第22回AAF戯曲賞受賞記念公演『とりで』

戯曲の面白さを味わいつくす!
AAF戯曲賞受賞作を2つの演出で連続上演

「陸の孤島」と呼ばれる住宅地の空気、空き部屋の増えたがらんとした家、そこに住まう人々の孤独。とりとめのない家族の会話と静かな時間。
演劇作家・村社祐太朗が執筆した会話劇『とりで』を、澄井葵、羽鳥嘉郎の2人の演出家が異なる視点で創作し、連続上演します。
そして、建築家中山英之がデザインする舞台美術により、客席空間では普段とは違った感覚がもたらされます。ぜひ劇場で体験してください。


作:村社祐太朗


演出:澄井葵

出演:江上定子
出演:中澤陽
出演:二瓶翔輔
出演:山口未知(劇団B級遊撃隊)


演出:羽鳥嘉郎

出演:石田みや
出演:古賀菜々絵
出演:斎田実優(アメージングプロモーション)
出演:池田大知



▶︎戯曲(村社 祐太朗)【PDF/1.0MB】はこちらからお読みいただけます。

レビュー掲載のお知らせ(2026/5/29):
山本 浩貴 氏(いぬのせなか座)によるレビューを掲載しました。
詳細は以下の「レビュー」よりご覧ください。

12/21(日)公演の当日券のお知らせ(2025/12/21 12:00):
12/21(日)公演の当日券は、完売いたしました。

12/21(日)公演の当日券のお知らせ(2025/12/20):
12/21(日)公演の当日券は、10:00より地下2階プレイガイドにて若干数(5枚程度)販売いたします。

12/20(土)公演の当日券のお知らせ(2025/12/19):
12/20(土)公演は、前売券完売のため当日券の販売はございません。

12/19(金)公演の当日券のお知らせ(2025/12/18):
12/19(金)公演の当日券は、10:00より地下2階プレイガイドにて若干数(10枚程度)販売いたします。

20日(土)21日(日)残席僅少のお知らせ(2025/12/17)
20日(土)及び21日(日)の公演は残席がわずかとなっております。ご希望の方は、お早めにお申込みください。
なお、前売券は各公演前日正午まで販売しております。当日券の有無は、各公演前日にお知らせいたします。

20日(土)『とりで』感想シェア会 詳細決定のお知らせ(2025/11/14)
20日(土)終演後に、観客同士で感想を交換・共有するワークショップを開催いたします。(無料・要予約)詳細は以下の「関連イベント」よりご覧ください。

19日(金)終演後アーティストトークゲスト決定のお知らせ(2025/11/2)
19日(金)終演後アーティストトークのゲストに鳴海 康平 氏(第七劇場代表・演出家)をお迎えし、『とりで』演出の羽鳥 嘉郎 氏、澄井 葵 氏にお話を伺います。
公演とあわせてお楽しみください。(無料・予約不要)

 

出演者情報掲載のお知らせ(2025/2/8)
詳細は以下の「スタッフ・キャスト」よりご覧ください。

概要

開催日

2025年12月19日(金)14:00
2025年12月20日(土)14:00 残席僅少
2025年12月21日(日)14:00 売切

※ ロビー開場:開演30分前、客席開場:開演15分前
※ 上演時間:2作品あわせて計2時間程度の予定(休憩時間含む)

19日(金)終演後アーティストトーク(無料・予約不要)

<アーティストトーク出演者>
鳴海 康平 氏、羽鳥 嘉郎 氏、澄井 葵 氏


20日(土)終演後感想シェア会(無料・要予約)
会 場 愛知県芸術劇場 小ホール
主催・企画制作・製作・お問合せ

愛知県芸術劇場
TEL: 052-211-7552(10:00~18:00) FAX: 052-971-5541 
Email: contact△aaf.or.jp(「△」を「@」に置き変えてください。)

助 成

文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業 (地域の中核劇場・音楽堂等活性化事業)) 独立行政法人日本芸術文化振興会

スタッフ・キャスト

戯曲・演出・出演

作:村社祐太朗

演出:澄井葵
出演:江上定子、中澤陽、二瓶翔輔、山口未知(劇団B級遊撃隊)

演出:羽鳥嘉郎
出演:石田みや、古賀菜々絵、斎田実優(アメージングプロモーション)、池田大知

スタッフ 舞台美術デザイン:中山英之
照明デザイン:吉本有輝子
舞台監督:北方こだち
チラシデザイン: とりやまゆり
プロデューサー:仲村悠希

チケット情報

チケット料金

全席自由・整理番号付
19日(金):一般 3,000円 U25 1,500円
20日(土)・21日(日):一般 3,500円 U25 2,000円
早割り一般:3,000円(10月21日(火)までのご予約が対象)

※U25は公演日に25歳以下対象(要証明書)
※車いすでご来場の方は、チケット購入後、劇場事務局 TEL 052-211-7552 までご連絡ください。
※ 中学生以上推奨。
※ 20日公演のみ託児サービスあり(有料・要予約)。

チケット取扱

一般発売 2025年9月12日(金)10:00~

愛知県芸術劇場オンラインチケットサービス チケット購入

愛知芸術文化センタープレイガイド(地下2階)

TEL 052-972-0430

平日10:00-19:00 土日祝休10:00-18:00 (月曜定休/祝休日の場合、翌平日)

※ 開演後のご入場はお待ちいただく場合があります。
※ やむを得ない事情により、内容・出演者等が変更になる場合があります。

鑑賞サポート

託児サービス
(要予約)

【12月20日(土)公演】

 対象:満1歳以上の未就学児
 料金:1名につき1,000円(税込)
 申込締切:2025年12月13日(土)12:00まで
 お申込み:オフィス・パレット株式会社
 お申込み:TEL 0120-353-528(携帯からは052-562-5005)
 お申込み:月~金 9:00~17:00、土 9:00~12:00(日・祝日は休業)

鑑賞サポート

【12月21日(日)公演】

日本語バリアフリー字幕(ポータブル)の貸し出し(無料・要予約)

*12月21日(日)13:00〜
見えない・見えにくい方のための事前舞台説明会(無料・要予約)

※ご希望の方は劇場事務局 TEL 052-211-7552/Email: contact△aaf.or.jp(「△」を「@」に置き変えてください。)までご連絡ください。

小・中・高校生招待

【劇場と子ども7万人プロジェクト(小・中・高校生招待)対象公演】

申込受付:9月12日(金)10:00~

劇場と子ども7万人プロジェクト 小・中・高校生招待申込

※ 中学生以上推奨
(要事前予約・枚数限定・先着順)
※ 入場は電子チケット「チケットれすQ」での入場になります。招待・購入にかかわらず手数料(1枚あたり77円)が必要です。

プロフィール

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左から村社祐太朗氏、澄井葵氏、羽鳥嘉郎氏


やり取りが進むにつれて読みやすくなる時、いくつか不安にもなる。このひとはこの顔をしているべきなんだろうか。あるいは声ももうある気がしているが、これはいつか聞いたことがあるようだと。似ているものをなぞりながらすれば手早く済むことが多いが、「似ている」とは違いが分かっているときに使う言葉でもある。もう一度考えるのもよくその後だと思う。

作:村社祐太朗/Yutaro Murakoso

新聞家主宰。演劇作家。訥弁の語りを中心に据え、書くことや憶え繰り返すことを疎外せずに実現する上演に取り組んでいる。2020-22年度THEATRE E9 KYOTOアソシエイトアーティスト。2019-20、2025-26年度公益財団法人セゾン文化財団セゾンフェローⅠ。戯曲『とりで』(2022)が第22回AAF戯曲賞大賞。2024年2月京都芸術センターにて茶会の形式を借りた新作『生鶴』を発表。


家に居る、ということを考えています。これまでにどんなことがあって、ここに居る ことになっているのかとか。ここで、どうやって、生活をすることになっているのかとか。人が暮らすということの、途方もなく積み上げられたものや時間や質量を感じさせ られて、クラクラします。そういうあらゆる積み上がりの中の、いつも演劇がやっていることとして今回も、一瞬一瞬のできごとの軽重を感じてもらいたいと思っています。

演出:澄井葵/Aoi Sumii

岐阜県出身。演出家。明治大学文学部演劇学専攻卒業。自身のユニット「,5(てんご)」を東京で旗揚げ。2011年から地元に戻り、名古屋を中心とした活動を始める。人の持つ感覚や普通さに働きかけ、観客俳優問わず感覚を足したり引いたりして、よく台無しにする。最近は,5(てんご)公演『黒門児童遊園』(作:佐々木治己)、『ジとジ』(作:向坂達矢「なにものにも」より)を演出。


伏見のとあるネパール料理屋の、トイレへの道のりから、私たちは多くの霊感を得ました。音波の話をしながら俳優は「けんぱ」と言い、子どもが稽古場で寝てしまうときもあります。私たちの上演モデル、一度きりで終わらないそれは、こうして育まれています。「ふしぎなことは偶然じゃない」のでした。そしてここに、すばらしいスタッフワークが新たに加わります。ぜひお越しください。

演出:羽鳥嘉郎/Yoshiro Hatori

1989年ブリュッセル生まれ。演出家、けのび代表、サハのメンバー。ワークショップ「自治」シリーズや、石をおかずにご飯を食べる「おかず石」などを各地で展開。京都国際舞台芸術祭 KYOTO EXPERIMENT フリンジ企画「使えるプログラム」ディレクター(2013‐14年度)、TPAM‒国際舞台芸術ミーティング in 横浜 アシスタント・ディレクター(2014‐17年度)。編著に『集まると使える‒80年代 運動の中の演劇と演劇の中の運動』(ころから、2018年)がある。女子美術大学非常勤講師、立教大学兼任講師、舞台芸術祭「秋の隕石」ドラマトゥルグ。

関連イベント

ケアについて考える演劇ワークショップ
「聞くことと演劇-クライエントの言葉に何を思うか」

詳細はこちら

  
日時

11月22日(土)10:00-12:00

ファシリテーター

村社祐太朗

『とりで』感想シェア会

第22回AAF戯曲賞受賞記念公演『とりで』の観劇後に、観客同士で感想を交換・共有するワークショップを開催いたします。

  
日時

2025年12月20日(土)終演後~17:15(予定)

対象

『とりで』を観劇された方

参加費

無料

定員

20名程度
※ 定員に達し次第、受付を終了いたします(先着順)。
定員に空きがある場合、当日飛び入り参加も歓迎します。

申込方法

フォームのリンクが表示されない場合は、ページの更新ボタンを押してください。

『とりで』感想シェア会 申込フォーム

※ お預かりした個人情報は、愛知県芸術劇場(公益財団法人愛知県文化振興事業団)にて厳重に管理し、当劇場の演劇・ダンス事業を運営するために使用し、それ以外に使用しません。

ニュース

2025.11.14

ステージナタリー:演出の澄井葵と羽鳥嘉郎、舞台美術デザインを手がける建築家・中山英之が語る第22回AAF戯曲賞受賞記念公演「とりで」 

https://natalie.mu/stage/pp/aaf11

2025.2.14

ステージナタリー:村社祐太朗「とりで」を澄井葵&羽鳥嘉郎が演出、クリエイター陣が考える戯曲の捉え方 

https://natalie.mu/stage/pp/aaf10

2024.11.27

ステージナタリー:村社祐太朗のAAF戯曲賞受賞作「とりで」出演者募集、3月に試演会も

https://natalie.mu/stage/news/601077

2023.01.29

OutermostNAGOYA 名古屋×アート、美術(展覧会)、舞台、映像:第22回AAF戯曲賞 大賞に『とりで』(村社 祐太朗)、特別賞(2作品)に『往復する点P』(川辺恵)、『廃熱バイパス』 (近江就成)

https://www.outermosterm.com/aaf2023-grand-prize/

レビュー

設えと余地

山本浩貴(いぬのせなか座)

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 入場する。客席につき、前方を見る。高低差のない、だだっ広い黒の奥行きが広がる。手前上手にごく小さな木製のスツール。下手にパイプ椅子。中央に畳まれた状態の長机。ふと頭上を見上げると、奇妙に巨大な円盤状の光が広がっている。中山英之による舞台美術だ(照明デザイン:吉本有輝子)。
 まるでもともとこの施設に天窓として設えられていたかのようなそれは、自らの覆う舞台空間手前と客席を照らすというより光のなかに立たせながら、一方で光の届ききらない舞台空間奥を、どこからとも言えないなだらかさで暗く沈ませている。

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(C)HATORI Naoshi

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 上手袖からこそこそと笑い声が聞こえる。一人が舞台上に現れ、長机に平行に床に座り、片手をつく。少し丁寧に、定位置にセットするような不自然さとともに。間。もう一人が現れ、向かい合わせに座り、やはり片手をつく。しばらくして戯曲が発話され始める。羽鳥嘉郎演出の上演が始まる。
 二人の人物による会話。しかしお互いの視線はあわず、言葉もどこか出演者自身から遊離したもののように聞こえる(大袈裟なようだったり、淡々としていたり)。さらに台詞の途中で一人が吹き出す。二人ともで大きく笑う。脈絡もなく――と言いたくなるほど、どこが可笑しかったのか、なぜ笑っているのか、わからない。
 急に一人が発話をやめ、立つ。下手のパイプ椅子へ歩いていく。座面に戯曲の印刷された冊子が置いてある。それを開き、読む。戯曲を置き、また長机へ戻る。何事もなかったかのように続きを発話する。台詞を確認しにいったのか? さらに進むと一人が舞台袖に捌け、代わりに新たな一人が上手にある木製のスツールの横に歩いてきて、手に持った戯曲を読みつつ発話する。戯曲本文では確かにもう一人の登場人物が現れている。二人は会話をしているはずだが、ともに下手を向き、距離も離れ、一人は文字を読んでいる。
 いったい何が行なわれているのか? 2025年12月19日の回の終演後トークで羽鳥は、第二場後半で袖から声のみ出演する池田大知以外の出演者3人――石田みや、古賀菜々絵、斎田実優――がそれぞれどの役柄の台詞を担うか、毎回確定させていなかったと語った。発話の仕方や役・ト書きへの理解をひとつには確定させず、戯曲もいったん覚えはするが忘れたらそのつど確認しにいって良い。
 そのような仕方で観客の前に開かれた上演空間は、戯曲をそのままストレートに演じるのでは立ち上がり得なかっただろう種類の親密さを、出演者間固有のもの――こちらの知らない関係性や歴史に基づくもの――として漂わせる。ことさら内輪っぽくしているわけではない。ある厳密な動線に基づき動いているようでもある。ただそれでも出演者たちだけで試しに上演してみているような空気感を、数百近い観客の前で平然と立ち上げて見せること。それが可能であることの驚き。
 さらに上演は戯曲から距離を取るばかりではない。庭に降り立つ鳥のまね、虫を払う身振り、舞台袖へ移動し発する声、不意にあう視線。机に置かれる剪定バサミ、ペットボトル、ポケットから取り出されるスマホ、「上等な明太子」に見立てられた箱。ごく限られた、しかし的確な所作や事物によって戯曲のト書きがなぞられ、戯曲内部の空間が舞台上に急速に重ねられる。そしてまた戯曲を確認しに行く間や唐突な笑いによって重なりは解かれる。その往復を辿るうち、いま目撃している親密さとの距離感が、戯曲のなかの家族や家の親密さに触れるとき起こるだろう距離感そのもののように感じられてくる。ひるがえって戯曲のそれとは別のもののように思えていた出演者間の親密さ、あるいは出演者らの発話や身振りもまた、まさに戯曲が描いていたそれそのもののように思い出され始める。  
 最後の場面。ひとり残された出演者が長机から離れ、ゆっくりと舞台中央奥へ歩んでいく。プレイエリアとして用いられていた舞台前景が無人となり、頭上の照明によって緩やかに暗く、どこまで続くのかはっきりとしない奥行きのなかに初めて立ち止まる。「マルオ」と発する。観客に背を向けたまま。その呼び声は私に向けられたものではないが、際立って馴染み深いもののように空間に響く。

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(C)HATORI Naoshi

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 転換を兼ねた休憩が告げられると、すぐに大量の折りたたみ椅子が運び込まれ、舞台前景を埋め尽くしていく。頭上の照明が淡く作り出し、羽鳥演出が的確に用いていた前景と後景の関係、それをめぐる一時間弱の鑑賞経験が、転換という名のもとほとんど暴力的に塗り替えられていき、唖然とする。
 客席を延長するように前景に並べられた椅子には出演者のうち中澤陽ひとりが座り、その向こう側に狭く設けられたプレイエリア中央の床に江上定子と山口未知が座る。ほとんど光の当たらない舞台奥壁際には黒い台座が置かれ(壁に溶け込んでほぼ見えない)、そこに二瓶翔輔が座る。全体として、劇場内部にもうひとつ小さな劇場が作られたかのようだ。こちらも舞台上の新たな客席のほうに移動して中澤とともにプレイエリア近くで見たくなるが、それは許されない。目を凝らす。だが照明までもが絞られ暗くなっていく。物理的な距離と暗さを配したうえで、澄井葵演出の上演が始まる。
 「第一場」と中澤の声。客席側からト書きを読み上げる。江上と山口は「容子」と「籐子」二人の登場人物の台詞を、区別なく、同時に発していく。内容から少なくともモノローグではないことは掴めるが、それゆえにこそ、ひとつの体が複数の声を宿していること、しかもそれがふたつ並走していることを認めざるを得ない。役柄と役者の一対一対応に基づく理解は冒頭から無効化される。
 「秀真」が戯曲内に登場すると、その台詞を舞台奥の二瓶が担う。一方「籐子」が不在となったことで、江上と山口は「容子」のみの発話に移行する。しかし観客はそれぞれの声の背後に複数の登場人物がいる可能性をもはや捨てきれない。さらに江上と山口が薄暗い空間を歩き回ることで、二瓶との距離にそれぞれ差が生まれる。距離の近い側の一人と二瓶とが一組のペアとしてやり取りしているように見え、そのぶん離れた側の一人が発話を向ける暗闇の先に、会話相手として不在の誰かの気配が立ち上がる。
 第二場では各種の位置が変化する。江上と山口は観客に近い後方列の椅子にそれぞれ左右へ離れて座り、「由利」と「籐子」の台詞を担う。二瓶はそのまま舞台奥でト書きと「配達員」「侑斗」の台詞を担う。中澤は戯曲を手にプレイエリアに出てきて「容子」の台詞を発話する。衣服の明るさもあいまって視認しやすい舞台前景の江上と山口は、しかし背を向けたままほぼ動かず、二瓶も引き続き舞台奥で暗がりに溶け込んでいるため、注意はプレイエリアに立ち動く中澤へ向かうことになるが、それもやはり遠くてよく見えない。
 ならばと聴くことへ重心を移そうとする。だが左右に振り分けられた江上と山口の同時発話は、中央の席でない限り声のボリューム等に差が生じ、互いの同期がほつれて感じられる。なおかつ(第一場よりお互いが遠ざけられているからだろうか)そもそもの二人の発話のタイミングや速度のずれが徐々に意識されてくる。何より台詞を担う者の姿が左右に分裂し、かつ背を向けているせいで声が特定の人体、さらには空間に定着させられない。空転し、霧散する。その聞こえづらさのなかであらためて視線が向かうのは、薄暗がりに奇妙な緊張感をまとい続ける中澤のゆっくりとした動き、姿勢だけだ。
 劇との向き合えなさ。羽鳥演出が出演者間固有の親密さを(たとえフィクショナルなものであろうとそのように感じられる仕方で)設え、その親密さと観客とのあいだの距離の変化を通じて戯曲内部の親密さそのもののような何かをこちらに発見させていたのに対し、澄井演出はそうした親密さや距離が成り立つための条件そのもの――見えること、聴けること、声や場が単一の何かに帰属すること――を組織的に阻害し、失調させる。さらに照明による前景と後景の淡い落差を(羽鳥と異なる破壊的な仕方で)応用して作り出された劇場内劇場のようなレイアウトが、上演から観客を締め出す。観客として上演に参与するのではなく、上演(のリハーサル?)とそれを見る観客をさらに遠くから覗くほかないような隔たり、間接さの経験。ただそのなかで、失調したいずれもに依存しないものとして、戯曲の言葉、それが持つ明瞭な変わらなさだけが残される。

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(C)HATORI Naoshi

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(C)HATORI Naoshi

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 あらためて戯曲を思う。村社祐太朗のそれは、ありふれた日常と言っていいだろうある短な時間のささやかな出来事を、明瞭な言葉でもって描きながら、同時に台詞ひとつひとつ、動作ひとつひとつに奇妙な厚みや奥行きを備えさせていた。ミステリーのように謎めいているわけではない。ただ、人があるときある場所で言葉を発し、身振りをする根拠(独自に抱え持たれた歴史、環境、情動)が、外部からひとつに定められない――その定まらなさこそが精緻に組み上げられていたのだった。
 それは言葉を、人や場の厚みをめぐる予感のようなものとして感じさせる。精緻な設えの目指す先が、強固で単一的で完成された、それゆえ私にその全体を把握可能であると思わせるような造形物ではなく、ある特殊にゆるい遊びの余地、バッファ、その把握しきれなさの発明でこそあること。ひとつの戯曲をふたつの演出で連続上演するという今回の形式は、戯曲一般が持つ上演の多様性を示す以上に、『とりで』という戯曲固有の質を十全に展開する方法として、的確であった。

山本浩貴(いぬのせなか座) Hiroki Yamamoto (Inu no senaka-za)

1992年生まれ。制作集団・出版版元・デザイン事務所「いぬのせなか座」主宰。小説や詩歌の執筆、芸術全般の批評、書籍や雑誌のデザイン・編集・出版、上演作品のドラマトゥルク・演出などを通じて、現代における表現と生のあいだの関係可能性を検討・提示している。現在『SFマガジン』にて小説「親さと空」連載中