自主事業:鑑賞サポート
アクラム・カーン『ジャングル・ブック』
自然と動物たちの賛歌 環境をテーマにしたダンス×アニメーション
気候変動により海が陸地を覆いつくし、人々は生き延びるため次々と祖国を去っていく。不穏な同盟を結びながら、動物たちが縄張りを張る荒れ果てた街。そこにたどり着いたのは家族と引き裂かれた一人の子どもだった。「モーグリ」と名付けられ、動物たちと暮らす少女は、ジャングルと化した世界で何を見つめ、どんな決断を下すのか――。
世界中で愛されるジョセフ・ラドヤード・キプリングによる『ジャングル・ブック』。主人公モーグリを10歳で演じたこともある(ピーター・ブルック『モーグリの冒険』)世界的振付家アクラム・カーンが、再び物語と対峙し、独自の解釈で舞台化。言葉から紡がれる豊かなダンス、舞台に命を吹き込むアニメーション、そして雄弁に語る音楽に誘われ、人と動物、そして自然――この地球に共に生きる全てのものたちが声を上げる。不確かな時代に生きる私たちが、未来へのバトンを渡すために今何ができるのか。アクラム・カーンがおくる私たち自身の物語。
"私はこの物語−『ジャングル・ブック』として愛されている物語−をあらゆる文化の子どもたちや大人たちと共有する使命を感じています。
私たちが忘れてしまったことを再び学ぶために"
−アクラム・カーン
世界初演:2022年4月2日カーヴシアター(レスター・英国)
インタビュー掲載のお知らせ(2025/5/21):
アクラム・カーン(演出・振付)のインタビュー記事を掲載しました。詳細は以下の「メッセージ/インタビュー」よりご覧ください。
ダンスワークショップ開催のお知らせ(2025/3/24):
『ジャングル・ブック』ダンスワークショップを開催します。詳細は以下の「関連イベント」よりご覧ください。
概要
公演日時 |
2025年6月28日(土)16:00開演 ※ 客席開場は開演の30分前 |
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会 場 | 愛知県芸術劇場 大ホール |
主催・お問合せ |
愛知県芸術劇場 |
後 援 | ブリティッシュ・カウンシル |
スタッフ・キャスト
スタッフ・キャスト |
演出・振付:アクラム・カーン クリエイティブ・アソシエイト&コーチ:マーヴィン・クー |
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チケット情報
チケット料金 |
全席指定 ※【劇場と子ども7万人プロジェクト対象公演】小・中・高校生を公演にご招待します。 |
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チケット取扱 |
一般発売 2025年3月14日(金)10:00~ 愛知県芸術劇場メンバーズウェブ先行(S、A席のみ):2025年3月7日(金)10:00~ 8日(土)23:59 愛知県芸術劇場メンバーズへの登録が必要です。詳細はこちら ※電子チケット「チケットれすQ」対応 ☆愛知芸術文化センタープレイガイド(地下2階) TEL 052-972-0430 平日10:00-19:00 土日祝休10:00-18:00 (月曜定休/祝休日の場合、翌平日) チケットぴあ [Pコード:532-229] ※購入方法によりチケット代金のほかに手数料が必要になる場合があります。 |
鑑賞サポート
託児サービス (要予約) |
対象:満1歳以上の未就学児 |
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鑑賞サポート |
視覚に障がいのあるお客さまへの鑑賞サポート 聴覚に障がいのあるお客さまへの鑑賞サポート ※ご希望の方は 劇場事務局 へご連絡ください。 申込締切:2025年6月21日(土)12:00まで |
小・中・高校生招待
【劇場と子ども7万人プロジェクト(小・中・高校生招待)対象公演】
申込受付:4月1日(火)正午~
※ 10歳以上推奨
※ 枚数限定・先着順・座席選択不可
※ 同行のお客さまも一緒にご購入いただけます(対象席種:S席・A席/1申込につき招待とあわせて4枚まで)。
※ 入場は電子チケット「チケットれすQ」での入場になります。招待・購入にかかわらず手数料(1枚あたり77円 *2025年4月1日以降)が必要です。
※ 座席は公演前日までにメールで通知されます。
プロフィール
アクラム・カーン /Akram Khan(ダンサー・振付家)
Photo: Camilla Greenwell
ロンドン生まれのバングラデシュ系イギリス人。コンテンポラリー・ダンスと北インドの古典舞踊「カタック」をユニークに融合させ、異文化を越境する表現活動を精力的に行っている。90年代よりソロ作を発表、2000年には自身のカンパニーを設立。想像力にあふれた今日的意義を持つ創作活動と、親密かつ壮大なストーリーテリングが評されている。シルヴィ・ギエム、イスラエル・ガルバンなど、ジャンルを超えた数々のコラボレーションが大きな注目を集める。また、2012年夏のロンドン・オリンピックでは開会式の一場面を振付・出演し、大観衆より絶賛された。ローレンス・オリヴィエ賞、ベッシー賞など受賞多数。現在、サドラーズ・ウェルズ 劇場やマウントビュー・アカデミー・オブ・シアター・アーツ、 カーヴシアターのアソシエイト・アーティストを務める。
メッセージ/インタビュー
アクラム・カーン『ジャングル・ブック』
それは、私たち自身の物語
ロンドン・オリンピック開会式の一部振付を担ったアクラム・カーンによる話題の舞台『ジャングル・ブック』。その世界ツアーがこの6月、埼玉、愛知でファイナルを迎える。世界中で愛されるキプリングの名作『ジャングル・ブック』を、気候変動をテーマに新たな解釈で舞台化したカーンに、創作過程や作品にかける思いを訊いた。
取材・文=上野房子(ダンス評論家)
―ジョセフ・ラドヤード・キプリングの小説『ジャングル・ブック』から、どのように創作をスタートさせましたか。
10歳のときに『ジャングル・ブック』に基づくインド舞踊の作品で主人公モーグリを演じたことはありますが、創作を始めるまで、キプリングの小説がここまで幅広く複雑なドラマだとは認識していませんでした。脚本を手がけたタリク・ジョーダンと私は、重層的な物語から特定の要素を慎重に抽出し、新たな観点を加えていきました。
Photo. Camilla Greenwell
―多くの人が慣れ親しんでいる小説を舞台化する楽しさと難しさがあったのでは?
長年のコラボレーターだけでなく、新しいメンバーにも参加してほしかったので、若い世代のライターであるジョーダンとの初仕事が実現しました。今日の観客に語りかける物語を紡ぎ出すために、彼の視線は不可欠でした。苦労したのは、これほど有名な物語の本質に忠実に向き合いつつ、新しさが感じられるように“reimagined(再想像)”すること。同時代性のあるテーマ、とりわけ、私たちに差し迫った問題で、私の子どもたちが強く意識している気候変動を物語に織り込みたかったのです。
Jungle Book reimagined | Akram Khan Company | Family Trailer
―本作では言葉と動き、音楽、美術、映像が相互に関わり合っていますが、舞台装置は用いられていません。
作品のテーマにのっとり、舞台美術は、YeastCultureの優秀なチームによるアニメーションと、リサイクル可能な段ボールに限定しました。気候変動をテーマにしているのに、巨大な装置を運搬しながらツアーをするのは矛盾しています。アニメーションも持続可能性を実現する手段ですし、それによって言葉と動きをより深い次元でひとつにすることができました。
Animation Exports. YeastCulture
―主人公モーグリを少女としたのは、なぜですか。
どうしてモーグリは男の子なの、と私の娘が尋ねました。何気ないけれど深い意味のあるこの一言がきっかけになって配役を再考し、私たちの『ジャングル・ブック』では伝統的な男女の役割分担から自由になるのが自然だと感じるに至りました。
―作品では、ダンサーたちが熊や猿など、小説に登場する動物に扮して動きます。動物のキャラクターを振り付けるにあたり、どういったことを意識しましたか。
創作の準備段階で、私たちはさまざまな動物をリサーチしました。ダンサーたちも動物の動きを理解し、体現するために、あらゆる映像を見ています。こういったリサーチをとおして、熊のバルーや黒豹のバギーラにふさわしい動きを探っただけではなく、彼らの生き様にも目を向けることになりました。彼らの静かなたたずまいや堂々とした存在感をも踏まえて、舞台上の動物たちがリアルに感じられるように心がけました。
Photo. Camilla Greenwell
Photo. Camilla Greenwell
―“今”の“私たち”の物語に変化を遂げた『ジャングル・ブック』ですが、限定された時間と空間に限られた観客の前で上演される舞台作品でもあります。アクラムさんにとって、劇場でのライブ公演の意義とは?
人類に残された最後の儀式だと考えています。かつては家族や友だちと食事をすることが同じ時間を共有する儀式でした。でも今はともに食卓を囲んでいても、誰もがスマホを手にしている。劇場は、最後の避難所と呼べるかもしれない。チケットを買う時点で、私たちはひとつの契約を交わすことになるんですよ。劇場にいる2時間の間、何も持たずに舞台だけに集中する、と。
2012年のロンドン・オリンピック開会式でこんな体験をしました。私が振り付け、出演もしたダンス場面*が始まる直前、一瞬だけスタジアムが静まりかえり、7万人もの聴衆が生み出す静寂の雄弁さと力強さに、私は圧倒されました。そこに集った人々が一体になって集中するとき、とてつもないパワーが生まれる——。この美しい奇跡が、劇場では起き続けているのです。
*カーンが振り付け、自身も出演したダンス場面がスタジアムで上演された。開会式映像(Olympics公式映像より):https://www.youtube.com/watch?v=4As0e4de-rI(約1時間24分40秒頃~)
―今、世界はこれまでになかった規模の災害に見舞われています。今回の公演地である日本も例外ではありません。地球の未来にとって、人間と動物、自然はいかに関与し合うべきだと思いますか。
この作品は、私たちが犯した失敗を見つめる作品です。人間同士だけではなく、地球が発してきた声を聞くことができなかった悲しみを物語っています。気候変動はすでに長らく存在し、私たちはこの問題に気づいていたのに行動を起こさなかった。未来を守るためには、私たちは地球の声に耳を傾けなくてはなりません。
Photo. Camilla Greenwell
―日本では近年、小中学生を対象とした環境問題を取り上げる授業や催しが増え、子どもたちの問題意識も高まっています。日本で『ジャングル・ブック』を鑑賞するであろう子どもたちにメッセージをお願いします。
この作品の創作の出発点になったのは、11歳の私の娘です。彼女は私がすることすべてに疑問を投げかけます。私たちの選択がもたらす結果の影響を真っ向から受けるのは、彼女と彼女に続く世代です。『ジャングル・ブック』が、私たちと自然の関係を振り返り、その人なりの行動を起こすきっかけをもたらすことを願っています。
ツアー情報
埼玉公演 |
2025年6月20日(金)19:00 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール |
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関連イベント
『ジャングル・ブック』ダンスワークショップ
ダンス未経験者の方も大歓迎!
※詳細・お申込みは、こちらから
開催日時 |
2025年6月26日(木) 19:00〜21:00 |
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会場 |
愛知県芸術劇場 大リハーサル室 |
参加費 |
2,000円 |
定 員 |
20名(先着順) |
申込方法 |
申込フォームにて受付(4月25日 正午より受付開始) |