守安が子どもの頃見た風景と、今は動物愛護の観点からも見かけることが稀になってしまった、雄のひよこに着色料で色をつけ屋台などで売る「カラーひよこ」、そして鮭のように産卵して命を落としていく生命のつながりへの憧れを交えて、令和の現代に、古き良き時代に思い描いた世界を再構築して綴っていく。
カラーひよこを売る的屋のムーと、子どもを授かることを望んでいるその妻フーの掛け合い漫才のようなやりとりが、夕暮れの公園の、これまた見ることが少なくなったシーソーの周りでテンポ良く展開される。時にシーソーでのバランス感覚を楽しむ二人の無邪気な行動に、ノスタルジーが感じられる。その二人がつくり出す独特な雰囲気を打ち破るように入ってくる「チャラ男、ガリア婦人、佐川会長」の濃いキャラクター。夕暮れの公園に露店がどんどん建っていく。
そうした中、チャラ男やボー爺、監査員等、ムーとフーとやりとりをしたキャラクターが、場面の区切れで自己語りを展開させる。まるで漫談のような語り口で、キャラクターになりきって語っているのか、その俳優が自分のことを語っているのかの境界もわからなくなりがちだが、無邪気な仕草や高圧的な態度で演じるキャラクターが、ぐっと観客に近づいた場面にもなった。
「人づくり革命」という言葉も、フーとムーのどこかトンチンカンなやり取りの中では、その人を見下すような語感とは裏腹にこっけいなものに思えてくる。登場人物の未来に進んでいこうとする前向きな言葉の数々が積み上げられることで、かえって昭和のノスタルジーが頭から離れなくなる。
令和の現在であれば、「カラーひよこ」などという代物は、動物虐待の観点からしても受け入れられるはずがなく、そんな商売で暮らしていこうと考える人もいないだろう。ひよこに色をつけて売り出すような行為が受け入れられた昭和とはどんな時代だったのだろうか。人権感覚の広がりによって正しいことの「多様性の時代」となった令和に対して、今考えれば不適切であっても、面白そうなもの、変わったものに飛びつく違う意味での「多様性」があった時代だったのではないか。平成、令和と窮屈に変わってしまった感もありながら、いっぽうでは鮭のように身を削って子孫を残す生き方にも今日では多様な考えが生ずる。いずれもその時代のもつ個性ではないかとこの戯曲は語っているようだった。
フィナーレに近づくにつれて、秋の公園はいっそう、屋台が立ち並ぶ懐かしい風景になっていく。令和の時代に昭和のこのような風景を見ることに、守安がいう「人の人生は1本の線としてではなく、球体として捉えている感覚がある」という言葉への共感が湧き上がる。やはりこの戯曲の最大の魅力は、懐かしい昭和の風景の中でのやり取りを、30年以上を経た令和の今にそのまま持ってくることで、新しい何かを感じたり、昭和の古き良き時代と今との温かい繋がりを感じたりでき、観客の中に新しい何かを残すことにあるのではないか。目を閉じると、今も、オレンジ色の舞台の風景が浮かんでくる。
小町谷 聖(鑑賞&レビュー講座2023ステップアップライター)
©今井隆之
©今井隆之
2023年11月24日~25日に第21回AAF戯曲賞受賞作品『鮭なら死んでるひよこたち』が愛知県芸術劇場小ホールにて上演された。戯曲は守安久二子、演出は羊屋白玉が担当した。 AAF戯曲賞は劇場で上演されることを前提とした戯曲賞だ。受賞作の戯曲は事前に公開されるので、観客は上演前に戯曲を読んであれこれ想像を巡らせたり、観劇後に戯曲を読み返したりしながら反芻する楽しみもある。
本作品は、作者が子供だった頃の昭和の時代と令和の現在が混ざり合った世界が舞台となっている。小学生にひよこを売る的屋の夫婦ムーとフーを中心に、チャラ男、監査員、佐川会長、ボー爺、理事長、ガリア夫人、目に見えない子供たちが登場する。多様な年代の人物がそろっており、社会の縮図を思わせる。観客はこのうちの誰かに共感を覚え、自分自身の人生と重ね合わせるのではないだろうか。
ストーリーの合間には、役者が一人で客席にアドリブで語り掛けるスタンダップコメディが差し挟まれる。これは戯曲には書かれていなかった部分だが、役者が役から離れた本人として客席とコミュニケーションをとることで、この作品がレトロなおとぎ話ではなく、現代社会を扱っていることを印象付ける効果もある。役者本人の人となりが役に重なり人物に深みが出るのも面白い。
『鮭なら死んでるひよこたち』というタイトルは、作者が子育てを終えた自分自身と、産卵後に力尽きて死ぬ鮭とが重なったことからきているそうだ。暗いタイトルとは裏腹に、作品の世界観はポップで明るい。舞台奥にはカラフルなトランクやランドセル、懐かしい学用品、子供のおもちゃなどが並べられた校門があり、まるで自分自身の小学生時代が当時の目線でよみがえるようだ。舞台中央に置かれているシーソーは、戯曲にかかれていた「坂だらけの街」という設定を、公園の遊具として違和感のない形で見事に表していた。
物語の後半では校門のセットが裏返り、舞台上にお祭りの縁日が現れる仕掛けになっている。昭和という時代の活気が偲ばれる雑多で魅惑的な縁日には、射的やりんごあめ、カラーひよこが売られている。縁日が現れると、作者自身の思いを色濃く反映したガリア夫人の言葉が響く。ガリア夫人は時代を象徴する女性像と言えるだろう。夫人は花嫁姿の張りぼてとして舞台に存在し、特定の役者が演じるのではなく、複数の役者たちが次々に夫人の生きた時代や思いを代弁していくという演出になっている。
戦後復興・高度経済成長の目まぐるしい時代に流されるように人生の選択をし、子を産み育て、気が付けば、「鮭なら死んでる」年齢になって、ふと、自分の人生を振り返り愕然とする夫人。心にぽっかりと空いた穴を埋めるのは新たに任命された肩書なのだが、そうした肩書は「永遠の任命権者」である理事長から、まるで茶番のように量産されている空虚なものに他ならない。それでも、その肩書を心のよりどころとしてこれからの人生を生きていこうとする姿はどこか滑稽で健気だ。
この作品に悪人はいない。みな、悩みながらも懸命に生きているのだ。チャラ男や監査員もまた新たな肩書を得て少しの希望を胸に坂道を歩き出していった。社会に疑問を抱き、時に反発しながらも結局その構造に取り込まれて生きていく。その姿に私たちは自分の姿を重ね合わせる。 「人は、時の流れでしか学べない愚かなひよこ」。大人であれば、この言葉が身にしみるに違いない。
ラストシーンでは降り積もる枯れ葉とノスタルジックな夕陽の中、優しいアコーディオンの音色が私たちを包み、なんだか浄化されたような気分になった。
横井 ゆきえ(鑑賞&レビュー講座2023ステップアップライター)
©今井隆之
©今井隆之
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